【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】2026年のF1 は"レースの見方"を学んでいくシーズンになる!
イチオシスト

「各チームは開幕に迎えて開発の真っ最中です。テストで開幕戦ではまったく違うマシンが出てくると思いますので、楽しみです」と語る光一
1月下旬にスペインのバルセロナで1回目のプレシーズンテストが開催され、各チームがニューマシンでの走行を行なった。2026年シーズンはレギュレーション変更によって車体とパワーユニット(PU)が大きく変わるため、自社で車体とPUを開発するワークスチームが圧倒的に有利と見られている。
実際にバルセロナでもメルセデスやフェラーリが好調な走りを披露していたが、手の内を隠しているチームもありそうだった。
2月に入り、中東のバーレーンを舞台に2回のテスト(2月11日~13日、2月18日~21日)が始まった。これが開幕前の最終調整の場となるため、各チームの現時点での開発状況や実力が見えてくるはずだが、果たしてどんな勢力図になっていくのだろう?
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【バラエティに富んだニューマシン】各チームの2026年仕様のマシンは一通りチェックしました。見た目だけで言うと、2004年ぐらいのマシンに似ているように感じました。ボディの形状は現在に比べるとシンプルですし、フロントウイングのサイズ感もその頃に近いという印象があります。
テストでは各チームはマシンにいろいろなことを試し、改良の真っ最中という感じでしたね。新レギュレーションの初年度ということもあり、手の内を隠しつつも、細部を見るとさまざまなアプローチをしていました。
昨年は接戦で面白かったですが、マシン底面を流れる空気を利用してダウンフォースを稼ぐ"グラウンドエフェクトカー"のレギュレーションが導入されて4年目となり、マシンのデザインはどんどん収束されて、どのチームも似たような形状になっていきました。正直、各マシンを比べる面白さはあまりなかった。
グラウンドエフェクトカーが導入された最初の年は、メルセデスが極端にサイドポンツーンを小さくした独創的なデザインの"ゼロポッド"を投入したり、フェラーリはサイドポンツーンの上面をえぐったマシンを持ち込んだり、各チームのレギュレーションに対するアプローチが異なり、パッと目で見て、マシンの形状が違っていました。
今年も2022年と同じように、バラエティに富んだマシンが出てきているので、そこがファンとしては興味深いところです。例えばフロントウイング。今年は前後のウイングが可動する"アクティブエアロ"が新たに導入されますが、多くのチームは2枚のフラップを動かす形を取っています。
でもメルセデスとアストンマーティンは可動するフラップは1枚のみ。フロントウイングの取り付け方も独特です。
リヤウイングはアルピーヌが独自のアプローチをしています。ウイングを可動させる際はフラップの前側を持ち上げるのが一般的ですが、アルピーヌは後端を下げる機構を採用しています。ほかのチームと逆の発想なんですよね。
今年のマシンにはそういう新しいアイデアがたくさんあって、それらを見ながら「本当に効果的なの? こういう狙いがあるんじゃないのか?」と想像するのが楽しいんですよね。
【カッコよさではアストンマーティンが一番】「速いマシンはカッコいい」とよく言われますが、F1の長い歴史をたどっていくと、その言葉はあながち間違いではないと言ってもいいと思います。不思議と速いマシンは魅力的に映ります。

バーレーンのテストに先駆け、2026年のカラーリングを発表したアストンマーティン。マシンは今年からパートナーを組むホンダのHマークが大きく入る
そういう意味では、ホンダと新たにパートナーシップを組んだアストンマーティンのニューマシン、AMR26は精悍で、一番カッコよく見えます。さすが"空力の鬼才"と呼ばれるエイドリアン・ニューウェイです。革新的なデザインがいくつも見られました。
まず目につくのがサイドポッドあたりからリアにかけての形状です。ものすごく絞り込まれていますし、サイドポッド下部のエグれ方が半端じゃない。「このスペースにホンダのPUを収めているの!?」と驚くぐらい、コンパクトになっています。
エンジンを冷却するためのサイドポンツーン前方にある空気の取り入れ口もメチャクチャ狭い。空力的には確かにすごいのでしょうが、逆に言えば「ホンダのPUは熱処理がきちんとできるのかな?」と心配になるぐらいです。
ホンダのPU開発の総責任者を務める角田哲史(かくだ・てつし)さんにインタビューした際、「ニューウェイさんがアストンマーティンで実働し始めた昨年の3月からいろんな変化が始まりました。われわれに対して具体的に、こうしてくれればこういうことができるという感じで、リクエストが来るような形になっています」と話されていました。
ニューウェイは空力効率を少しでも上げるために、PUメーカーに対しては厳しい要求をしていると思います。それに対してホンダが対応できているということは、この絞り込みを見ても想像ができますよね。
あとリアサスペンションの処理も独特で、アームがウイングのステーに直付けされています。この手法はマックス・フェルスタッペン選手が初めてチャンピオンになった2021年シーズンのレッドブル・ホンダのマシンRB16Bに取り入られています。AMR26は空力やサスペンションの処理を含めて、RB16Bの片りんを感じます。
でもアストンマーティンはまだいろいろ隠しているような気がします。開幕までにはさらに改良が進み、テストとは違うマシンが出てくると思うので、すごく楽しみ。
デザイナーのニューウェイのこだわりが詰まったアストンマーティンがホンダのPUとうまくマッチングして、これからの先の空力のトレンドになっていくのか。そこは注目していきたいです。
【好調な走りを披露するメルセデスとフェラーリ】オフのテストではメルセデスは調子が良さそうでしたね。メルセデスはマシンにはあまり目立った特徴はなかったですが、安定感があり、特にPUの性能 が良さそうです。いきなり、あれだけの距離を走るのはさすがです。

