【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】角田選手を応援するファンの方々と気持ちを共有できて楽しかった!
イチオシスト

第3戦の日本GPからレッドブルに移籍した角田裕毅。今シーズンのベストリザルトはアゼルバイジャンGPの6位だった。2026年はレッドブルのテスト&リザーブドライバーを務めるが、「最高のF1ドライバーになる夢はあきらめない」と語る
2025年シーズンの最終戦アブダビGPが開催され、3位に入ったマクラーレンのランド・ノリスが初のワールドチャンピオンに輝いた。レッドブルのマックス・フェルスタッペンは今季8勝目を挙げたものの、わずか2点差でタイトルには届かず、ドライバーズタイトル5連覇を逃した。
最終戦を14位でフィニッシュし、F1参戦5年目のシーズンをドライバーズランキング17位で終えた角田裕毅(つのだ・ゆうき)。来季はレギュラーシートを失い、レッドブルでリザーブドライバーを務めることが発表された。2026年は6年振りに日本人ドライバー不在のシーズンになる。
* * *
【清々しい決着となった王座争い】マクラーレンのランド・ノリス選手とオスカー・ピアストリ選手、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手の3人によるチャンピオン争いは第24戦のアブダビGPまでもつれましたが、最終戦で3位に入ったノリス選手が初のタイトルを獲得しました。
個人的にはすごくスッキリとした結末になったなと感じました。今季のチャンピオン争いは、開幕から圧倒的な速さを見せるマクラーレンのチームメイト対決の様相を見せていました。ところが後半戦に入り、5連覇を目指すフェルスタッペン選手が怒涛の反撃を見せ、マクラーレンのふたりに迫っていった。
8月末に開催された第15戦オランダGPの終了時点では、フェルスタッペン選手はポイントリーダーだったピアストリ選手に104ポイントもの大差をつけられていましたが、残り9戦で6勝。最終戦のアブダビもポール・トゥ・ウインで圧勝し、シーズンが終わってみればノリス選手に2ポイント差まで肉薄していました。
フェルスタッペン選手としてはやるべきことをやり切ったと思いますし、ノリス選手もフェルタッペン選手の猛追をしのいで、初のタイトルを手にしました。レース後のふたりは、ともに満足そうな表情を浮かべており、清々しい決着だったと感じます。
F1参戦7年目のノリス選手はナイスガイで、コース上のバトルもクリーンです。そんな"いいヤツ"はF1では頂点に立てないと言われますが、ジェンソン・バトン選手(2009年)やニコ・ロズベルグ選手(2016年)もタイトルを獲得しています。たまに"いいヤツ"でもチャンピオンになることがあるんですよね。

