夜は天の川、朝は地獄。サハラ砂漠キャンプの真実|親子2人海外キャンプ旅【エジプト後編】
イチオシスト
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未知の世界の砂漠キャンプへ

記念すべき中東・エジプトでのキャンプ1泊目を終え、少しずつ環境にも慣れてきた私たちが次に向かうのは、砂漠の国エジプトならではの「砂漠キャンプ」です。
皆さんは「砂漠でキャンプ」と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか。遭難の危険がありそう、過酷で危ないのでは? そう感じる方も少なくないかもしれません。しかし実際には、比較的安全に楽しめる砂漠のキャンプ場も存在します。
今回は、筆者が実際に訪れた砂漠のキャンプ場の中から、安心して利用できる場所をいくつかご紹介していきたいと思います。実はエジプトには想像以上に多くのキャンプ場があり、その大半が砂漠地帯に位置しています。まさに、砂漠キャンプこそがエジプトキャンプの王道なのです。
砂漠の国なのに普通に快適。エジプトのサービスエリア事情
大都市カイロを離れ、エジプトのハイウェイを走り出します。目の前には大きな空と、地平線まで続く一面の砂漠。片側4〜5車線もある視界の開けた道路が、果てしなく続いています。こうした景色を目にすると、「本当に海外に来たんだ」「遠くまで来たんだな」と一気に実感が湧いてきます。

カイロを出発してから約2時間。そろそろお腹も空いてきたため、トイレ休憩と食事を兼ねてサービスエリアに立ち寄ることにしました。
エジプトのサービスエリアと聞いて、皆さんはどんな場所を想像するでしょうか。筆者も中東・エジプトでの運転は初めてだったため、正直まったく想像がつきませんでした。

しかし実際には、日本と同じように一定間隔でサービスエリアのような施設がハイウェイ沿いに設けられています。ハイウェイから施設が見えたら、そのまま直接入っていくスタイルです。
中にはトイレ、ショップ、レストラン、軽食店などが揃っており、基本的な構成は日本とほとんど変わりません。ただし、雰囲気はすべてアラブ風。異国情緒たっぷりです。

トイレを済ませ、レストランに入ると、恰幅の良いオーナーらしき男性が「ご飯を食べるのか?」と声をかけてきました。迷わず「食べます」と即答。席に案内されると、なんとメニューはなく、料理が次々と運ばれてくるスタイルでした。ここは日本とはまったく違います。

並んだ料理は、ピタパン、サフランライス、トマトスープ、マカロニスープ、トマト、そして焼きチキン。味付けは日本人の口にもよく合い、空腹だった私たち親子にとっては大満足の、素晴らしいアラブランチとなりました。しかもお値段は一人あたり約300円。驚きのコストパフォーマンスです。

サービスエリアで売られている商品を眺めていると、ひときわ目を引く大きな水のペットボトルを発見しました。容量はおよそ20リットルはありそうな、かなりの大きさです。よく考えてみれば、これから向かうのは砂漠でのキャンプ。水が最重要アイテムであることは言うまでもありません。
飲み水としてはもちろん、料理や手洗い、さらには食器洗いにも使えるため、迷わず購入しました。準備も整い、いよいよ本格的な砂漠地帯へと突入します。
突然現れる“黒い山”。異世界すぎる黒砂漠へ

砂漠の道を、ただひたすら進んでいきます。カイロを出発してから4時間ほど運転すると、道路は片側1車線ずつとなり、行き交う車の数もほとんど見かけなくなりました。
携帯電話の電波もほぼ入らず、もしこんな場所で遭難したらと思うと、正直なところ恐怖すら覚えます。

さらにしばらく走り続けると、道路から少し離れた場所に、黒く染まった山々が見え始めました。『黒砂漠』(地図)と呼ばれている場所に差し掛かりました。道路沿いの看板には、そのまま「Black Desert」と記されています。非常に珍しい光景ですが、なぜ山が黒いのかというと、岩に鉄分が多く含まれているためそう見えるのだそうです。
この黒い小高い山々を登ることができる現地ツアーもあり、砂漠の中でもひときわ異彩を放つスポットとして知られています。
目的地の白砂漠のキャンプ場に到着
white desert(エジプト・ファラフラ)

