「落ちるところまで落ちた」先に見えた光 鈴木愛、30代最初の勝利【2025年“この1シーン”】
イチオシスト
白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■ニトリレディス(8月28~31日、北海道・北海道カントリークラブ 大沼コース、優勝:鈴木愛)
最終日を13位から出た鈴木愛は、ボギーなしの5バーディで「68」。3打差を逆転し、トータル12アンダーで今季初優勝を飾った。ツアー通算21勝目。31歳となってから初めて手にした勝利だった。
20代を通じて20勝。賞金女王にも2度輝き、常にツアーの中心にいた。一方で、コロナ禍以降は結果が出ず、「本当に落ちるところまで落ちた。体的にも気持ち的にもすごく落ちた3年間だった」と振り返る時期もあった。勝てそうな位置にいても、最終日になると自信が揺らぐ。そんな感覚が、しばらく続いていた。
転機のひとつは、今年6月の「アース・モンダミンカップ」だった。首位と3打差で最終日を迎えながら勝ち切れなかった試合後、「練習量が足りない」という周囲の指摘を、初めて素直に受け止めたという。それまでの“量より質”から、質の高い練習量を増やす方向へと準備の在り方を変えた。
「すぐに結果が出るとは思っていなかった」。それでも、2カ月後に手にした勝利は、新しい取り組みが間違っていなかったことを示していた。20代の頃のように勢いで勝つゴルフではない。積み重ねと向き合い直した末の1勝だった。
30代に入り、「年々、優勝することが難しくなっている」と感じる一方で、内面には変化もあった。「ネガティブになりがちだった自分が、ポジティブな言葉を意識するようになった」。最終日に苦しいゴルフになっても、怒らず、諦めず、最後まで向き合えるようになったという。
この勝利は、復活というより、次への通過点だ。鈴木が見据えるのは、国内ツアーでの永久シード。20代で突っ走った10年を経て、30代では“積み上げる10年”に入った。「自分がまず30勝に行けたら」。その背中を、後輩たちに示す覚悟がにじむ。
落ちるところまで落ちたからこそ、見えた現在地。30代最初の勝利は、鈴木愛にとって、新たな目標へ踏み出すための第一歩だった。
<ゴルフ情報ALBA Net>
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