12球団の「欲しい選手」の傾向は? 「プロ野球ドラフト会議2024」この選手に注目すれば面白くなる!
宗山塁・内野手《明治大》今ドラフト一番注目の遊撃手。甘いマスクも備える
10月24日(木)に開催されるプロ野球ドラフト会議。目玉から異色まで、注目しておくと当日楽しめる、さまざまな選手を紹介します!
■今年の目玉はこの2選手ポストシーズン真っ盛りのプロ野球界だが、もうひとつのビッグイベント、ドラフト会議が10月24日に待ち受けている。ドラフトで有望な新人を獲得できるか否かは、チーム成績に直結する。それだけに、各球団の編成やスカウト陣は総力を結集して視察と情報収集に飛び回る。
今年のドラフトをひと言で表すなら「大学生豊作年」。4人の大学生がドラフト戦線の中心になりそうだ。まずは1位指名が有力視される逸材を紹介していこう。
野手の目玉は宗山塁(むねやま・るい/明治大)。大学生遊撃手としては、2003年のドラフトで入団した鳥谷敬(元阪神など)以来の大物といっていい。
その守備力は侍ジャパンの井端弘和監督も太鼓判を押すほどで、すでに1軍レギュラークラスの技術がある。シュアな打撃も魅力で、東京六大学通算113安打、通算打率.347(10月15日現在)と好結果を残してきた。
プロの水に慣れれば、アベレージ型の打者として成功するはずだ。おまけにマスクも二枚目で、東京六大学が開催される神宮球場には、毎週「宗山ギャル」と称される女性ファンが多数押し寄せる。プロで活躍できれば、女性人気が爆発するのは間違いない。
宗山を巡っては、10月11日に他球団に先駆けて広島が1位指名を公言したばかり。広島にとって、宗山は地元・広島出身のスター候補。
今季の広島は若手内野手の矢野雅哉が遊撃のレギュラーに定着したばかりで、宗山と同じ右投げ左打ちの野手がチーム内にあふれている。チーム編成を考えれば、宗山争奪戦への参戦は合理的とはいえない。それでも裏を返せば、「そこまでして欲しい逸材」ともいえる。
遊撃手の層が薄い日本ハム、ソフトバンク、阪神なども宗山に興味を示しているとみられる。重複1位指名による抽選(くじ引き)は避けられない情勢だ。
野手の主役が宗山なら、投手の目玉は金丸夢斗(かねまる・ゆめと/関西大)。今季MLBで15勝と大成功を収めた、今永昇太(カブス)クラスになりうる左腕だ。
身長177㎝、体重77㎏と平凡なサイズながら、最速154キロの快速球は数字以上に速く見える。右打者のインコースを正確に突くコントロールも光り、プロで活躍する一線級の打者でも、金丸を打ち崩すのは難しいはずだ。
金丸夢斗・投手《関西大》最速154キロの快速球を誇る左腕
独特の身体感覚の持ち主で、「手のひらの中心から指先が始まっているイメージ」「おなか全体を膨らませて投げる」と語っていたことも。怖いのは故障くらいだが、幸いなことに肩、ヒジを痛めて長期離脱したことはない。
今オフは菅野智之(巨人)、小笠原慎之介(中日)、佐々木朗希(ロッテ)のメジャー移籍が現実味を帯びている。先発ローテの中心投手を欠く可能性が高い上記3球団、さらに今永の穴を埋め切れていないDeNA、慢性的な投手難に泣くヤクルトなども金丸に熱視線を送っている。
■注目の大学生投手と外野手宗山、金丸の競争率が高まった場合、抽選を回避するために中村優斗(愛知工業大)や西川史礁(みしょう/青山学院大)の人気も高まりそうだ。
中村は最速159キロを計測する右腕だが、本質的には「ストレートを見せ球にした変化球投手」といえるかもしれない。特に変化量の大きなスライダーは出色で、大学日本代表ではクローザーを務めるなどリリーフ適性も高い。
今年の夏場にかけて「走っていなかったストレートに自信が持てるようになってきた」と本人が語るように、課題だったストレートの球質も改善されてきた。プロでは則本昂大(楽天)のようなタイプになりえる。