黒砂漠を後にしてから、さらに1時間半ほど車を走らせると、いよいよエジプトでの2泊目のキャンプ地となる「白砂漠(white desert)」(地図)に到着しました。
白砂漠地帯に入り、しばらく走っていると、道路から砂漠へと降りていけるポイントが現れます。白砂漠の主成分は石灰です。この地域が海の底だった時代に堆積した石灰質の地層でできています。

さて、ここで気になるのが「砂漠に車で入っても大丈夫なのか?」という点ですが、白砂漠一帯には簡易的な道があり、その上を走る分には基本的に問題はありません。とはいえ油断は禁物。地面の硬さをその都度確認しながら、慎重に進んでいきました。
私たちはスタックするリスクを避けるため、あまり奥までは進まず、道路から見える範囲に留めることにしました。この辺りまでは地面もしっかりしており、特に問題はなさそうです。
ただし、さらに奥へ進む場合は、本格的な四輪駆動車が必要になるでしょうし、何より経験豊富なガイドがいなければ行くべきではないと感じます。
どうしても奥の景色を見たい場合は、車を停めて徒歩で向かうのが安全でおすすめです。
体験したことのない「静寂」。音のない砂漠の夜

白砂漠一帯は国立公園に指定されており、園内のどこでも自由にテント泊が可能です。ただし、キャンパーとしての最低限のマナーは守る必要があります。ゴミは必ず持ち帰るなど、自然環境への配慮を忘れてはいけません。
砂漠の公園内に響くのは、風が吹き抜ける音だけ。まさに「静寂の世界」と呼ぶにふさわしい空間が広がっています。石灰岩によって形作られた、どこまでも白い砂漠と奇岩群。その景色は、どこを切り取っても絵になる絶景です。

この圧倒的な美しさを目の前にすると、「世界の果てまで来たのだ」と、自然と実感させられます。
何にもない砂漠といえども、訪れた際には目にしませんでしたが、稀にジャッカル・フェネック(砂ギツネ)・ガゼルなども生息しているそうです。

白砂漠の中を慎重に車で走らせながら、およそ30分ほどかけて今夜のキャンプ地を探しました。正直なところ、どこに張っても問題はないのですが、太陽の直射日光を受けるとやはり暑いため、特徴的な奇岩を背にし、自然と影ができる場所を選ぶことにします。
見渡す限り人の姿はなく、壮大な景色を独り占めできるキャンプは、まさに贅沢そのもの。陽が沈むと同時に気温は一気に下がり、昼間の暑さが嘘のように和らぎました。砂漠は日中は暑く、夜になると肌寒いほど冷え込むと聞いていましたが、まさにその通りです。湿度もほとんどなく、驚くほど快適に過ごすことができました。

日本の夏キャンプでは、夜になっても湿気で不快に感じることがありますが、ここではそうした不快感は一切ありません。
テントを張り終えると、夕食の準備に取りかかります。この日のメニューは、スーパーで購入したハンバーグ。それをマルチグリドルでじっくり焼き上げ、美味しくいただきました。
人生で一番の星空。天の川が“流れて見える”夜

陽が完全に沈むと、先ほどまで目の前にあった奇岩の姿も見えなくなるほど、辺りは一気に暗闇に包まれました。すると次第に、地平線から天頂にかけて、星々が隙間なく空を覆い始めます。
ここは砂漠。雨はおろか、雲すらほとんど発生しない乾燥地帯です。日本でも星空を求めてキャンプ場を訪れることはありますが、夜まで快晴が続くことは決して多くありません。その点、雲ひとつない砂漠の夜はほぼ快晴。さらに周囲に大都市がなく、光害もない場合、日本では決して見ることのできないほど、くっきりとした天の川を目にすることができます。

夕食を終え、片付けも済ませた後、椅子に腰掛けて空を見上げました。地平線から天頂へと、まるで川のように流れる天の川。その光景は、一生忘れることのない星空として、深く心に刻まれます。
本当にこんな遠方までキャンプをしに来た甲斐があったと思った瞬間でもありました。
次の砂漠キャンプ場へ

