呂布カルマ「息子が死にかけた。恐怖は忘れられない」
イチオシスト

『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『息子』について語った。
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★今週のひと言「5歳の息子を突然襲ったインフルエンザの恐怖」
息子が死にかけた。
実際は死なずに済んだし、言葉にするとあっさりとしているんだけど、いざ目の前で息子が死ぬかもしれないと実感したあの瞬間の恐怖は筆舌に尽くし難い。
先日、嫁の実家である島根からお義母(かあ)さんが名古屋のわが家へ遊びに来て、朝から一日中大はしゃぎしていた5歳の息子。寝る直前までお姉ちゃんと大騒ぎしていたかと思えば、少し熱っぽいと。体温を測ってみると39℃超え。
その急激な熱の上がり方からインフルエンザを疑い、翌日病院へ連れていこうとその日は取りあえず眠らせた。
家族が全員寝静まったリビングで俺は日が上るまでガンプラの塗装にいそしみ、家族が起きてくる前に布団に入ってしばらくすると、リビングのほうから嫁とお義母さんの大騒ぎする声。
ただならぬ雰囲気で息子の名前を呼び続けている。
すぐに飛んでいくと、息子は目を開けたままぐったりとしてえずき続けている。呼吸が浅い。
すでに嫁の電話は救急につながっていて指示を仰ぎながらも息子の体を揺すり、声をかけ続ける。俺は正直何が起こっているのかまったく理解できず、うろたえながら同じように息子に呼びかけることしかできなかった。
目は確かに開いているが、どこを見ているわけでもなく、歯を食い縛り口からは粘り気のある泡が漏れている。
電話口の救急隊員からの「呼吸はしてますか?」の問いにパジャマをめくり呼吸を確認するとほぼできていない。
喉に何か詰まってないか疑う隊員から指を突っ込んでかき出せと指示が飛ぶも、歯を食い縛っているので指が入らない。そうこうしているうちについに呼吸が完全に止まり、目を閉じて動かなくなった。
というか、死んだように見えた。嘘だろおい、こんな簡単にもうすぐ6歳になろうかって年の子供が死ぬのかよ?
そのぐったりした息子を持ち上げ、うつ伏せにして背中をバンバン叩くとどろっとした粘液が口からあふれた。それを機に呼吸が回復した! ナイス嫁さん!
そのタイミングで隊員到着。いまだ息子の意識はない。だけど取りあえず呼吸は回復している。隊員に抱き抱えられた息子の目がうつろながら開いた!
が、なんの反応もない。空っぽなのだ。救急車に嫁さんが同乗し、受け入れてくれる病院へ搬送。俺は自分の車で後を追った。
その時間の恐怖。呼吸は回復したとはいえ、目の前で一瞬息子の死を垣間見た。
想像もしていなかった。いったいどれだけ呼吸が止まっていたのかもわからない。一命を取り留めたとして障害が残る可能性もある。そんなことが頭の中を駆け巡りつつ、そうなった場合の家族の心のケア、数年ぶりにせっかく名古屋へ遊びに来た翌日にこんな修羅場に遭遇したお義母さんの心境などにも思いをはせ、不思議と冷静な自分もあった。
病院へ着くと救急処置室で機械につながれて酸素量と心電図が表示された息子。眠ってはいるが間違いなく生きている。俺が到着するまでに軽い問答ができる程度の意識の回復もあったらしい。ひと安心。
インフルエンザの診断を受け、小一時間ほどで目を覚まし、なんとそのまま連れて帰っていいと。処方されたタミフルを若干の不安もありつつ一発投与すると、その晩には平熱になりいつもどおりの息子に。薬すげぇなおい!
回復した息子を思いっきりかわいがりつつも、いなくなってしまうかもしれなかった恐怖は忘れられない。この幸せなんか一瞬で消し飛ぶんだ。インフルエンザを決して甘く見るまいと心に誓った。
撮影/田中智久
記事提供元:週プレNEWS
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