「藍染め」を愛する外国人が伝統の染色技法に感動!:世界!ニッポン行きたい人応援団
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ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時54分)。
今回は、「藍染め」を愛する外国人の初来日の様子をお届けします。
【動画】「世界!ニッポン行きたい人応援団」最新回
紹介するのは、イタリア在住、「藍染め」を愛するヴァレンティーナさん。

日本最古の染色技法「藍染め」。藍は人類最古の染料といわれ、正倉院には8世紀の絹紐が日本最古の藍染めとして現存。海外で“ジャパンブルー”と呼ばれる深い青は、「東京オリンピック」のエンブレムにも採用されるなど、ニッポンを象徴する色として世界に認知されています。
ヴァレンティーナさんが藍染めに取り組み始めたのは13年前。藍染めのワークショップを依頼され、研究者として猛勉強。家の中に工房を作り、日々独学で研究を重ねています。
今一番興味があるのは、藍と紅を重ねる日本古来の染め技術「二藍」。
自家栽培した藍の葉で、染料を一から作るのがヴァレンティーナさんのこだわり。
早速、「沈殿法」と呼ばれる染料作りを見せてもらうことに。
刈りたての葉を水槽へ。2日ほど浸けて葉を取り出し、石灰を入れると、化学反応で青く変化。水槽の底に溜まった沈殿物を取り出して乾燥させれば、染料が完成。

次に、藍染めを見せてもらいます。粉末にした染料に石灰と果糖、水を加えて攪拌。
藍の葉には赤や黄色の色素も含まれるため、染め液も赤、黄、青色に。布を入れると、赤と黄が混ざった色になりますが、浸けては出す作業を繰り返すと、色素が空気に触れて青く変化します。
染まっていく過程と、天然のブルーに魅了されたヴァレンティーナさん。ニッポンには一度も行ったことがなく、「染料の作り方や染め方は独学なので、これが正解か分かりません。基本から習ってプロの染色家になりたい」と話します。
そんなヴァレンティーナさんを、ニッポンにご招待! 今年9月、初来日を果たしました。
今回は二藍を学ぶため、藍と紅、2カ所の本場を訪ねることに。向かったのは、藍の本場・徳島。かつての地名から「阿波藍」と呼ばれ、その生産量は日本一。鎌倉時代から藍が栽培され、染料を作る藍師、布地に染める染師が伝統を今に伝えています。

受け入れてくださったのは、創業約150年、藍染め専門の工房「古庄染工場」。六代目の古庄紀治さんは、糊で防染をする「阿波藍の注染」という技法の全国で唯一の職人として黄綬褒章を受章。娘の美智子さんは七代目を継承しています。
早速、ジャパンブルーを体感するため、藍の染め液を見せていただくことに。
使っているのは、徳島で作られている藍染料「すくも」。乾燥させた藍の葉を醗酵させて作ったものです。すくもを灰汁で溶き、石灰などを加えて10日ほど発酵させると、藍の染め液ができるそう。
ここで、ニッポンの藍を初体験。空に広がる筋雲のような模様が特徴の「むらくも染め」に挑戦させていただきます。布を寄せて染め液が染み込まない部分を作ることで、濃淡のある仕上がりに。

軽く揉んで空気を抜きながら藍液を染み込ませ、浸けること5分。取り出してすぐは緑色ですが、青の色素が空気に触れるとニッポンのブルーに。「夢に見た、ニッポンの藍の色です」と感動!
さらに、独学では習得できなかった「型染め」も学ばせていただきます。型染めとは、型紙を作り、防染糊を置く染色技法。型紙を保存しておけば、版画のように同じ図柄が染められます。
これは、二藍に挑戦するための最初のステップで、まずは図案の作成から。イタリアからニッポンへ辿った道のりと藍の葉を描きました。この後、染めるまでには5つの工程が。なるべく美智子さんの手を借りずに覚えて帰りたいと、型紙に図案をトレースするところから始めます。
次は、型紙の糊を置く部分を切り抜き。細かい箇所がちぎれないよう、紗と呼ばれる繊維を張ります。この型紙を木枠に張り、今回染める綿の手ぬぐいにずれないようセットします。