地平線から太陽が昇り、白砂漠を煌々と照らし出す、まばゆい朝を迎えました。相変わらず周囲は音ひとつなく、砂漠ならではの静寂に包まれています。
まだ残っていたピタパンとクリームチーズで簡単な朝食をとり、次のキャンプ地へ向かう準備を始めました。来た道を寸分違わずに引き返し、無事にハイウェイへと戻ることができました。

白砂漠から車でおよそ30分ほど走った場所にあるのが、世にも珍しい「クリスタルマウンテン」(地図)です。名前から宝石のようなものを想像しがちですが、実体は鉱物である石英(クォーツ)。車を降りて山の周辺を歩いてみると、地面のあちこちにクリスタルが露出し、落ちているのが確認できます。

クリスタルマウンテンも白砂漠と同様、数千万年前には海の底にあった場所です。その後、地殻変動や火成活動によって地下深くに存在していた鉱物層が地表近くまで押し上げられ、長い年月をかけた風化と侵食によって、現在のような不思議で幻想的な景観が形作られました。
砂漠に温泉?オアシスでまさかの神体験

白砂漠へ向かう途中、車で通り過ぎたオアシス都市バウーティー。実はこの町には、「砂漠なのに温泉が湧いており、しかも誰でも無料で入浴できる場所がある」という話を聞き、立ち寄ってみることにしました。
町のメインストリートから少し外れた場所には、青空天井の開放的な温泉があり、誰でも自由に入れるようになっています。私たちは車の中で水着に着替え、しばらくキャンプ続きで体を洗えていなかったこともあり、まるで飛び込むような勢いで湯船へ。

湯加減はちょうど良い約40℃。まさか砂漠のオアシスで、こんな温泉体験ができるとは思ってもいませんでした。キャンプの疲れを一気に癒やしてくれる、私たち親子にとって忘れがたいひとときとなりました。

果てしない砂漠の旅を続けていると、ガイドのいない個人旅行ということもあり、食料や水を十分に積んでいても、どこか不安がつきまといます。
オアシス都市バウーティーを出発した後は、カイロ方面へ戻るため、再びハイウェイを進むことにしました。


とはいえ、砂漠を貫くハイウェイ沿いには、町がなければショップやガソリンスタンドもほとんど見当たりません。視界に入るのは、どこまでも続く砂漠の風景と走り去るトラックだけ。ごく稀に、悠然と歩くラクダの姿を目にすることもあります。
そんな景色の中を走りながら、日本にいる頃から目星を付けていた「砂漠の湖」にあるキャンプ場を目指して、さらに車を進めていきます。
砂漠の城塞都市のようなキャンプ場に到着
Qatrani Camp(エジプト・ファイユーム)

カイロ方面へ向かうハイウェイを離れ、モエリス湖へと続く道へ進みます。やがて両側に小高い砂山が連なる道となり、そのまま車を走らせていると、ふいに道路から一本の脇道が伸びているのが見えました。
「どうやらここから入るのだろうか」と思い、そのまま進んでみることにします。

しばらく走ると、突然、藁のような素材で作られたゲートや人工物が現れました。本当にこんな場所にキャンプ場があるのだろうかと、不安を抱えながら進んでいたこともあり、その入口を目にした瞬間、心の底からほっとしました。雰囲気はまるで忘れ去られた砂漠の古都のような情景です。
キャンプ場の名前は『Qatrani Camp』(地図)で予約は事前にWhatsAppで予約しておくのがおすすめです。

入口を入ると、若い男性が一人で留守番をしていました。事前に予約をしている旨を伝えたものの、どうやら情報共有がうまくいっていなかったようで、「何泊か」「何人なのか」といった質問を受け、オーナーらしき人物に電話で確認する場面もありました。正直なところ、「本当に大丈夫だろうか」と少し不安になります。
しかし最終的には問題なく手続きが完了し、料金を支払って無事に中へ通されました。料金はテント泊で2名、1泊1000エジプトポンド(約3000円)ほどでした。

キャンプ場の中は、周囲が砂漠の大地であるにもかかわらず、設備がしっかり整っています。バンガローや常設テント、管理棟、炊事場、トイレ、ファイヤーピットなど、必要なものはほぼ揃い踏み。
周辺にはキャンプ場以外に何もない環境だからこそ、この設備のありがたみが一層身に染みました。

