5年ぶりVを呼んだ“持ち球”改革 30歳がたどり着いた答え【2025年“この1シーン”】
イチオシスト
白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■資生堂・JAL レディス(7月3~6日、神奈川県・戸塚カントリー倶楽部 西コース、優勝:永峰咲希)
永峰咲希の5年ぶりの勝利は、決して派手なものではなかった。トータル9アンダーで並んだ木戸愛とのプレーオフを3ホール目で制し、2020年以来となるツアー通算3勝目。そこに至るまでの時間は、長く、そして濃密だった。
首位タイで迎えた最終日。永峰は振り返る。「『もう負けたかな』と思う瞬間が、一日の中で何回もあった」。思うようにアイアンがつかまらず、バーディチャンスも作れない。難しいアプローチを残す場面もあった。それでもショートゲームで耐え、ボギーを打たずに2バーディ。「70」というスコアは、“攻め”ではなく“耐え”の結晶だった。
21ホールに及ぶ戦いを終えた瞬間、胸にこみ上げたのは安どだった。「『やっと終わった…』という気持ちのほうが強かった。段々と喜びが増してきた感じです」。
2020年の「日本女子プロ」制覇から5年。順風満帆とは言えない時間が続いた。「正直、メジャーを勝ったときも『この実力で勝っちゃった』というのはおかしいですけど、(自分の実力は)まだまだなのに、“メジャーチャンピオン”の肩書きはプレッシャーで…」。不振に陥りながらも、技術と精神力を積み重ね続けた5年間だった。
大きな転機は、“持ち球”の見直しだった。プロ転向後は飛距離を求めてドローを打ってきたが、昨年からジュニア時代に慣れ親しんだフェードに回帰。目澤秀憲コーチと二人三脚で取り組んだ改革だった。
データをもとに示された「フェードでも十分に飛ぶ」という事実が、永峰の固定観念を崩した。「(ジュニアのときに)フェードでやっていたので、イメージを変えるのは苦じゃなかった。変えてからは、予選通過の率も上がって、フェードなんだな…と」。スピン量も改善され、ドライバーは安定感を取り戻していった。
2022年にはシードを喪失し、翌年は日本女子プロ優勝による3年シードを選択。その決断の裏には、父の言葉があった。「父に『そんなもん持っているから甘えが出るんだ』って言われて」。守りではなく、挑戦を選び続けてきた。今季はその3年シードの最終年。再び結果を出し、シード復帰を果たした。
苦しみも、迷いも、すべてを経た先にあった5年ぶりの勝利。30歳・永峰咲希の進化は、ここからが本番だ。
<ゴルフ情報ALBA Net>
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