悲願の「ベスト8以上」へ! 森保ジャパン 鬼門すぎる「W杯決勝トーナメント初戦」の乗り越え方
イチオシスト

森保ジャパンは「ベスト16の壁」を越えられるのか?
今年6月から開催される北中米W杯に挑む森保ジャパン。過去4度立ちはだかった「ベスト16の壁」を越えられるのか? 日本サッカーを熟知する専門家、ミムラユウスケ氏とレオ・ザ・フットボール氏が分析する。
* * *
【充実ディフェンス陣と「どうなる長友」】サッカー北中米W杯の開幕まで半年を切った。昨年10月には、親善試合とはいえブラジル代表を撃破するなど、「史上最強」の呼び声も高い森保ジャパン。上り調子のまま、悲願の「ベスト8以上」へと突き進むことはできるのか?
「調子が良すぎるのがむしろ不安材料です。本当は今の基本戦術である3バック以外も試したかったのに、ブラジルにも勝ってしまったため、動かしにくくなった。となれば、ここからはいかに勝つための確度を高められるか。戦術を増やしたり変えたりするのではなく、どれだけ洗練させられるかが求められます」
こう答えてくれたのは戦術分析官としてYouTubeで人気を博し、クラブチームの監督も務めるレオ・ザ・フットボール(以下、レオザ)氏だ。
一方、日本代表の取材歴も長いスポーツライターのミムラユウスケ氏は、チームの総合力の高さに期待を寄せる。
「森保一監督がこの8年、一番力を注いできたのは選手層を厚くすること。メンバーを固定化してチーム力を深化させるよりも、広げることを重視してきた。
チームとして成熟できていない点に批判の声もありますが、今大会は出場国が48ヵ国に増えたため、グループステージを突破してもまだベスト32。決勝トーナメントの戦いも長いため、総合力の高さはW杯を勝ち抜く上で重要です」
中でも、層の厚さを誇るのがボランチ。主将の遠藤 航(リバプール)、ひとつ前のシャドーもできる鎌田大地(クリスタル・パレス)、ボール奪取能力で評価を高めている佐野海舟(マインツ)、プレミアリーグで好調の田中 碧(リーズ)らがここ最近では不動の招集メンバーだ。
「相手が引いて守ってきた際は守田英正(スポルティング)の存在も欠かせない。そして、チームの鍵を握るのは鎌田です。彼がボランチの位置ならば攻撃的に、ひとつポジションを上げてシャドーの位置ならば守備的に、というメッセージをチーム全体に届けられる存在です」
レオザ氏も今の代表では鎌田がキーマンだと語る。
「それぞれ個性は違いますが、誰が組み合わさっても総合値の高いダブルボランチを形成できるのが日本の強み。ただ、今の代表はクリスタル・パレスの戦術を参考にしている部分もあり、鎌田がピッチにいれば、さまざまな状況に対してより臨機応変に対応できる利点があります」
もうひとつ、層が厚く選考が悩ましいのがDF陣。板倉 滉(アヤックス)、谷口彰悟(シントトロイデン)、伊藤洋輝(バイエルン)、渡辺 剛(フェイエノールト)に加え、左膝前十字靱帯断裂で長期離脱中の町田浩樹(ホッフェンハイム)やアヤックスに電撃加入した冨安健洋らも「健康体」ならば有力候補だ。
「第2次森保体制で最もケガに悩まされたのがDF陣。さまざまな選手を試した結果、選手層は過去最高レベルに。長年、代表の泣きどころだっただけに、最も日本サッカーの進化を感じるポジションになりました」(ミムラ氏)
「残り半年のアピール次第では高井幸大(トッテナム)も可能性はある。また、サイドの堂安 律(フランクフルト)と三笘 薫(ブライトン)は対人守備の強さは申し分ないものの、逆サイドからのクロス対応には課題がある。
空中戦の強さに期待して、本来はDFの望月ヘンリー海輝(町田)や鈴木淳之介(コペンハーゲン)がサイド兼用として使われる可能性もあります」(レオザ氏)
これだけの充実度を誇る今の日本代表。となると、「5大会連続出場」の偉業がかかる長友佑都(FC東京)の代表入りはさすがに厳しいか?
「私は必要だと思います。過去にも日韓W杯の秋田 豊さんや中山雅史さん、前回カタールW杯の川島永嗣選手(磐田)など、ベテランの存在がチームの精神的支柱になった事例は多い。
一説ではコーチ登録で本大会に帯同する案もあるようですが、出場の可能性があるからこその影響力、というのは間違いなくある。森保監督の哲学が問われることになりそうです」
【ベスト8への鍵はラウンド32の相手】グループステージでの対戦国も決まり、日本が入ったF組は、強豪オランダ、アフリカのチュニジア、そして3月に決まる欧州プレーオフB組の勝者(ウクライナ、ポーランド、スウェーデン、アルバニア)という顔ぶれに。日本は問題なく勝ち進むことができるか?
「日本のレベルは本当に高い。簡単な相手はいませんが、チームとしての〝地肩〟では、オランダ以外は日本のほうが上。今回は3位でも突破の可能性がある点を踏まえると、日本が実力を発揮できればグループリーグ突破の可能性は80%以上です」
ミムラ氏もグループリーグ突破への好材料を示す。
「懸念していた高地対策、暑熱対策、時差対策が不要の組に入ったので、実力を発揮しやすいはず。また、苦手とする南米勢が不在で、欧州勢が2チームなのも好材料。日本はこれまで決勝トーナメントに進んだ4大会のうち、3大会で欧州勢が2チームいるグループでした」
ならば、気が早いのは承知の上だが、決勝トーナメントも展望したい。今大会はグループリーグを突破しても、悲願のベスト8進出のためには、さらにふたつ勝たなければならない。
「1位か2位通過の場合、決勝トーナメント初戦のラウンド32で当たるのはグループCのブラジル、または前回カタール大会ベスト4のモロッコになる可能性が高い。出場枠がこれまでの32から48へと増加し、グループ3位でも成績上位の8チームまでは決勝トーナメントに進めるのに、その恩恵のない組に入ってしまったのは残念です」
ブラジルとモロッコ、勝ち進む上ではどちらが嫌か?
「断然、ブラジルです。モロッコを過小評価するわけではないですが、ブラジルが同じ相手への連敗、しかもW杯で負けるなんて国民が許さないはず。プライドを懸け、何がなんでも勝ちにくるブラジルと戦うのはどの強豪国だって嫌なはずです」(レオザ氏)