肝心のテントは、景色の良い高台の端に設営することにしました。写真では崖のようにも見えますが、実際には下は段々状になっており、万が一足を踏み外しても危険はありません。息子が誤って落ちてしまっても問題ないと判断できる場所でした。

展望は申し分なく、砂漠と湖を一望できる、まさにスーパービューポイント。贅沢そのもののロケーションでのキャンプとなりました。
このときは夏のため日中は刺すような暑さですが、夜になると気温は20℃前後まで下がり、ひんやりと心地よくなります。この日は風もほとんどなかったため、思い切ってフライシートを外し、展望を最大限に楽しめるインナーのメッシュ生地だけでキャンプをすることにしました。
しかし、この後に肝心なことを一つ忘れていたことに気づきます。
翌朝、ちょっとした悲劇が待っているとは、このときはまだ知る由もありませんでした……。
キャンプ場に到着したのは夕方5時頃。そこから景色は、夕暮れから夜へと刻々と表情を変えていきます。広大な風景を見渡せる場所に、キャンプ場備え付けの椅子と机を並べ、息子は夏休みの宿題に取り組み、筆者は夕食の支度を始めました。
気がつけば周囲はすっかり暗くなり、キャンプ場内ではトイレと管理棟から漏れる、かすかな明かりだけです。不思議なことに、砂漠の夜はまったく怖さを感じませんでした。無風で、音ひとつしない静寂に包まれていたからか、まるで音のない砂浜に佇んでいるような、不思議な感覚になります。

満天の星空の下、息子とエジプトでのキャンプの思い出を語り合いながら、息子の大好物であるパスタを食べ、この日は静かに眠りにつくことにしました。
やらかした。砂漠キャンプ最大のミス

東の地平線から太陽が昇り、強烈な日差しを浴びながら、息子と二人で砂漠の朝を迎えました。起き上がってすぐ、ある異変に気づきます。テントの中も、そして自分たちの体も、砂だらけではありませんか。

そうなのです。メッシュ生地は目が細かいとはいえ、さすがに砂漠の砂は簡単に通り抜けてしまいます。無風だと思っていましたが、どうやら夜の間にそよ風程度の風は吹いていたようで、テントの中だけでなく、私たち自身も見事に砂まみれになっていました。
アウトドア経験があるとはいえ、砂漠の「砂」への配慮が足りなかったのは、完全に自分の反省点です。それでも、砂だらけになりながら親子二人で笑い合い、テントの外へ出て朝日を全身に浴びました。
世界のどこにいても、やはり太陽は偉大です。その光を受けると、不思議と全身に力がみなぎってくるのを感じました。

朝日を浴びた砂漠の景色があまりにも素晴らしく、息子と二人でしばらく歩いてみることにしました。このキャンプ場には明確な境界線がなく、どこまでも歩いていけそうな開放感があります。とはいえ、10分ほど歩いたところで、来た道をそのまま引き返しました。

日本では決して見ることのできない景色を前に、二人で言葉を交わしながら、その一瞬一瞬を噛みしめるように歩いた時間は、とても貴重なもの。テントに戻ると、残っていた食材のインスタントラーメンで簡単な朝食をとり、撤収の準備に入ります。
こうして片付けを終え、今日はカイロへ戻ることにしました。
そう、エジプトでのキャンプは、この日で最後です。
「エジプトでキャンプ」意外とアリです

エジプトでの壮大なキャンプ旅、いかがでしたでしょうか。
「エジプトでキャンプ!?」と、あまりにも常識外れだと感じた方も多いかもしれません。しかし、意外と“アリ”だと思いませんか?
よく聞かれることですが、世界中どんな国にも、必ずと言っていいほどキャンプ場は存在します。せっかく「キャンプ」という趣味をお持ちなのであれば、興味のある国を旅しながら、キャンプで過ごしてみるのもひとつの楽しみ方ではないでしょうか。最初は、ホテル半分・キャンプ半分といったスタイルでも十分に楽しめるはずです。
前編・後編にわたってエジプトでのキャンプ体験をお伝えしてきましたが、実は今回ご紹介できたのは、エジプトキャンプのほんの一部に過ぎません。またあらためてエジプトを訪れ、より一層パワーアップした自分たちで、エジプトキャンプに再挑戦したいと思います。
前編はこちら
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記事提供元:CAMP HACK
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