染谷将太 合理性と狂気の危うい狭間へと踏み込む医師に 久坂部羊原作「廃用身」公開決定
イチオシスト
久坂部羊のデビュー作である同名小説の映画化作「廃用身」が、2026年5月に劇場公開されることが決まった。染谷将太が主演する。
「廃用身」は、外務省医務官を経て、在宅訪問医として終末医療の最前線に立ち続けてきた著者自身の経験から生まれた作品。超高齢社会に突入した今の日本社会と地続きのテーマをはらむヒューマンサスペンスとなっている。
ある町のデイケアに通うお年寄りの間で、漆原院長(染谷将太)が考案した“画期的な”治療がひそかに広まっている。究極にコスパの良い介護を目指すため、廃用身(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)の切断を行った結果、「身体も心も軽くなった」、「厳しい性格が柔らかくなった」などと予想外の“好ましい副作用”が現れたという。噂を聞きつけた編集者の矢倉は、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかける。しかしやがて、デイケアに関するとある内部告発が週刊誌に流出。さらに、患者宅で起きた衝撃の事件をきっかけに、すべてが暗転していく。
主演は染谷将太。医療の限界を超えたいと力強く訴え、理想を追い求めるあまり、合理性と狂気の危うい狭間へと踏み込んでいく主人公の医師・漆原糾を怪演する。監督と脚本を務めるのは𠮷田光希。東京造形大学在学中より諏訪敦彦に師事し、塚本晋也作品での現場経験を経て、自主製作映画「症例X」で第30回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)の審査員特別賞を受賞。さらに第61回ロカルノ国際映画祭新鋭監督コンペティション部門の入選を果たした。そんな𠮷田監督が、学生時代に原作と出会って衝撃を受けて以来20年にわたり温め続けてきた、渾身の企画を映画化した。
染谷将太らのコメントも公開された。コメントは以下の通り。
■染谷将太(主演)
自分が𠮷田監督と出会ったのは高校生の頃でした、素敵な作品と素敵なお人柄に惚れてから長い年月が経ち、この度お話を頂いた時、驚きと喜びに溢れました。そして頂いた台本の題名が『廃用身』でした。久坂部先生の衝撃作を𠮷田監督が実写化、もはやある種の恐怖を感じました。とんでもない作品になるなと。
それと同時に漆原糺という主人公を演じる恐怖にも襲われました。
正義と悪は曖昧なものだという事は様々な作品で語られてきました。しかしこのような切り口から描かれ、世に投げかける作品は無かったのではないでしょうか?社会的な意味も大いに含むこの作品を映画芸術として𠮷田監督は正々堂々と描き切りました。
1人の医師の、1つの症例のような人生を、皆様に目撃して欲しいです。
■𠮷田光希(監督)
原作を初めて読んだときの感触は、今も消えずに残っています。
心がどこにも置けなくなる不安と同時に、自分の未来が冷たく、正確に切り取られた気がしました。 あの読後に立ち上がった名付けがたい気配を、映画という形で問い直したい──その思いが、長いあいだ自分を突き動かしてきました。
自由な映画表現を受け止め、原作を託してくれた久坂部羊さんに、心から感謝いたします。
この作品は、誰もが自身の未来を映し出し、息を潜めて向き合わざるを得ない問いを、優しく、しかし容赦なく投げかけます。
超高齢化社会の現実に直面したとき、ひとりの医師が下す選択を、観る人の皮膚の下まで、静かに届けたいと思いました。
どうか、目を背けないでください。
ここに映るのは、誰かの母でもあり、父でもあり、
やがてあなた自身でもある、避けられない現実です。
この問いが、それぞれの場所に残ることを願っています。
■久坂部羊(原作者)
まさか映画化されるとは思いませんでした。
なにしろ『廃用身』が出版されたときの宣伝文句が「映画化、絶対不可能!」でしたから。
「切って楽になれるなら切ってほしい」は、私が現場で実際に聞いた言葉です。
介護に関わる方、介護に悩む方、すべての人に、常識の枠を取っ払ってこの映画を観ていただきたいです。
【作品情報】
映画『廃用身』
2026年5月TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給:アークエンタテインメント
©2025 N.R.E.
記事提供元:映画スクエア
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