ちなみに高校時代、長崎・諫早農高では農業土木科で学び、公務員志望だった。そんな高校生が4年後にドラフト1位候補に浮上するのだから不思議なものだ。重複1位指名を嫌う傾向にあるオリックス、ロッテ、阪神などの動向から目が離せない。
西川は大学3年時に台頭した右の強打者。身長182㎝、体重88㎏のたくましい体躯で、体幹をねじるようなアクションの大きなフルスイングは絵になる。
京都・龍谷大平安高時代はスリムな体形で、高校通算7本塁打にとどまった。本人も「いるかいないかわからないような選手だった」と自虐気味に語るが、大学で肉体改造に成功。大学日本代表の4番を張るほどの打者に成長した。
西川史礁・外野手《青山学院大》アクションの大きなフルスイングは絵になる
一見スラッガータイプに見えるが、甘いボールが来れば初球から積極的に打ちにいって高打率を残せるのも強み。今秋のリーグ戦では死球を受け、右手人さし指にひびが入るアクシデントに見舞われた。
それでも全治4~6週間と野球人生を左右するほどではなかった。プロのスカウト陣の好評価も不変だろう。今年貧打に泣いた西武やオリックス、投手陣だけでなく野手陣も世代交代が迫られるヤクルトも指名の可能性がある。
なお、宗山、金丸、中村、西川の4選手は今年3月に若手中心に編成された侍ジャパントップチーム(欧州代表戦)に招集されている。右肩甲骨骨折で欠場した宗山以外は、強烈なインパクトを残した。金丸は2回4奪三振、中村は1回1奪三振で"完全試合リレー"に貢献。西川は3打席連続安打に、中堅守備でも美技を披露した。
いささか気が早いが、宗山は「26年のWBCに出たい」と語っている。プロ1年目から日本を代表するにふさわしい活躍が求められる。
■今プロが欲しがる右投げ右打ちの選手ドラフトは「いい選手」から順番に名前を呼ばれるわけではない。12球団の「欲しい選手」が指名されるのだ。つまり、選手の実力はもちろん各球団の補強ポイントに合致するかがカギになる。
その意味で近年、価値が高騰しているのが「右投げ右打ちの内野手」。プロでは右投げ左打ちの野手が飽和状態で、右投げ右打ちの内野手は高順位で指名される傾向がある。
今年のドラフト戦線には石塚裕惺(ゆうせい/花咲徳栄高)、渡部聖弥(わたなべ・せいや/大阪商業大)、佐々木泰(たい/青山学院大)といった右投げ右打ちの有望内野手がいる。
高校生の強打者として突出しているのが石塚だ。高校通算26本塁打と驚くような結果を残しているわけではないが、高校生にして木製バットを振りこなす打撃技術は魅力。将来的には浅村栄斗(楽天)のような強打者に成長する将来像が描ける。
石塚裕惺・内野手《花咲徳栄高》プロが欲しがる右投げ右打ちの遊撃手
渡部は大学3年時まで広角打法と強肩を武器にする外野手だったが、今年は内野守備にもチャレンジ。三塁を無難にこなし、器用さをアピールしている。なお、宗山とは広島・広陵高でのチームメイトで、同校の中井哲之監督は「宗山と渡部はライバル心が強く、野球以外のときはずっと黙っていた」と語っていた。
佐々木はインパクトの爆発力が尋常ではなく、スラッガーとしての資質は同期の西川をしのぐ。変化球に対して両腕をゴムのように伸ばして外野スタンドまで運ぶ"脅弾"も佐々木の見どころだ。強肩の三塁守備、盗塁可能な俊足にも定評がある。あとは好不調の波の激しさをスカウト陣からどのように評価されるか。
上記の3人と毛色は異なるが、ハイレベルな遊撃守備を武器にする齋藤大翔(ひろと/金沢高)も1位指名を勝ち取る可能性がある右投げ右打ちの内野手だ。甲子園出場経験はないものの、「高卒1年目から新人王を狙いたい」と豪語するハートもプロ向きだろう。
