そのパターはなぜ名器と呼ばれるのか? 名器パターの歴史を徹底解説【名器パター5選も紹介】
名器パターの歴史を徹底解説!時代とともに進化を遂げ、今も多くのゴルファーに愛されているパターの歴史をたどります。パター選びに悩んでいるあなたに、ユニークで有用な視座を与えること間違いなしの必見の内容です。
1.パターに歴史あり
15世紀のスコットランドでゴルフが誕生して以降、ゴルフクラブの形状や素材は多様化を遂げ、ヘッド、ネック、シャフト、グリップのそれぞれが、時代と共に変化してきました。しかしゴルフクラブの中でも、パターは特に進化を遂げてきたクラブかもしれません。
そして、クラフトマンの技術やプレーヤーの経験が凝縮されたパターは、ゴルファーから特に愛されているクラブのように見えます。
現代のパターは、ヘッドの形状から、大きく分けて、ブレード型とマレット型の2つに分類されます。そしてさらに、L字型、T字型、ネオマレット型などと、細分化されています。
また、ネックの形状も、クランク、ベント、センターシャフト、三角ネックなど、様々なタイプがあります。
最初期のゴルフクラブは木から手作りされた原始的な物で、パターもその例外ではありませんでした。初期のパターは、アッシュ(トネリコ)材のシャフトに、ブナなどの硬材を用いたヘッドで構成されていた、非常にシンプルな作りだったようです。
英国のゴルフジャーナリスト、ウィル・トリンクウォンの研究によると、パターは最初期には「クリーク」(5番ウッドの現在の愛称)と呼ばれていたようです。
そして、金属製パターが登場する1900年代初期の頃までは、木製のヘッドが何世紀にもわたり使用され続けました。
最初の”名器”パターとされるのが、1930年にボビー・ジョーンズがグランドスラムを達成した際に使用した「カラミティ・ジェーン」です。
ヒッコリー(クルミ科の樹木)材のシャフトに、革のグリップ、ステンレススチール製のブレード型ヘッドを持つこのパターは、ボビーの13回のメジャー優勝でも使用されていました。
初期のパターは、ウィルソン「8802」に代表されるようにすべてL字型でしたが、これら初期モデルのパターは、スイートスポットが狭いものでした。そのため、芯を外すとボールがよく転がらず、扱いが非常に難しかったのです。
そんな問題点を改善しようと、1966年にピン「アンサー」を生み出したのが、ピン社の創業者であるカーステン・ソルハイムです。1959年に「1A」という初号器にあたるモデルを発表、それからさらに7年の歳月をかけて「アンサー」は発売されました。その画期的なやさしさが、当時のトッププレーヤーから支持を受け、一般のゴルファーにもミスヒットに寛容なパターとして、広まっていったのです。
2000年になってからも、ゴルフギア業界では、オデッセイのホワイトホット、テーラーメイドのスパイダーなど、革新的なパターが次々と誕生しました。
現代では、精密なフェースミーリング技術やインサート素材、様々な工夫がなされたシャフトなど、より高度な先端テクノロジーをパターに搭載させる傾向にあります。
先述したウィル・トリンクウォンの研究によると、スコットランド王・ジェームズ4世 (1473-1513) は、歴史資料に記録された最初のゴルファーとされています。
パース(Perth)の弓職人に発注したクラブセットの発注書が残されているからです(しかし彼がゴルフをプレーしたかどうかは定かではありません)。
ジェームズ4世が発注したクラブセットには、「ロングノーズ」(ドライバー)、「グラスドライバー」(フェアウェイウッド)、「スプーン」(アイアン)、「ニブリック」(ウェッジ)、そして「クリーク」(パターの当時の愛称)が含まれていました。
初期のクラブセットは5本程度だったとされ、現在のゴルフでは最大14本まで持ち込めることを考えると、クラブの選択肢が徐々に増えていったことがわかります。
史上最も高価なパターは、タイガー・ウッズのエースパター「スコッティ・キャメロン ニューポート2」と同仕様のパターです。バックアップ用として製作され、練習でタイガー・ウッズ本人が使用した1本でした。
2020年にゴルフグッズとしては過去最高額の15万4928ドルで落札。これは当時のレートで、日本円にして1600万円です(2024年9月円換算では2200万以上)。
詳しくは、関連記事より「タイガーのパターが過去最高額で落札! そのお値段…驚きの“1600万円超”」をご覧ください。
ここでは、多くのプロゴルファーに愛用されている、名器パターの中でも、特に有名な5つのパターを紹介します。
【1】スコッティ・キャメロン「ニューポート」
【2】ピン「アンサー」
【3】オデッセイ「ホワイトホット」
【4】テーラーメイド「スパイダー」
【5】ウィルソン「8802」