アブダビで3位に入り、F1参戦7シーズン目にして初タイトルを獲得したノリス。イギリス出身の26歳で2019年のデビュー以来、一貫してマクラーレンに所属する。チームメイトのピアストリはノリスと13ポイント差のランキング3位でシーズンを終えた
ノリス選手も自分のスタイルを貫き、頂点に立ちました。新しい時代のチャンピオンが誕生した、という思いはありますが、同時にフェルスタッペン選手のすごさも改めて印象づけられたシーズンでした。
後半戦の主役は間違いなくフェルスタッペン選手ですよね。夏休み明け以降の彼の強さを目の当たりにすると、とてつもない存在だと思わざるを得ません。
ノリス選手は来年もタイトルを防衛し、フェルスタッペン選手のような誰もが認める強いチャンピオンになれるのか? バトン選手やロズベルグ選手は結果的に一度しかタイトルを獲得できなかった、短命のチャンピオンでした。
タイトルを守る際には、おそらくノリス選手も非情にならなければならない瞬間が訪れると思います。そんなシチュエーションになったときにノリス選手はこれまでの戦い方を貫けるのか。そこが来年の見どころのひとつだと思います。
【さまざまな思いが去来した最終戦】現行のレギュレーションでレースが行なわれるのは最終戦のアブダビGPが最後でした。DRS(ドラッグ・リダクション・システム)やMGU‐H(熱エネルギー回生装置)は今季限りとなります。
アルピーヌ(ルノー)のパワーユニット(PU)、1993年から参戦するザウバー、2018年にスタートしたホンダとレッドブルのパートナーシップ......いろんなことがアブダビGPで最後になるので、さまざまな思いが去来しました。
でも今シーズンのF1は本当に面白かった。前回も少し触れましたが、各チームのマシンの競争力が接近しているので、誰もが表彰台に上がれる可能性がありますが、同時に誰もが予選のQ1でノックアウトされてしまう可能性もあるというスリリングなレースが続き、ファンとしてはすごく楽しかった。
その面白いシーズンの中でも僕にとっては角田裕毅選手の存在は大きかった。これまで何度か話してきましたが、僕は毎戦、ライブタイミングもずっと角田選手のラップタイムを追いかけながらレースを見てきました。
角田選手に対して誰がどれぐらい速いとか遅いとか、そんなことをレースのスタートからフィニッシュまで、時にはワクワク、時にはヒヤヒヤしながら見ていました。
僕のようなファンは多かったと思いますが、角田選手は今季限りでレギュラーシートを失い、2026年はレッドブルのテスト&リザーブドライバーを務めることになりました。正直、すごく残念です。
来年もレギュラードライバーとして走ってほしかったですし、この言い方が正しいのかどうかわからないですが、角田選手には"ちゃんとしたマシン"で走っているところが見たかった。
【レギュラーシートを失った角田選手】今シーズンのレッドブルは、フェルスッペン選手のマシンには最新のアップデートが入っているけれど、チームメイトの角田選手は旧型仕様のマシンで戦うというレースが多かった。角田選手が本来の力を発揮できるような状況ではなかったので、ファンとしても悔しい気持ちがあります。
最終戦のアブダビもまさにそんなレースでした。角田選手は予選直前のフリー走行3回目でメルセデスのキミ・アントネッリ選手にピットレーンで接触され、マシンにダメージを受け、フロアを旧型に戻すことになってしまった。全車がコンマ1秒の勝負をしている中で、最新仕様のマシンで戦えないのは大きなハンデです。
それでも予選10位になんとか入りましたが、決勝では逆転チャンピオンの可能性を残していたフェルスタッペン選手をサポートするための戦略に徹し、14位でフィニッシュ。自分の走りをできていれば入賞のチャンスはあったと思いますが、苦しいシーズンを象徴するレースになってしまった。
ただ僕は、角田選手はレギュラードライバーになるチャンスはまだあると思っています。今季限りでレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを20年以上も務めてきたヘルムート・マルコさんが退任し、チームのマネジメント体制は変わります。角田選手にとっていい流れが来て、チャンスをつかめそうな気がするんですよね。
これまでの日本人F1ドライバーは、メーカーのサポートなしでやっていけた選手はほとんどいませんが、角田選手は何かやってくれそうだと期待感を持たせてくれるドライバーなんですよね。自分の予想が当たってほしいと願っています。
それに角田選手と同様にレッドブルのセカンドドライバーのシートを失った選手は過去に何人かいます。ピエール・ガスリー選手やアレックス・アルボン選手はほかのチームに移籍して活躍しています。セルジオ・ペレス選手も来年、GMワークスのキャデラックのドライバーとして戻ってきます。
ほかのチームを見ても、ハースのエステバン・オコン選手や来年アウディとなるザウバーのニコ・ヒュルケンベルグ選手も一度レギュラーシートを失いましたが、カムバックを果たしています。きっと角田選手にもチャンスは来るはずです。
【角田選手の応援は苦しかったけど楽しかった】これまでフェルスタッペン選手のチームメイトを務めたドライバーは誰もが苦戦を強いられましたが、あらためてレッドブルのセカンドドライバーは大変だと実感しました。しかも角田選手がチームに加入したタイミングも悪かった。
マクラーレンを始め、周りのチームのマシンの競争力が上がり、レッドブルのマシンの優位性がなくなっていた時期でした。
そうなるとチーフエンジニアは全部のリソースをフェルスタッペン選手に注いでしまうので、角田選手としてはさらに苦しい戦いにならざるを得なかった。
ファンとしても苦しかったけど、その分、楽しめたという側面もありました。もちろんいい状態の選手やチームを応援するのに越したことはないですが、ファンの勝手な心理で、厳しい時間を一緒に苦しむのも楽しいじゃないですか。

「毎戦、角田選手のレースが待ち遠しかったですし、彼を応援する多くのファンの方々と気持ちを共有できたのは楽しかった」と語る堂本光一
そういう世間で言うところの"推し活"みたいに、ひとりのドライバーに入れ込んでレースを見たのは本当に久しぶりでした。それはミハエル・シューマッハ以来だったと思います。
毎戦、角田選手のレースが待ち遠しかったですし、彼を応援する多くのファンの方々と気持ちを共有できたのは楽しかった。でも、それが来年なくなってしまうのは本当に寂しいです。
☆取材こぼれ話☆F1とディズニーが2026年から新たなコラボレーションを開始する。ミッキーマウスに加え、ミニーマウス、ドナルドダック、グーフィー、プルート、デイジーダックなどのディズニーの代表的なキャラクターたち「ミッキー&フレンズ」が世界各地のサーキットに登場し、体験型イベントやコンテンツなどを展開するという。
「F1とディズニーのコラボは2026年シーズンの大きな楽しみのひとつです。今年の第22戦のラスベガスGPではひと足先にコラボイベントが開催され、ミッキーやミニーなどが登場してさまざまなイベントに参加していました。
圧巻だったのはレース後にラスベガスの有名なホテル、ベラージオでの噴水ショー。あれはスゴかった。
来年はミッキーが表彰式に出てきてプレゼンターをする可能性もあるかもしれませんが、ミッキーにシャンパンはかけちゃダメですよね(笑)。とにかくF1とディズニーがどんなイベントを開催してくれるのか、今からワクワクしています。日本GPが開催される鈴鹿サーキットにも登場してほしいですね」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝
構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