投手では実戦力にかけては金丸と双璧をなす佐藤柳之介(富士大)も見逃せない。伊藤将司(阪神)を彷彿とさせる「出所が見えない左腕」で、多彩な変化球を操れる。プロ1年目から即戦力として期待できる実力者だ。
高校生は身長190㎝前後の大型投手が続出している。甲子園のマウンドで華々しい投球を見せた藤田琉生(りゅうせい/東海大相模高)、今朝丸裕喜(けさまる・ゆうき/報徳学園高)は上位指名が予想される。
さらには清水大暉(前橋商高)、柴田獅子(れお/福大大濠高)のポテンシャル型右腕も要注目。清水は193㎝、93㎏と山下舜平大(オリックス)を彷彿とさせる角度が魅力でサプライズ1位指名もあるかもしれない。
清水大暉・投手《前橋商高》193cmの高身長右腕で、角度が魅力
最後に一風変わったドラマ性を持ったドラフト候補たちを紹介したい。
まずはなんといっても、清原正吾(慶応義塾大)。父・清原和博(元巨人など)はNPB通算525本塁打(歴代5位)を放った大打者。その長男である正吾は、身長186㎝、体重90㎏と立派な体躯を誇っている。
だが、正吾の球歴は異色中の異色だ。中学時代はバレーボール部、高校時代はアメリカンフットボール部に所属しており、野球とは無縁の学生生活だった。ところが、大学入学を機に小学生時にプレーした野球への情熱が再燃。6年間の空白を経て、名門・慶応義塾大で大学野球にチャレンジしたのだ。
清原正吾・内野手《慶応義塾大》父は清原和博。中高と野球部ではなかった異色の経歴
大学4年目の今春は「4番・一塁手」のレギュラーに定着すると、ベストナインを獲得。今秋はリーグ戦で2本塁打(10月15日現在)を放つなど、成長著しい。
答えにくい質問にも爽やかに受け答えする取材対応に、好印象を抱く報道陣も少なくない。試合前後には後輩からイジられるシーンも見られるなど、現役時代にこわもてだった父とは異なり、"愛されキャラ"になりそうだ。
偏差値71の進学校に出現した好素材・森井翔太郎(桐朋高)は、プロ志望届の提出から一転、MLB志望を表明して野球界を仰天させた。当初はNPB行きかアメリカの大学への進学が予想されたが、米マイナーリーグから這い上がる、いばらの道を選んだ。
今年は北海道に好素材がひしめいているが、ユニークなバックグラウンドを持つ選手も多い。例えば進路をカニ漁師かプロ野球選手かで悩んだ末に、プロ志望届を提出した池田悠真(はるま/紋別高)。漫画『北斗の拳』の登場人物・ジュウザが名前の由来の石田充冴(じゅうざ/北星学園大付高)らがいる。
ほかの地域では、大学で畜産を学ぶために進学したはずが、投手として急成長してドラフト候補になった廣池(ひろいけ)康志郎(東海大九州)。
高校、大学と公式戦登板がほとんどなく、「東都のシーラカンス」と化しながらMLB級の剛球がスカウトから注目されているシャピロ・マシュー・一郎(国学院大)。身長195㎝、体重106㎏の巨体ながら俊足強打を武器に「フィジカルモンスター」と名をはせる台湾出身留学生・林冠臣(リンクアンチェン/日本経済大)ら、大学球界も個性派が続出する。
社会人では中島悠貴(茨城トヨペット)の異色ぶりが際立つ。本業であるセールスコンサルタント(トヨタ車の営業)を最優先するチーム方針のため、野球ができるのは週2日のみ。それでも、最速151キロを計測する剛球左腕として、社会人有数の存在に成り上がっている。
大物から隠し玉まで、最高峰の舞台で戦いたい切実な願いは同じだ。彼らに吉報は届くのか。その瞬間が刻一刻と近づいている。
取材・文/菊地高弘 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
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