防染糊は、餅米と米糠、接着剤を混ぜたもの。手ぬぐいに糊を置いたら、糊が乾くまで日陰干しにします。果たして、どんな仕上がりになるのでしょうか?
この日、ヴァレンティーナさんは、すくもの生産量が日本一の徳島県上板町へ。すくもがどのように作られるのか学ぶためにやって来ました。
お世話になるのは、すくもを江戸時代から作り続けている「佐藤阿波藍製造所」。二十代目の佐藤好昭さんと、先代の父・昭人さんは、ともに現代の名工に選出された藍師です。
今や、すくもは希少な染料となり、生産者も激減。昨年の徳島県のすくも生産量37tのうち、佐藤さんの製造所が40%以上を担っています。

見せてくださったのは、去年作ったすくも。ヴァレンティーナさんは藍を水に浸けて色素を沈殿させていましたが、すくもは乾燥させた葉を発酵させるため、土のような色に。
すくもの製造は3月の種まきから12月の完成まで約10カ月かかり、一番大変な発酵に要する期間は100日。
藍の葉は、夏から秋にかけて3回収穫。少しでもお役に立ちたいと、ヴァレンティーナさんも藍を刈るお手伝いをさせていただきました。
製造所に戻ると、「藍ならし」と呼ばれる工程へ。裁断した茎と葉を風で地面に向けて飛ばし、葉だけを選り分ける作業です。茎は重さがあるので手前に、軽い葉は遠くへ飛ばされます。葉に傷がつきますが、細胞が破壊されることで酸化し、青の色素が表面に出てくるそう。
その後は、葉を発酵させるために、天日で乾燥させて保存。こうしてできた「葉藍」は蔵の中に敷き詰められ、ここからがすくも作りの本番です。

佐藤さんが始めたのは、微生物を活性化させて発酵を促す水打ち。ヴァレンティーナさんも体験させていただきます。
佐藤さんは手前も奥も満遍なく水を打っているのに対し、ヴァレンティーナさんは手前に集中。水打ちは熟練の技術が必要で、かつては水分量や温度を管理する「水師」という職人がいたほど難しいのです。
そしていよいよ、すくも作りの最大の山場、発酵作業を見せていただくことに。
寝かせて1週間ほどの葉藍には、酵母などの微生物が増殖。この微生物が有機物を分解する時に出るのが発酵熱です。自然の力で100日間発酵を持続させることで、良いすくもができるそう。

発酵中に行うのは「切り返し」。水打ちした葉藍をひっくり返してかく拌し、発酵熱を維持させる一番重要な作業です。
裸足になるのは、皮膚に当たる感触で水分量や温度を見るため。今回は、ヴァレンティーナさんも特別に体験させていただきました。
最大で3tにもなる葉藍の山を2時間かけて切り返し、一気に行うことで発酵も均一に。水をかけて切り返す作業を5日ごとに20回、約100日かけて染料を作るそう。
「過酷なんですね」とヴァレンティーナさん。
そして、別れの時。「大変お世話になりました、皆さんの情熱は私の宝物です」と感謝を伝えると、佐藤さんから藍染めの西陣織で作った額が。
「青龍」の文字は、清水寺貫主・森清範さんの筆によるもの。「私にとってこれほど名誉な額はありません」と、大感激でハグを交わしました。
「佐藤阿波藍製造所」の皆さん、本当にありがとうございました!
再び「古庄染工場」へ。いよいよ、作った型で藍染めに挑戦させていただきます。
藍液が入った甕はそれぞれ濃度が異なり、新しい藍液の方が濃く染まるそう。美智子さんによると、型染めは一気に染め上げないと糊が落ちてしまう可能性があるため、濃いところで一気に染め上げます。

ゆっくり沈めるのは、繊維に空気が多く付着したまま沈めると、色素が染みこみにくくなるため。引き上げた布を水で洗い流すと、美しい藍色が現れ「やったー!」と大興奮。イタリアとニッポンを繋ぐ、藍の手ぬぐいが完成しました。
そして、別れの時。「貴重な技術を持ち帰ることができ、感謝しています」と伝えると、「私たちから学んだことはいろいろある中の一つなので、それを自己流というかアレンジしていただけたらと思います」と美智子さん。お土産に、絞り染めのテーブルクロスとストールをいただきました。
「古庄染工場」の皆さん、本当にありがとうございました!
二藍に挑戦するため、経験したことがない「紅花染め」を学びたいというヴァレンティーナさん。紅花染めとは、紅花の花びらから抽出した染料で鮮やかな紅に染め上げる染色法です。
そこで、紅花の生産量日本一の山形県米沢市へ。創業141年の織物と染物の工房「株式会社 新田」の皆さんが受け入れてくださいました。四代目の新田英行さんが「染めと織り」を一貫して担う体制を築き、弟の克比古さん夫婦が染色、五代目の源太郎さんが米沢織の職人として、その技術を継承しています。

