CD/DVDレンタル対応のTSUTAYAが急減?対応店舗がない都道府県について
イチオシスト

ここ数年、「地元のTSUTAYAが閉店した」という話題は、もはや珍しいものではなくなりました。
TSUTAYAの店舗数は、2010年代初頭の全盛期には1,400店舗を超えていましたが、現在はその数を劇的に減らしています。特に「レンタル機能」を持つ店舗の減少が著しく、レンタル対応店舗がすでに存在しない都道府県も増えています。書店やカフェ、新規事業である『SHARE LOUNGE』を残す形での業態転換も進んでいます。
では、2025年12月現在、レンタル対応していないTSUTAYAは全国にどのくらいあるのでしょうか。
レンタル対応の「TSUTAYA」店舗がない都道府県

現在、TSUTAYAは大型店舗化が進行しています。たとえば2024年7月には「TSUTAYA BOOKSTORE 渋谷サクラステージ」を全面リニューアルしてオープン。在庫数約16万冊を誇る、渋谷最大級の書店としてあらためて話題になりました。
また、SHARE LOUNGEへの業態転換も加速しており、2024年4月末時点で30店舗がTSUTAYAの看板を掲げて出店しており、提携を含めると合計40店舗展開。さらに、トレーディングカード対戦席を178店舗に設置したり、ピラティス事業を展開したりするなど、書店を中心とした多様な体験機能を組み合わせた「交流を生む体験型書店」へのシフトが進められています。
その一方で従来型の店舗は地方都市からの撤退が相次ぎ、一部の地域では「物理メディアをレンタルする」という行為そのものが成立しなくなりつつあります。
その象徴的な事例の一つが、群馬県高崎市での動きです。北関東の主要都市であり、交通の要衝でもある高崎市において、2025年10月13日に「TSUTAYA 江木店」が閉店しました。
これにより、高崎市内のTSUTAYA店舗はゼロとなりました。人口約37万人の中核市以上の都市にTSUTAYAがないという、一昔前では考えられない事態となっています。インターネットを使わない層や、配信されていない旧作映画を求める層にとって、文化的な「インフラ」が消滅しつつあることを意味しています。
TSUTAYAとゲオ、明暗を分けた「生存戦略」

かつてレンタル市場を二分したTSUTAYAとゲオですが、2025年現在、その店舗数と戦略には大きな開きが出ています。
先述した通り、TSUTAYAの店舗数はピーク時には1,400店舗を超えていましたが、2025年12月現在の店舗数は、約800店にまで減少しています。
一方で、競合であったゲオ(GEO)は現在でも直営店と代理店・FC店合わせて1,043店舗。ちなみにTSUTAYAが消滅した高崎市にもゲオは3店舗あり、TSUTAYAに比べると店舗網の維持に健闘していると言えます。
その背景にあるのは、主力商材のシフトです。ゲオは早期から「中古スマートフォンの売買」「ゲームソフト」などへと軸足を移しました。レンタルをあくまで「集客のフック」として残しつつ、物販と買取で収益を上げるモデルを確立しました。
対するTSUTAYAは、「ライフスタイル提案」を掲げ、蔦屋書店やシェアラウンジといった「空間価値」への転換を図りましたが、旧来型の「ロードサイドのレンタルショップ」というビジネスモデルにおいては、維持が困難な状況に陥っています。
文化のインフラは「商業」から「公共」へ?

TSUTAYAの店舗が消えゆく一方で、佐賀県武雄市の「武雄市図書館」や、神奈川県海老名市の「海老名市立中央図書館」など、TSUTAYAの経営母体であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者として運営する図書館はいわば新たな「文化インフラ」として注目を集めています。
たとえば武雄市図書館には従来の図書館の概念としてはあり得なかったであろう、図書館・蔦屋書店・スターバックスが一体的に融合した施設で、コーヒーを飲みながら館内の本を読むことが可能。館内には蔦屋書店による書籍販売やDVD・CDのレンタルも併設されており、購入と貸出の両方が可能です。
ここで重要なのは、TSUTAYA店舗が「有料レンタル」であるのに対し、これらはあくまで公共図書館であり、本やDVDの貸出が「無料」で行われているという点です。
90年代から00年代、TSUTAYAは「文化の集積地」としての価値を提供する商業施設として、日本のポップカルチャーを支えました。そして2025年現在、その役割の一部は「配信サービス」と「公共図書館」へとそれぞれ継承されたと言えるかもしれません。
昨今、SpotifyやApple Music、Netflixといったストリーミングサービスの台頭により、「所有」や「レンタル」の概念は変化しました。
もっとも配信サービスは便利ですが、万能ではありません。実店舗が満たす「偶然の出会い」や「サブスク未解禁のアーティストのCDも含めた豊富なデータベース」などは、配信サービスでは得がたい価値でもあります。
そして、CCCが運営する図書館では、TSUTAYA時代に培われた「膨大なデータベース」や「検索性」、そして「選びたくなる空間づくり」が活かされています。
「街からTSUTAYAがなくなる」ことは寂しい事実ですが、それは私たちが文化を享受する方法が、次のフェーズへと大きく移行し、それに対応する文化インフラがすでに根付いたことの証明でもあるのかもしれません。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)
記事提供元:スマホライフPLUS
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