バーレーンでのテストでも安定した走りを見せるメルセデス。新しいPUの開発ではかなりを先行していると言われており、「飛びぬけてしまう可能性もありますね」と光一
チャンピオンチームのマクラーレンは今年も速いとは思いますが、ワークスのメルセデスの陰に隠れている印象でした。やっぱりカスタマーはPU関連の情報入手はどうしてもタイムラグがあるので、ワークスが有利なのかなと思いますね。
テストではメルセデスとともにフェラーリも好調そうですね。フェラーリのマシンで注目すべき点は、相当軽く仕上がっているところです。
今年はマシンの最低重量は768キロと、前年よりも30キロも減少しており、ウイリアムズなどは軽量化に苦しんでいると言われています。でもフェラーリはすでに最低重量のプラス数キロというところまで来ているようです。もしそれが本当であれば、ほかのチームにとって大きな脅威だと思います。

バーレーンのテストでフェラーリのニューマシンをドライブするハミルトン。「新しいマシンの運転は楽しいよ」と語っている
レッドブルは自社製のPUを搭載したマシンで戦うのは初めてのシーズンなので苦しむのではないかと予想していましたが、テストの走りは悪くなさそうですね。マシン設計はかなり攻めており、サイドポンツーンはかつてメルセデスが採用していた"ゼロポッド"に近いデザインを取り入れています。
テストでは新加入のアイザック・ハジャ選手が「挙動がわかりやすい」とコメントしてたのが印象的でした。昨年までのマシンは挙動の予測が難しく、角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手は相当苦しんでいました。そこをしっかりと改善し、2026年はドライバーフレンドリーなマシンになっているのかなと感じました。
【進化するF1を楽しみたい】2026年はマシンが大きく変わり、チームとドライバー全員にとって一からのスタートになります。これまでとはマシンの走らせ方も変わってくると思いますが、どのように電気エネルギーをマネージメントしていくのかが勝負の大きな鍵を握りそうです。
ただ、ドライバーがどう電気をマネージメントしているのかは、レースを見ている側は非常にわかりづらいところがあります。
ホンダの角田さんも「ストレートで急にスピードが落ちないように前後のウイングか可動する"アクティブエアロ"が採用されていますが、電気がどこで減ったとか、回生しているとか、ファンの方にはわかりづらいかもしれません」と話していました。
そういった意味では、チームやドライバーは新しい戦い方を学んでいかなければなりませんが、見ているファンも"レースの見方"を学んでいくシーズンになると思います。
F1は変わっていくスポーツだし、進化していくスポーツです。今年のレースはまだわからないことも多いけれど、わからないからこそ面白い、と僕は思っています。シーズンの開幕が待ち遠しいです。
☆取材こぼれ話☆新レギュレーション初年度となり、さまざまなコンセプトのマシンが登場しているが、新規参戦のアウディやキャデラックブランドで参戦するGM(ゼネラルモーターズ)の新車はともにオーソドックスなデザインになっている。
「新規チームはまずは完走してなんぼですからね。マシンのデザインもシンプルで、信頼性に重点を置いているように見えます。
心配なのはウイリアムズです。バーレーンでのテストには登場しましたが、バルセロナのテストにはマシンが間に合わず、唯一の不参加チームとなってしまいました。昨年はいい走りをしてシーズンを盛り上げてくれたのですが。
新レギュレーションの初年度で、最初のテストで走行できないというのはかなり痛い。しかもウイリアムズは軽量化にも苦しんでいるようで、ちょっと心配ですね」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア ヘア&メイク/大平真輝
構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/Honda Mercedes-Benz Ferrari
記事提供元:週プレNEWS
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