パター職人のスコッティ・キャメロンが立ち上げたパターブランド。精巧で美しく、とにかくカッコいいという、見た目の第一印象を持つ人も多いことでしょう。現在はタイトリスト傘下で、販売されています。
名器と名高い「ニューポート」は、精巧なデザイン、操作性の良さ、ブレード型らしからぬミスへの寛容さ、そしてソリッドで澄んだ打感などが高く評価されています。
なお、「ニューポート」と「ニューポート2」はフォルムのみが異なるモデル。やわらかな見た目が好きな人は「ニューポート」、カチッとしたフォルムが好きな人は「ニューポート2」と、好みで選んで問題ありません。
特にニューポート2は、タイガー・ウッズが1999年から愛用し、多くの大会で彼の勝利を支えた名器として知られています。
■主な使用プロゴルファー:タイガー・ウッズ、リッキー・ファウラー、ブルックス・ケプカ、松山英樹など
1966年に誕生し、現代パターの原型となった、ブレード型パターの名器。パッティングの問題に対する「答え」であることから、その名が付けられました。アンサーの特徴は、ブレード型のデザインと、均一な重量配分にあります。
帝王ジャック・ニクラウスをはじめ、多くのプロゴルファーに愛用され続けてきたアンサー。「THE・名器」をひとつだけ選ぶとなると、その歴史的位置付けからも、ピン「アンサー」を選ぶ人は多いでしょう。
実際、スコッティ・キャメロン自身が「アンサーはパター史上で最高のモデルだと思います。」と語っているほどなのです。
■主な使用プロゴルファー:ジャック・ニクラウス、トム・ワトソン、アーニー・エルス、渋野日向子など
オデッセイは1991年にカリフォルニアで設立され、1997年にキャロウェイゴルフに買収されました。
オデッセイの初代「ホワイト・ホット」は2000年の発売。「ホワイトホット #1」を愛用したフィル・ミケルソンや「ホワイト・ホット 2ボール」を愛用したアニカ・ソレンスタムが多くのトーナメントで勝利したことで、広く知られるようになりました。
ソフトなフィーリングの「樹脂インサート」が特徴。ボールのカバーと同じウレタン素材同士を衝突させることで、軟らかな打感、独特の心地よさを持つ打球音、そして転がりのいいボール初速を実現させています。
■主な使用プロゴルファー:フィル・ミケルソン、アニカ・ソレンスタム、石川遼、青木瀬令奈など
2008年に発売された、初代のスパイダーは正式名称を「ロッサ モンザ スパイダー AGSI+」と言いました。当時、テーラーメイドの「ロッサ」(Rossa)シリーズは、世界中の有名サーキットをモデル名にしており、「モンザ」はイタリアのモンツァ・サーキットを指しています。
その後にロッサシリーズは、スパイダーシリーズとして展開。2009年に片山晋呉が「スパイダー」パターを使用して、マスターズで4位に入ったことをきっかけに日本で爆発的にヒット。その後のスパイダーの日本での流行のきっかけとなりました。
さらに2011年のマスターズで2位になったジェイソン・デイが「スパイダー・ゴースト」を使用していたことをきっかけに、さらに知名度を上げました。
スパイダーシリーズは、ネオマレット型のヘッドと、高い慣性モーメント(MOI)が特徴。ミスヒットに強い高い安定性と大きなスイートスポットが高く評価されています。シリーズ全体に愛用者が多く、名器といわれるパターも複数存在します。
近年のパター市場で大きな影響力を持つパターです。
■主な使用プロゴルファー:ダスティン・ジョンソン、ローリー・マキロイ、ジェイソン・デイ、古江彩佳 など
1962年の誕生以来、名器パターとして、現在でも高い評価を得ています。マスターズ2勝のベン・クレンショーが少年時代から愛用していたことでも知られ、人気の高さから度々復刻もされている不朽の名器パターといえるでしょう。
8802はクラシックなブレード型で、ヘッド後方に丸みを帯びたフランジを持ったグースネックのパターです。非常にシンプルなデザインで、その洗練された打感とフィードバックが多くのゴルファーに愛されています。
■主な使用プロゴルファー:ベン・クレンショーなど
名器パターには、確かな技術と長年の歴史が詰まっています。しかし、パター選びに最も重要なのは、やはり自分にフィットするかどうか。打感や打ちやすさ、デザインなどトータルで含めて、自分にぴったり合うパターが見つかると、プレーの質も向上し、ゴルフの楽しさが広がります。ぜひ最適なパターを見つけ、スリリングで、華麗なショートゲームを楽しんでみてください。
パターの選び方の参考として、関連記事「パターの種類を知って、自分に合った最高の一本を見つけよう!」も是非ご覧ください。
<ゴルフ情報ALBA Net>
記事提供元:ゴルフ情報ALBA Net
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