2年ぶりVの裏に 櫻井心那にかけられた「圧」と「勘違い」【2025年“この1シーン”】
イチオシスト
白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■CAT Ladies(8月22~24日、神奈川県・大箱根カントリークラブ、優勝:櫻井心那)
初日から首位を守り続けた櫻井心那は、最終日を「72」でまとめ、トータル9アンダーで逃げ切った。2023年に4勝を挙げて一気にブレークして以来、2年ぶりとなるツアー5勝目だった。
優勝が決まった直後、櫻井は涙を流した。「泣くつもりはなかったのに、涙があふれてきました。初優勝でも泣かなかったのに。恥ずかしいから見たくないです(笑)。うれし涙には違いないんですけど、何の涙か分からないですね」。安ど、達成感、そして重圧からの解放。そのすべてが入り混じった涙だった。
終盤は大混戦だった。トータル8アンダーで6人が並び、勝負は最終組の18番パー5へ。櫻井はグリーン奥バンカーからの3打目を50センチにつけ、バーディで抜け出した。
その場面で背中を押したのが、キャディを務めた先輩プロの吉田弓美子だった。「弓美子さんに『早く帰りたいから分かってるよね』って圧をかけられていたので、決めてやろうという気持ちで18番に臨めました」。強い一言が、迷いを断ち切った。
ただ、櫻井の中には、もうひとつ“勝敗を分けた要素”があった。優勝会見で明かしたのは、リーダーボードの見間違いだった。「12番でボードを見た時に(首位のスコアが)いきなり12アンダーになっていた。ちょっと数字が曲がっていたし、ボランティアさんが間違えたんだと思ってました」。次に見た時には10アンダーに戻っていたため、「やっぱり間違いだったんだな」と受け止めていたという。
実際には、ルーキーの入谷響が一時12アンダーまで伸ばしていた。もしそれを正しく認識していたら、心境は変わっていたかもしれない。焦りや守りに入る選択が生まれても、不思議ではなかった。知らなかったからこそ、櫻井は自分のペースを崩さず、最後まで攻め切ることができた。
4勝を挙げた2023年を「何も考えなくてもうまくいっていた」と振り返る一方、結果が出なかった時間については「いっぱい悩んだし、いっぱい考えた。いろんなことを試す時間だった」と話している。その積み重ねの先にあった2年ぶりの勝利は、復活という言葉以上に、成長を示す1勝だった。
<ゴルフ情報ALBA Net>
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