決勝トーナメント初戦で当たるかもしれないブラジル代表。昨年10月には大金星を挙げたが、本大会でもエースFWビニシウス・ジュニオールを抑え込めるか

決勝トーナメント初戦で当たるかもしれないモロッコ代表。世界最高の右サイドバックとも称されるアクラフ・ハキミを擁する前回大会4位の強豪だ
過去、決勝トーナメントでの勝利が一度もない日本。簡単な挑戦ではないラウンド32を含め、大会を勝ち進んでいく上で必要なことは何か?
「これまでの日本は、グループステージ突破が大きなヤマ場でした。突破で達成感を感じるとともに、それまでの戦いで疲弊しきって、決勝トーナメント初戦でつまずいてきました。
ならば、大会全体をデザインし、いかにコンディション調整するか。森保監督のマネジメント力だけでなく、協会のサポートも必要不可欠。日本サッカーの総合力が問われます」
一方、ミムラ氏は状態の良い選手をいかに選ぶか、そもそも大会前に疲弊していないか、という点も重要だと語る。
「遠藤が所属クラブで出番がないことを不安要素とする声もありますが、大会前の親善試合や練習試合に出場すれば試合勘は問題ないはず。今は負傷中ですが、W杯までには万全の状態で臨めそうです。
2002年日韓W杯で稲本潤一さんがブレイクしたのも、当時アーセナルで出番がなく、万全の状態だったから。むしろ、残留争いをしながら欧州カップ戦も並行して戦う佐野が相当疲弊しそうなのが今から心配です」
そして、いざ大会が始まれば、グループリーグ初戦で控えだった選手の中から新たにスタメンに定着する選手が2、3人は出てきてほしいという。
「どの大会でも、上位に食い込むチームにはそういった選手が必ずいます。新たな選手が台頭すれば疲労も分散できるし、W杯では試合を重ねるほど研究されてしまうので、大会中にチームとして進化できないと丸裸にされてしまう。個人的には町野修斗(ボルシアMG)、佐野、鈴木淳之介あたりに期待しています」

初戦で控えだった選手の中から新たにスタメンに定着する選手が2、3人は出てきてほしいと語るミムラ氏。「個人的には町野、佐野、鈴木淳之介あたりに期待しています」


レオザ氏も、チームとしての進化の必要性を語る。
「明確な伸びしろはセットプレー。今季プレミアで首位を争うアーセナルを筆頭にセットプレーが見直されています。その波が来て『セットプレーのW杯』になる可能性もある。攻撃面での精度アップやパターン増だけでなく、相手セットプレー時の守備の対応力をいかに上げるか。そこをしっかり仕込むだけで勝率は変わってきます」
3月にはイングランド代表との強化試合も決定。W杯前の重要な試金石となる。
「自信をつける場はもう必要ないので、しっかり課題を洗い出してほしい。本番前に苦しんでおいたほうがチームの成長につながるはずですから」(ミムラ氏)
8度目のW杯を見据え、「最高の景色を2026」なるスローガンを掲げた日本代表。その言葉どおり、史上初のベスト8進出、さらにその上の最高の結果を手にすることはできるのか。勝負の年がいよいよ始まる。
取材・文/オグマナオト 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
