【写真で振り返る初期の鈴鹿8時間耐久レース:1980/1981】ヨシムラvsカワサキ!世界選手権元年の名勝負

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■上写真:世界選手権に格上げされて初となった1980年の第4回鈴鹿8時間耐久レースのスタートシーン
モーサイ掲載日:2025年7月30日
【1980】3大ワークスが激突した世界選手権元年、カワサキを振り切ったヨシムラが2度目の優勝
それまではエキジビション的なレースだった鈴鹿8耐が、世界耐久選手権に組み込まれたのはこの年から。と言うより、1979年までは欧州選手権だった耐久シリーズ戦が、FIMが認定する世界選手権になったのもこの年からである。そして、4サイクル:600〜1000cc、2サイクル:350〜500ccという、世界共通のTT-F1レギュレーションが施行された1980年の鈴鹿には、78/79年の倍以上となる14もの外国人コンビが参戦することとなった。
最もバリエーション豊かなチームをそろえたのは、前年の覇者であり1976〜79年に欧州耐久選手権を制したホンダ。シリーズチャンピオンをねらうフランスのエルブ・モアノー/マーク・フォンタンを筆頭に、ドイツ、オランダ、アメリカ、イギリスの現地法人を母体とするチームも来日し、さらにはケニー・ロバーツを超える逸材と呼ばれたフレディ・スペンサーと79年の世界GP500で2位となったバージニオ・フェラーリにも、ファクトリー製のRS1000を与えるという念の入れようだった。
ただし、大会史上初の10万人を超える観客を決勝レースで魅了したのは、前年はマシントラブルで苦杯をなめたヨシムラスズキGS1000R(不動のエース、ウエス・クーリーとペアライダーは、モリワキに見出されこの年はスズキRG500で世界GPに参戦していたグレーム・クロスビー)と、カワサキファクトリーのZ1レーサー(=KR1000。ライダーはアメリカの新鋭エディ・ローソンと、KR250/350を駆って世界GPで活躍していたグレッグ・ハンスフォード)が演じた壮絶なデッドヒートだった。
この2台の戦いは、当初は鈴鹿を知り尽くしたクーリー/クロスビー組のヨシムラのほうが有利と思われていた。しかし予選3番手からスタートしたローソン/ハンスフォードのZ1レーサーは、1位のGS1000Rに食らいつき、ヨシムラがピット作業に手間取った6時間目にはトップに浮上。しかしクロスビーの急追で再び順位は逆転し、最終的にはわずか40秒差でヨシムラが2度目の優勝を飾ったのである。
このデッドヒートは、94年にアーロン・スライト+ホンダRVF/RC45とスコット・ラッセル+カワサキZXR750Rが0.288秒差の死闘を演じるまで、8耐史上最高のバトルとして語り継がれることとなった。


■後にヨシムラカラーとして認知される赤/黒のツートーンをこの年に初採用。スチール製ダブルクレードルフレームはスズキ本社がRG500で培ったノウハウを生かして設計したTT-F1用で、エンジンマウントは下と後ろがリジッド、前側は振動対策用のラバーを介したフローティング式となっている。スイングアームはアルミ製で、前後ショックはカヤバ(フロントフォークはアンチダイブ付き)。前後18インチホイールはダイマグで、増大したパワーに対応するためにタイヤのビードを3本のビスで固定。エンジン内に投入された強化クランクシャフト(ピンの圧入部を溶接)や特殊ベアリング、アルミ削り出しのクラッチハウジングなどは、スズキが8耐用に製作したスペシャル。♯20はヨシムラチームのナンバー2用で、前年のチャンピオンであるマイク・コールと当時のAMAスーパーバイク/F750で活躍していたリチャード・シュラクターが乗った。

■8耐を走るスズキ車と言えば、前年まではヨシムラかチームタイタンをイメージしたものの、この年からは世界選手権シリーズを戦うフランススズキのSERT:スズキ・エンデュランス・レーシング・チームも参戦。ジャン・ベルナール・ペイル/ピエール・エティエール・サミンのライディングで4位に入ったこのマシンは、本社製フレームとヨシムラ製エンジンを採用するが、足まわりには独自のパーツを採用している。

■80年の鈴鹿を走ったホンダRS1000は、チームによって仕様が異なっていた。最も異彩を放っていたのは、スイングアームピボット部の剛性を高めるためにメインフレームを湾曲させ、シートレールをボルトオン式とし、リヤにリンク式モノショックを採用したホンダブリテンの♯9。エンジンにRSC製キットパーツが投入される点は他チームと同様だが、排気系はRCBや他のRS1000が採用する4-2-1式ではなく、独自の4-1式。