早速、紅花染めの振袖を見せていただくと、「イタリアでこんな素敵な赤を見たことがありません」と感動! さらに、紅で染め上げた、桜を基調とした着物をサプライズで試着。
紅花染料から作られる「紅皿」という口紅も見せていただきました。
そしていよいよ、紅花染めの本題に。克比古さんが取り出したのは、煎餅のような「紅餅」。江戸時代から作られてきた紅花染めの染料です。約3.75gの紅餅を一つ作るのに、100輪の紅花を使うそう。
紅花は7月に収穫。水で洗って黄色の色素を抜き、深い紅色に変わるまで寝かせます。
成形しやすいようにこねて丸めたものを薄く伸ばし、天日干しで乾燥させると紅餅に。
紅餅を水に入れると、赤色は水に溶けないため、黄色になります。そこで必要になるのが、アカザという植物を燃やした灰。この灰を熱湯で溶いたアルカリ性の灰汁を混ぜると赤色が発色。これでようやく生地を染める準備が整いました。

水と紅餅の溶液を2:1.5で混ぜた染め液に、絹100%の紬糸を入れていきます。すぐに染まりましたが、まだ定着はしていません。一旦引き上げて米酢を足すと、発色を良くして、繊維に定着させる効果が。再度糸を入れて絞ってみると、色が濃くなっていました。
色素を定着させたら、別の桶に水を用意。ここに、完熟した梅を燻して炭化させた「烏梅」を熱湯で溶いて加えます。烏梅に含まれるクエン酸には、色素を溶け出しにくくさせる働きが。「烏梅の状態、米酢の状態、それが全て良い条件じゃないと、紅花の美しい赤は染まりません」と克比古さん。
翌日は、いよいよ二藍に挑戦。前日、徳島で藍染めをしたハンカチと手ぬぐいで二藍ができるかお聞きしたところ、克比古さんからOKをいただけました。
染め液に米酢を加え、手ぬぐいを繊維の奥まで染み込むように浸けていきます。烏梅に浸けている間に、ハンカチも徳島で習ったむらくも染めで染色。作業の合間には、ご厚意で「裂織」も体験させていただき、染めと織りの両方を学ぶことができました。

念願だった藍と紅の重ね染め、ついに二藍が完成! 「想像をはるかに超えた藍と紅に出会えて、二藍に感動です」とヴァレンティーナさん。
そして、別れの時。「2日間でしたが、何年分にも匹敵する多くのことを体験できました。涙が出そうなくらい、感謝の気持ちでいっぱいです」と伝えます。
そしてお土産に、紅皿と紅花染めのシュシュ、裂織のトートバッグまでいただき大感激! 「紅 ベニッシモ(最高)!」と喜びました。
「新田」の皆さん、本当にありがとうございました!
帰国から2カ月。ニッポンで学んだ二藍に挑戦する様子を見せてくれることに。型染めの図案のテーマは「ニッポンとの絆」。「古庄染工場」で習った、糊を使う染色法で染めていきます。

