【#佐藤優のシン世界地図索154】高市幕府の"女豹"・高市将軍はジャングルの中でどう生き残る?
イチオシスト

高市首相とトランプ米大統領は、仲良しこよしでいられるのか......(写真:時事)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!
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――去る3月19日に日米首脳会談がありましたが、佐藤さんはどうご覧になりましたか?
佐藤 インテリジェンス、外交の技法の観点から見ると満点です。高市早苗首相はトランプ大統領と見事に渡り合い、日本の国益を守りました。
――モサドがいいことを言ってますね。「世界で一番、インテリジェンスで出方がわからないのがトランプだ」と。
佐藤 30分ごとに言うことが変わる人間の分析はできませんからね。
――逆に言うと、情報戦おいて世界最強の兵器はトランプなんじゃないですか?
佐藤 そう思いますよ、予測不能ですから。高市さんはトランプ氏がどのようなことを言い出しても対応できるよう、入念に準備しました。インテリジェンス面で、高市首相を内閣情報調査室がしっかり支えました。
――以前、佐藤さんがおっしゃっていたではないですか、「トランプと会談するなら、動物園の飼育係を連れて行け』と。高市幕府の女豹・高市将軍の隣に使える人間が座っていたら、「分かっているな、将軍様」となる。
佐藤 はい、その通りです。
――一方、ロシアに関しては鈴木宗男先生が頂いた"ロシアからの愛を込めてのメッセージ"がありましたね。「日本はハンガリーのようになったらいいじゃないか」と。
佐藤 はい。スロバキアなどの味方が出てきましたね。それから、イスラエルもロシア制裁には加わっていません。
日本は決して孤立しているわけではなく、仲間がたくさんいるわけです。トランプのアメリカ、ネタニヤフのイスラエル、それからハンガリー、スロバキア、ベラルーシ、サウジアラビア、トルコ。そんな素敵な仲間たちがいるから、心配しないでいいんですよ。
――それらのお仲間国家は全員、国際法とは無関係。自分たちの都合で全部変えていく、素敵な勇気と正義のある方々......。
佐藤 いやいや、国際法には従わなければなりません。ただし、それは「受動的客体」ではなく、国際法を形成する「能動的主体」です。そしてこれらは、田畑茂二先生や安井郁先生たちが、「大東亜国際法」という形で過去にやっていました。
――トランプのアメリカが使っているのが大東亜国際法!!
佐藤 トランプさんは「新しい国際法」を作っているのです。いまトランプのやっていることは、80年前に日本がやっていたことの後追いです。
――となると、高市幕府はみんなの見本になりますか?
佐藤 その通りです。正確に言えば高市幕府の前に東條幕府という見本があります。
――東條英機! すると、東條幕府が使っていた国際法を、現代になってみんなで真似していると。たしかにトランプは、イランがホルムズ海峡にばら撒いた機雷に対して、「船はホルムズ海峡を通過して根性を見せるべきだ。恐れることは何もない」と言っていました。
佐藤 はい。むしろ日本が東條総理というモデルを提供して、それで世界が動いているわけですから、心配はないんですよ。
――そうすると、日本は世界から尊敬されますね。
佐藤 尊敬されるかどうかは、よくわかりません。しかし、東條さんを新帝国主義の洗礼としてみることは可能です。大東亜戦争の「開戦の詔勅」を見てみるといいですよ。そこには、帝国の自存自衛と恒久平和の樹立のために戦っている、世界平和のために戦わざるを得なくなったと書いてあります。
《皇祖皇宗の神霊上に在り 朕は汝有衆の忠誠勇武に信倚し祖宗の遺業を恢弘(かいこう)し速(すみやか)に禍根を芟除(せんじょ)して東亜永遠の平和を確立し以(もっ)て帝国の光栄を保全せむことを期す》
トランプの言っていることと一緒です。
――トランプはそれを英語でちょいと荒っぽく言っているだけで、内容は同じなんですね。トランプはすでに、東條将軍と化している。
佐藤 トランプは無意識のうちに日本から学んでいるわけです。だから、ふやけた国際法とは別で、大東亜国際法が蘇ります。"世界に蘇る大東亜国際法"ですね。
――何だか日本人としての全身全霊が打ち震えます。大東亜国際法も、国策映画で描かれていますか?