■カワサキファクトリーのZ1改レーサーは、前年の本社製とは異なり、フランスのパフォーマンス社が開発したオリジナルフレームを採用。シリーズ戦を戦うフランスチームはリタイアしたが、#11ローソン(写真)/ハンスフォードペアが2位、#10清原明彦/徳野政樹が7位となった。
真夏の祭典を盛り上げた。世界各国のライダーたち

■ニュージーランド出身のグレーム・クロスビーは、モリワキ、ヨシムラのライダーなどを務め、初期の鈴鹿8耐を語るうえで欠かせないライダー。80〜82年には世界GP500ccクラスにも参戦し、各年8位、5位、2位のランキングを獲得。

■アメリカのAMAシリーズではすでにトップライダーとして認められていたものの、80年の日本ではまだ無名だったエディ・ローソン。1983年より世界GP500ccクラスに参戦し、84/86/88/89年と4度のチャンピオンを獲得。

■ローソンと同じく当時の日本ではまだ無名だったフレディ・スペンサー。ただし、ローソンが初めての鈴鹿で2位という好成績を残したのに対し、スペンサーは電気系トラブルによってわずか3周で戦列を離れた。その後1982年よりホンダから世界GP500ccにフル参戦し、83年チャンピオン、85年には世界GP250/500ccクラスでダブルタイトルを獲得。

■3/4位に入った本場フランスの耐久ライダー。左からスズキフランスのサミン(左)とペイル(右)組、その右側がホンダフランスのフォンタン(左)、モアノー(右)。モアノーは後の83年鈴鹿8耐で優勝。

【1981】驚異のラップタイムを叩き出したモリワキ+ガードナー。ただし決勝の主役は本場フランスの耐久チーム

■オーストラリアでモリワキ代表の森脇護に見出されたワイン・ガードナーは、スーパーバイク仕様のZ1000と鉄フレームのモンスターを駆ってデイトナやイギリス選手権で腕を磨いた後に来日。日本での初戦となった鈴鹿200kmでいきなり優勝を飾り、8耐予選では前人未到の2分14秒台をマークした。その瞬間、森脇はストップウォッチを持つ手が奮え、目頭が熱くなったそうだが、当のガードナーはピットインするなり、「今の周は3回ミスしたから、次はもっといいタイムが出る」と語った。もちろん森脇は、これ以上の無理は必要ないと告げ、以後はクロスビーの様子を静観したという。
4年目を迎えた1981年の鈴鹿8耐の最大のトピックは、予選でアルミフレームのモリワキモンスターを駆るワイン・ガードナーが、2分14秒76という驚異的なラップタイムを叩き出したことだろう。もちろん、鈴鹿8耐のタイムは年々上がっており、78年の予選トップがデビッド・エムデ+TZ750の2分19秒23だったのに対し、79年の予選ではグレーム・クロスビ+モリワキが2分17秒33をマークし(80年は更新なし)、全体のレベルも着実に上がっていた。だがしかし、当時は無名だった21歳のオーストラリアンが出したタイムは、ファクトリーチームを震撼させるほどに突出していたのだ(当時の鈴鹿の絶対レコードは、高井幾次郎+YZR500の2分13秒65)。
これをよしとしなかったのが、モリワキの先輩であり、同じ南半球出身のグレーム・クロスビーである。ガードナーのタイムを知るやいなや、ヨシムラスズキGS1000Rに飛び乗り、鬼の形相でコースに飛び出したクロスビーは、コーナーごとにリヤタイヤのスライドを繰り返すアグレッシブなライディングでタイムアタックを行ったものの…、結果は2分15秒75。TT-F1マシンとしては賞賛に値するが、ガードナーのタイムには及ばず、予選で行われたヨシムラファミリー内の師弟対決は、ひとまずモリワキに軍配が上がった。
ただし決勝レースでは、モリワキモンスター+ガードナー/ジョン・ペイス組は転倒、ヨシムラGS1000R+クロスビー/ウエス・クーリー組はエンジントラブルに見舞われ、早々に戦列を離れてしまう。
そして彼らに代わって上位を独占したのが、本場フランスの耐久チームだった。序盤からトップを守り続けたのは、ホンダRS1000を駆るデビッド・アルダナ/マイク・ボールドウィン。彼らはふたりともアメリカ人だが、この年は速さを買われてホンダのナンバー1チームであるフランスホンダに所属し、世界耐久シリーズを戦っていたのだが、第1~4戦は転倒に泣き続け、まともな結果を残していなかった。だが鈴鹿でようやく1勝を挙げ、ファクトリーライダーの面目を保ったのである。
これに続く2位のピエール・エティエンヌ・サミン/ジャン・リュックはフランススズキ、3位のレイモン・ロッシュ/ジャン・ラフォンと4位のジャン・クロード・シュマラン/クリスチャン・ユゲはフランスカワサキからのエントリーで、結果的にこの年の鈴鹿8耐では、世界選手権シリーズを戦う本場の耐久ライダーがきっちりポイントを獲得したのだ。その一方でセンセーショナルなデビューを飾ったガードナーが、後にホンダファクトリーに抜擢されたのも見逃せない話題だろう。
日本の4メーカーのお膝元で開催される鈴鹿8耐は、外国人ライダーにとっては自身の走りをアピールする舞台であり、これ以後は多くのライダーが世界に羽ばたくことを夢見て鈴鹿8耐に参戦。このレースはトップライダ一への登竜門という資質を徐々に持ち始めていたのだ。

