中国から超デフレ価格で襲来した噂のPHEVを公道試乗! BYD シーライオン6は日本車を食うか!?
イチオシスト

走りの主役はモーター。搭載する1.5リットルエンジンは発電が主だが、条件次第で駆動にも加わる。その実力を徹底検証!!
世界の新車市場を席巻する中国BYDが、ついに日本市場で"伝家の宝刀"を抜いた! 世界初の量産PHEVを生み出したパイオニアの最新作、シーライオン6だ。
最大の衝撃は、国産ライバルを蹴散らす300万円台という価格破壊。静岡県御殿場市で行なわれた試乗会で、"鳴り物入りモデル"を体感。BYDオーナーでもある自動車評論家の国沢光宏氏が、超絶コスパの正体をガチ解説する!
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【中国〝価格破壊カー〟がニッポンに攻めてきた!】中国BYDはEVとPHEVの〝二刀流〟メーカー。世界初の量産PHEVを発売したのは2008年。以来90以上の国と地域に展開し、累計販売台数は740万台。PHEVのパイオニアとしての実績は問答無用だ。
これまでBYDは日本市場に4台のEVを投入してきたが、第5弾は満を持して〝伝家の宝刀〟PHEVを搭載したシーライオン6となった。12月1日に正式発表され、そのまま販売開始となったが、最大の衝撃はその価格。FFモデルは398万2000円という破格の設定なのだ。
BYDの日本市場トップモデル・シーライオン7のユーザーでもある自動車評論家の国沢光宏氏は、この価格についてこう語る。
「シーライオン6のライバルは国産DセグメントSUVのPHEVです。トヨタならハリアーやRAV4、マツダならCX-60、三菱ならアウトランダーPHEV。しかし、最も安価なアウトランダーPHEVでさえ529万4300円スタート。それに対してBYDはいきなり300万円台後半の価格をぶつけてきたわけですから、尋常ではありません。
しかもフル装備で、つけ足すものがない(苦笑)。簡単に言えばコスパ最強です。世界の新車販売台数でホンダや日産を上回るBYDだからこそできる値づけです」

試乗前の説明会で、BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長はシーライオン6をスーパーハイブリッドと位置づけた
静岡県御殿場市で開催された報道陣向け試乗会で週プレ自動車班が現地取材したところ、国沢氏の言うとおり装備は驚くほど充実していた。15.6インチの大型ディスプレー、ガラスサンルーフ、電動テールゲート、前席のパワーシートにヒーター&ベンチレーション、さらに米インフィニティ製の高級オーディオまで標準装備。
シート表皮は合皮ながら、アプリをダウンロードすれば車内カラオケまで楽しめるという遊び心もBYDならでは。もちろん先進安全装備も抜かりない。同様の装備内容をそろえれば、日本勢のHEVでも100万円は高くなるだろう。
走りもミラクル。アクセルを踏めば電動車らしいスムーズな加速を披露。約2tの車重を感じさせない軽やかさで、ギクシャク感は皆無。コーナリングも自然で安定感があり、クルマの動きにちぐはぐな部分がない。日本勢や欧州勢と比べても遜色なく、むしろ上回る仕上がりすら感じさせる。
国沢氏が言う。
「中国製エンジンを侮っている人も多いと思いますが、国産車より静かで滑らか。BYDは欧州メーカー出身のエンジニアも多いですから、そこから学んだのでしょう」

ボディサイズは全長4775mm×全幅1890mm×全高1670mm。堂々たるプロポーション。ちなみに最小回転半径は5.55m

航続距離は1200km。WLTCモードのハイブリッド燃費は22.4km/リットル。燃料はレギュラーガソリン

価格以上の豪華さを誇るインテリア。さらにEVとHEVを切り替えるスイッチが、想像以上に楽しいギミックだった
これほどの完成度と価格を両立したシーライオン6に、弱点はあるのか。
「耐久性は未知数。そして最大のリスクは日本市場からの撤退で、現在の日中関係を考えればゼロとは言えません。ただし、中国の自動車メーカーには共産党系と民族系があり、BYDは後者の民間企業です。
つまり華僑的な企業であり、積極的に海外進出を図っています。慎重なトヨタが中国でのパートナーにBYDを選んでいるのもポイント」

日本初上陸となる独自のハイブリッド技術「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」を搭載
実はBYD、日本市場で海外の高級ブランド車を扱うヤナセと25年11月に提携した。
「目の肥えた富裕層の顧客を抱えるヤナセが扱うということは、品質や信頼の証しでもある。ちなみに私のシーライオン7の塗装を専門家に見てもらったら、『欧州高級車に匹敵する』という評価でした」
国沢氏は最後にこう結ぶ。
「BYDを取り上げた私の記事がヤフーなどに転載されると批判コメントが殺到します。中国車が嫌いな人は買わないのですから読む必要はありません。読まなければ腹も立たず、コメントを書く時間も節約できます。それでもコメントする人は、本当は中国車が気になって仕方ないのかも(笑)。
冗談はともかく、真面目な話をすると、シーライオン6は、実際に触れ、走らせてみると驚異的な完成度です。気になる人は百聞は一見にしかずということで、試乗するといいと思います」
シーライオン6は、ニッポン車市場に現れた〝令和の黒船〟。まさに常識をひっくり返す衝撃の一台であった。
取材・文・撮影/週プレ自動車班
記事提供元:週プレNEWS
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