紅花が手に入ったそうで、紅餅は自家製。灰汁と混ぜて染め液を作り、米酢も入れて発色を良くします。そこに藍染めをした布を入れて紅を重ね、二藍が完成。少し色が薄くなりましたが、「この薄紅色も綺麗ですよね」とヴァレンティーナさん。
最後に、「皆さんへ感謝の気持ちでいっぱいです。必ずまた、ニッポンへ勉強しに行きます。アイラブ藍、紅ベニッシモ!」とメッセージを送りました。
ヴァレンティーナさん、またの来日をお待ちしています!
月曜夜6時25分からは「JAPANをスーツケースにつめ込んで!&ニッポン行きたい人応援団 合体3時間半!」を放送。
「ニッポン行きたい人応援団」(夜8時54分~)
世界的模型メーカー・タミヤの田宮俊作会長が、今年7月にご逝去された。
タミヤ模型を愛するアルゼンチン人のディエゴさんは、6歳の頃からタミヤのプラモデルの虜に。タミヤで働くことを夢見て専門学校に通うも、父親の不幸と借金問題で叶わず…。そんな彼の30年来の夢は、田宮俊作会長に会うこと。番組に何度もご出演いただいた田宮俊作会長とディエゴさんとのかけがえのない絆を振り返る。
今回は、「藍染め」を愛する外国人の初来日の様子をお届けします。
【動画】「世界!ニッポン行きたい人応援団」最新回
創業約150年の工房で日本の伝統に触れる
紹介するのは、イタリア在住、「藍染め」を愛するヴァレンティーナさん。

日本最古の染色技法「藍染め」。藍は人類最古の染料といわれ、正倉院には8世紀の絹紐が日本最古の藍染めとして現存。海外で“ジャパンブルー”と呼ばれる深い青は、「東京オリンピック」のエンブレムにも採用されるなど、ニッポンを象徴する色として世界に認知されています。
ヴァレンティーナさんが藍染めに取り組み始めたのは13年前。藍染めのワークショップを依頼され、研究者として猛勉強。家の中に工房を作り、日々独学で研究を重ねています。
今一番興味があるのは、藍と紅を重ねる日本古来の染め技術「二藍」。
自家栽培した藍の葉で、染料を一から作るのがヴァレンティーナさんのこだわり。
早速、「沈殿法」と呼ばれる染料作りを見せてもらうことに。
刈りたての葉を水槽へ。2日ほど浸けて葉を取り出し、石灰を入れると、化学反応で青く変化。水槽の底に溜まった沈殿物を取り出して乾燥させれば、染料が完成。

次に、藍染めを見せてもらいます。粉末にした染料に石灰と果糖、水を加えて攪拌。
藍の葉には赤や黄色の色素も含まれるため、染め液も赤、黄、青色に。布を入れると、赤と黄が混ざった色になりますが、浸けては出す作業を繰り返すと、色素が空気に触れて青く変化します。
染まっていく過程と、天然のブルーに魅了されたヴァレンティーナさん。ニッポンには一度も行ったことがなく、「染料の作り方や染め方は独学なので、これが正解か分かりません。基本から習ってプロの染色家になりたい」と話します。
そんなヴァレンティーナさんを、ニッポンにご招待! 今年9月、初来日を果たしました。
今回は二藍を学ぶため、藍と紅、2カ所の本場を訪ねることに。向かったのは、藍の本場・徳島。かつての地名から「阿波藍」と呼ばれ、その生産量は日本一。鎌倉時代から藍が栽培され、染料を作る藍師、布地に染める染師が伝統を今に伝えています。

受け入れてくださったのは、創業約150年、藍染め専門の工房「古庄染工場」。六代目の古庄紀治さんは、糊で防染をする「阿波藍の注染」という技法の全国で唯一の職人として黄綬褒章を受章。娘の美智子さんは七代目を継承しています。
早速、ジャパンブルーを体感するため、藍の染め液を見せていただくことに。
使っているのは、徳島で作られている藍染料「すくも」。乾燥させた藍の葉を醗酵させて作ったものです。すくもを灰汁で溶き、石灰などを加えて10日ほど発酵させると、藍の染め液ができるそう。
ここで、ニッポンの藍を初体験。空に広がる筋雲のような模様が特徴の「むらくも染め」に挑戦させていただきます。布を寄せて染め液が染み込まない部分を作ることで、濃淡のある仕上がりに。

軽く揉んで空気を抜きながら藍液を染み込ませ、浸けること5分。取り出してすぐは緑色ですが、青の色素が空気に触れるとニッポンのブルーに。「夢に見た、ニッポンの藍の色です」と感動!
さらに、独学では習得できなかった「型染め」も学ばせていただきます。型染めとは、型紙を作り、防染糊を置く染色技法。型紙を保存しておけば、版画のように同じ図柄が染められます。
これは、二藍に挑戦するための最初のステップで、まずは図案の作成から。イタリアからニッポンへ辿った道のりと藍の葉を描きました。この後、染めるまでには5つの工程が。なるべく美智子さんの手を借りずに覚えて帰りたいと、型紙に図案をトレースするところから始めます。
次は、型紙の糊を置く部分を切り抜き。細かい箇所がちぎれないよう、紗と呼ばれる繊維を張ります。この型紙を木枠に張り、今回染める綿の手ぬぐいにずれないようセットします。