■内気でナイーブだったワイン・ガードナーは、ガールフレンドのドナに尻を叩かれる形でモリワキ入り。82年からはホンダファクトリーの一員となり、鈴鹿8耐では85/86/91/92年に優勝。世界GP500ccクラスでも87年にチャンピオンを獲得した。

■アルミ7N01の角パイプ(30✕30mm)を使ったモリワキのニューモンスターは、従来の鉄フレーム車より約15kg軽い163kgの乾燥重量を実現。モリワキは同年のデイトナ200マイルですでにアルミフレームのモンスターを走らせており、鈴鹿8耐にはその改良型と言えるマシンを持ち込んだ。

■81年型ヨシムラスズキGS1000Rは、世界グランプリを戦うRG500Γから譲り受けたフルフローター式リヤサスペンションを採用。ダブルクレードルフレームは構造を一新したスズキ本社製で、熟成が進んだDOHC2バルブ並列4気筒のパワーは150ps前後と言われていた。

■すでに完成の域に達していたものの、地道に進化を続けるRS1000。ロン・ハスラムとジョイ・ダンロップが駆った#9ホンダブリテン車には、フロントキャリパーをフローティングする機械式アンチダイブフォークとリンク式ツインショックが導入されていた。

■一方、序盤からトップを快走したデビッド・アルダナ/マイク・ボールドウィン組の#1のホンダRS1000は、フロントのアンチダイブが油圧式で、リヤはオーソドックスな2本ショックを採用していた。
急速な進化を遂げたファクトリーマシン、個性が光るプライベーターたち

■ブルー×ホワイトのファクトリーカラーにペイントされたスズキフランスのGS1000Rも、ヨシムラ車と同様の新型フレームやフルフローター式リヤサスペンションを採用。鈴鹿で2位に入ったピエール・エティエーンサミン/ジャン・リュックは、第6戦リェージュ24時間で初優勝を飾った。

■カワサキファクトリーのKR1000は、エンジンを新作のZ1000J用に変更。ボトムケースが削り出しのフロントフォークにはアンチダイブ機構が装備され、フロントキャリパーは角型ボディの対向式4ピストンとなったが、メインチューブの曲がり方が左右で異なるパイプフレーム(キャブレターの脱着を容易にするため)や、ショックユニットが片支持式のスイングアーム構造は不変。#27は8位で完走した徳野博人/政樹の車両だが、カワサキフランスからエントリーした2台も基本構成は同じ。なお鈴鹿で3位に入賞したレイモン・ロッシュ/ジャン・ラフォンは、この年の世界耐久選手権でシリーズチャンピオンを獲得している。

■鈴鹿8耐を通して急成長を遂げたチームスーパーモンキーのCB900Fは、一時は3位を走り、最終的にはプライベーター最上位の6位で完走を果たした(ライダーは福井正/伊藤巧)。フレームは同社のオリジナル。

■フランスから遠征してきたペルノーのCBは、RSCキットを用いてエンジンチューンを実施。スチールパイプ+アルミプレートのフレームやアルミ鋳造スイングアームはオリジナルで、リヤショックはエア式。

■トガシエンジニアリング製フレームを採用したモトライダーのPE400。スズキのエンデューロモデルPE400の空冷2スト単気筒エンジンにオリジナルフレームを組み合わせたマシンは、決勝序盤でリタイアしてしまったが、このころの8耐ではまだ、単気筒マシンならではのハンドリングの優位性を感じることができた。ライダーは山田 純。

文●中村友彦 写真●八重洲出版アーカイブ 構成●モーサイ編集部・阪本
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