【ビーフストロガノフ】あなたは知っていますか? ビーフストロガノフがどんな料理かを:パリッコ『今週のハマりめし』第224回
イチオシスト
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。
それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。
そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。
* * *
その日、僕にはどうしてもビーフストロガノフを食べなければならない理由があった。それ以上は聞かないでほしい。
ビーフストロガノフ。その料理名を聞いたことはあれど、それってどういうものだっけ? ビーフシチューやハヤシライスとはどう違うんだっけ? 茶色い? 白い? と、意外とぼんやりした認識の方も多いのではないだろうか。かく言う僕もそうだった。そこで一度、ビーフストロガノフときちんと向き合い、その存在を自分のなかで明確にしておきたかった。
ビーフストロガノフは、ロシア発祥の料理。細切りにした牛肉と、玉ねぎ、マッシュルームなどを、ブイヨンを主体としたサワークリームベースのソースで煮込むことによる、白っぽい色と、酸味とまろやかさのある味わいが特徴。名前の由来はロシアの貴族、ストロガノフ伯爵で、年老いて歯が弱り好物のステーキが食べられくなってしまった際、専属のシェフが考案したという説が有力だ。
というわけで、本来は白っぽい料理であったのが、フランスに渡ってデミグラスソースベースの茶色いものにアレンジされ、現在はどちらのスタイルも広まっているそう。
そんなビーフストロガノフの、由緒正しきロシア式、つまり白いほうをどこかで食べられないかなと探してみると、我が家から行きやすい吉祥寺に「Cafe RUSSIA(カフェロシア)」という店を発見。ランチでも気軽にビーフストロガノフが食べられるらしい。さっそく行ってみよう。

「Cafe RUSSIA」
駅近くの雑居ビルの半地下階に、その店はあった。前は何度も通ったことがあるけれど、こんなところにロシア料理店があったとは思いもしなかった。世の中まだまだ知らないことだらけだ。

店内
店内は異国情緒たっぷりで、各テーブルにかわいいピンクの花が飾られているのにときめく。
さっそくメニューを開くと、当然のことながらロシア料理だらけで、知らない料理もたくさんある。お目当ての「ビーフストロガノフ(ライス付き)」は、単品が税込1,200円か。

おすすめの組み合わせ
僕のような初心者にありがたいのが「おすすめの組み合わせ」というページで、「メニューの組み換えは自由です 参考にしてください」の言葉とともに複数の組み合わせが提案されている。なかでも「ボルシチ(ハーフサイズ)+ビーフストロガノフ(ライス付き)」(1,750円)に惹かれる。ボルシチもまた、ロシアではおなじみのスープ料理。これにしよう。

ウォッカで乾杯
せっかくのロシア料理、合わせたいのはやはりウォッカ。「旧都サンクトペテルブルグのあるレニングラード州とカレリア共和国との境にあるラドガ湖の水と冬小麦を使ったプレミアムウォッカ」だという、なんだかすごそうな「ロシアンスタンダード」(500円)を選んでみる。キンキンに冷えたそれは、初めて名前を聞いたラドガ湖の静謐な風景を想起させ飲みやすいが、40度あるのでしっかりと効く。一気に胃が温まってきたぞ。

「ボルシチ(ハーフサイズ)」
続いてやってきたのはボルシチ。メイン食材であるビーツ由来の鮮やかな赤が美しい。ひと口すすってみると、そうそう、ビーツってこうだった! という、大地に身を任せたようなあの味が口に広がる。とうもろこしのひげ風味というか。赤身の牛肉もたっぷり入っていて、かなり深い味わい。そして体に良さそうだ。
端に浮かんだサワークリームを少しずつ溶かしてゆくと、爽やかさと濃厚さが同時に加わってゆき、これまたいい。それによりスープが徐々にピンク色になっていくのもかわいい。なんだろうこの嬉しさ。例えが悪すぎて恐縮だけど、みそラーメンにバターが溶けてゆく瞬間にも通じるというか。

とても美味しい
そしていよいよビーフストロガノフとご対面。大皿にごはんとともに盛られ、サイドに野菜。大迫力だ。真っ白ではないけれど、色味はやはり白寄りで、本場ロシア式であることがわかる。

これがビーフストロガノフ!
いざ、ひと口。わぁ、ものすごく優しい優しい、そしてコク深い味わいだ。それでいて、牛肉の風味は力強い。意外だったのは、想像ほどサワークリームの酸味が強いわけではないこと。ほんのりと爽やかだけど、それよりもまったりとクリーミーな印象のほうが勝る。
細切りの牛肉は柔らかいが、ほろほろに煮込まれているわけではないので適度な食べごたえもある。濃厚なソースをまとった牛肉が食べても食べてもたっぷり。それに白いごはんが合わさっているんだから、そりゃあうまいに決まってる。この料理が、単品ならば1,200円で食べられるって、かなりすごいことなんじゃないだろうか。

恍惚のストロガノフタイム
添えられた野菜は単なるサラダではなく、ライトなザワークラウトといった雰囲気で、その酸味と食感が良いアクセントになる。寒い時期が長いロシアでは、野菜を塩漬けや酢漬けにした保存食が一般的で、各家庭ごとの味があるそうなので、これもそういうものの一種なのだろう。

サービスのデザート
この店には特にランチメニューというものはないものの、午後4時半までは無料のデザートがサービスでついてくるのが嬉しい。そしてその名前のわからないデザートが、ふいをつかれて驚きの声がもれてしまうほどに絶品だった。
土台のスポンジケーキは手作りの素朴な甘みで、そこにたっぷりの、とろりと濃厚なクリームがかかっている。出しているならば、これとコーヒーだけ、いや、これとウォッカだけを目当てに来てもいいくらいだ。
というわけで、大満足だったロシアランチ。僕はもう、昨日までのビーフストロガノフを知らない男ではない。ビーフストロガノフを知る男だ。まぁ、1回食べただけだけど、「ビーフストロガノフ? 大好物!」と断言したって、問題はないだろう。
取材・文・撮影/パリッコ
記事提供元:週プレNEWS
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