ベトナム帰還兵が戦争の悲惨さを綴った書籍を、塚本晋也監督が映画化「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」
イチオシスト
ベトナム戦争に出征したアレン・ネルソン氏が戦場での体験と帰還後の葛藤を綴った書籍を、「野火」の塚本晋也監督が映画化した「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」が、9月よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開される。場面写真が到着した。

ニューヨークの貧しい家庭に生まれ、差別と貧困から抜け出すため18歳で海兵隊に入ったアレン。沖縄のキャンプ・ハンセンを経て1966年、映画のヒーローのようになれると信じてベトナム戦争の最前線へ向かう。だが待っていたのは、ベトコンを見つけ出すため老若男女すべてを疑い、ただ人を殺していく凄惨な現実だった。その中でアレンは心の感覚を失い、23歳で帰国した後も戦場の記憶に縛られる。そして大きな音や暗闇に怯え、家族との関係を崩壊させてホームレスに。そこへ現れた退役軍人病院のダニエルズ医師は、アレンを救おうと正面から向き合っていく──。
キャストにブロードウェイミュージカル『RENT』のロドニー・ヒックス、「シャイン」「英国王のスピーチ」のオスカー俳優ジェフリー・ラッシュらを迎え、ニューヨーク、タイ、ベトナム、日本の連携により撮影された。なおネルソン氏は日本全国で1200回以上の講演を行い、「ほんとうの戦争」とは何かを語り続け、日本で永眠している。
塚本晋也監督コメント
大岡昇平さんの「野火」を映画化するとき、さまざまな資料、書籍を読んだが、そのとき出会った何よりも恐ろしいノンフィクションが『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』だった。アレン・ネルソンさんは、ベトナム戦争で多くの人を殺した。そして戦争後遺症に生涯悩まされ続けた。自分の犯した罪とその後の人生を包み隠さず吐露した本は、いつまでも頭から離れず強烈に自分の心に刻み付けられた。
これがもし映画になったら?と想像すると、今の世の中に絶対必要なことに思えた。戦争がどういうものか。戦争が人をどう変えるか。周囲の人にどういう影響を与えるか。
同時に、そんな恐ろしい考えは持たないようにしよう、と逃げる理由も考えた。
映画化はあまりに難しく、逃げる理由はいくらでも並べることができた。
その物語に近づこうとするたび、人間の暗部がいやというほど浮き彫りになり、苦痛を感じた。しかし、体は、この企画の実現のためにとどまることを忘れ休みなく動き続けた。果たして映画化は困難を極め、作らなければ、でも逃げたい、というせめぎ合う気持ちは7年もの間完成に到るまで続いた。
あちこちで戦火をあげている今の世界。それをますます身近に感じるようになった。これは、アレン・ネルソンというアフリカ系アメリカ人の一人の兵士を描いた真実の物語だ。
今は亡くなってしまったアレンさんを蘇らせ、人々に知ってもらうことが今の世の中にどうしても必要、という考えを捨て去ることができずに、多くの人たちの理解と協力を得て完全なものとして出来上がった。
彼の生きる姿が、皆さんの心に届くことを心から願っています。
「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」
監督・脚本・撮影・編集:塚本晋也
原作:「「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 ベトナム帰還兵が語る「ほんとうの戦争」」(アレン・ネルソン著、講談社文庫刊)
参考文献:「戦場で心が壊れて 元海兵隊員の証言」(アレン・ネルソン著、新日本出版社刊)
出演:ロドニー・ヒックス、ジェフリー・ラッシュ、マーク・マーフィー、タチアナ・アリ
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners
公式サイト:nelsonsan.jp
記事提供元:キネマ旬報WEB
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