佐藤 上原謙が憲兵隊の外事課長役で出ている『開戦の前夜』という国策映画があります。
――なんと!!
佐藤 だから、世界はだんだん"普通"になってきているんですよ。レーニンは帝国主義において戦争は避けられないと言いました。国家間の関係を戦争で調整するのが、帝国主義においては普通なのです。
――普通に......。世界は混迷して複雑になっているのではないと。日本の歴史、大東亜戦争前後をみれば、全てどうなるかがわかるということですか?
佐藤 そうです。第二次大戦前、ミッドウェイ海戦までの日本がやっていることと、だいたい同じ感じになっています。
――それを超えると超怖い玉砕と、核戦争の世界なる。
佐藤 核戦争には至らないでしょう。しかし、通常兵器を用いた戦争は常態化する可能性があります。しかも、開戦の詔勅には、国際法遵守という概念はありません。
――ないんですか。
佐藤 日露戦争と第一次大戦の時はありました。その時は、大東亜国際法が存在しませんからね。
しかし、大東亜国際法の時代になったことで、白人の作った国際法には従わなくていいとなったのです。だから、『戦場のメリークリスマス』のビートたけし演じるハラ・ケンゴ軍曹が現れたのです。
――ハラ軍曹はまさに、大日本帝国陸軍の下士官の鏡というか、捕虜たちをぶん殴って、暴力で捕虜収容所を支配していましたからね。
佐藤 だから、世界はハラ軍曹の世界に入っているんです。そしてその世界は、新しい国際法を作っていっています。
そう考えると全然、調子は悪くないんですよ。トランプは我々がいつか来た道だから、日本の方が先輩ですから。
だから、日本はとにかく何事も躱(かわ)して、一切、国際法的な判断をしないことです。どっちに転んでもいい事がなければ、判断してはいけないんです。賭博用語でいう「見(けん)」ですね。これが動物で言えばヒョウのやり方です。様子をよく見て、ライオンとハイエナの喧嘩には立ち入らないことが重要です。
――高市将軍は賢い女豹で見(けん)に回る。高市首相の表情は女豹に似てますよ。良い時はニコリと笑い、ダメなときは怖い。
佐藤 そう、猫系でしょ。猫系だから、チームワークが苦手なんですけどね。
――納得です。
佐藤 だから、日本政府の指示方法ははっきりしています。上司から部下にひと言、「うまくやれ」と伝えるだけです。失敗すれば部下の責任、成功すれば上司の成果ですけどね。これも大日本帝国の伝統です。
――最悪のトップじゃないですか!!
佐藤 それはアングロ・アメリカン型リーダーシップ論で考えるからです。日本型の組織は、リーダーシップ論とかは関係ないんですよ。トップが「うまくやれ」と言えば、後は有能な部下たちがうまくやります。高市政権も現状では全てうまくやっています。
――うまくやったときの女豹はニコリと笑い「よくやった」と。
佐藤 そうです。だから、総理からの指示はいつも、はっきりしている。「うまくやれ」、または「うまくやってください」だけで事足りるんです。
だから、高市幕府も地のままでいけばいいんです。バイデン前米政権時代に作られたルールに従う必要はありません。とにかくトランプとは喧嘩しないことです。うまくやることです。
――相手はライオン、こちらはヒョウですからね。
佐藤 そうです。ヒョウの方がライオンよりも頭がいいです。
次回へ続く。次回の配信は4月10日(金)を予定しています。
取材・文/小峯隆生
記事提供元:週プレNEWS
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