防染糊は、餅米と米糠、接着剤を混ぜたもの。手ぬぐいに糊を置いたら、糊が乾くまで日陰干しにします。果たして、どんな仕上がりになるのでしょうか?
藍師の伝統技術「すくも作り」を学ぶ
この日、ヴァレンティーナさんは、すくもの生産量が日本一の徳島県上板町へ。すくもがどのように作られるのか学ぶためにやって来ました。
お世話になるのは、すくもを江戸時代から作り続けている「佐藤阿波藍製造所」。二十代目の佐藤好昭さんと、先代の父・昭人さんは、ともに現代の名工に選出された藍師です。
今や、すくもは希少な染料となり、生産者も激減。昨年の徳島県のすくも生産量37tのうち、佐藤さんの製造所が40%以上を担っています。

見せてくださったのは、去年作ったすくも。ヴァレンティーナさんは藍を水に浸けて色素を沈殿させていましたが、すくもは乾燥させた葉を発酵させるため、土のような色に。
すくもの製造は3月の種まきから12月の完成まで約10カ月かかり、一番大変な発酵に要する期間は100日。
藍の葉は、夏から秋にかけて3回収穫。少しでもお役に立ちたいと、ヴァレンティーナさんも藍を刈るお手伝いをさせていただきました。
製造所に戻ると、「藍ならし」と呼ばれる工程へ。裁断した茎と葉を風で地面に向けて飛ばし、葉だけを選り分ける作業です。茎は重さがあるので手前に、軽い葉は遠くへ飛ばされます。葉に傷がつきますが、細胞が破壊されることで酸化し、青の色素が表面に出てくるそう。
その後は、葉を発酵させるために、天日で乾燥させて保存。こうしてできた「葉藍」は蔵の中に敷き詰められ、ここからがすくも作りの本番です。

佐藤さんが始めたのは、微生物を活性化させて発酵を促す水打ち。ヴァレンティーナさんも体験させていただきます。
佐藤さんは手前も奥も満遍なく水を打っているのに対し、ヴァレンティーナさんは手前に集中。水打ちは熟練の技術が必要で、かつては水分量や温度を管理する「水師」という職人がいたほど難しいのです。
そしていよいよ、すくも作りの最大の山場、発酵作業を見せていただくことに。
寝かせて1週間ほどの葉藍には、酵母などの微生物が増殖。この微生物が有機物を分解する時に出るのが発酵熱です。自然の力で100日間発酵を持続させることで、良いすくもができるそう。

発酵中に行うのは「切り返し」。水打ちした葉藍をひっくり返してかく拌し、発酵熱を維持させる一番重要な作業です。
裸足になるのは、皮膚に当たる感触で水分量や温度を見るため。今回は、ヴァレンティーナさんも特別に体験させていただきました。
最大で3tにもなる葉藍の山を2時間かけて切り返し、一気に行うことで発酵も均一に。水をかけて切り返す作業を5日ごとに20回、約100日かけて染料を作るそう。
「過酷なんですね」とヴァレンティーナさん。
そして、別れの時。「大変お世話になりました、皆さんの情熱は私の宝物です」と感謝を伝えると、佐藤さんから藍染めの西陣織で作った額が。
「青龍」の文字は、清水寺貫主・森清範さんの筆によるもの。「私にとってこれほど名誉な額はありません」と、大感激でハグを交わしました。
「佐藤阿波藍製造所」の皆さん、本当にありがとうございました!
藍染めに挑戦!美しい藍色に大興奮
再び「古庄染工場」へ。いよいよ、作った型で藍染めに挑戦させていただきます。
藍液が入った甕はそれぞれ濃度が異なり、新しい藍液の方が濃く染まるそう。美智子さんによると、型染めは一気に染め上げないと糊が落ちてしまう可能性があるため、濃いところで一気に染め上げます。

ゆっくり沈めるのは、繊維に空気が多く付着したまま沈めると、色素が染みこみにくくなるため。引き上げた布を水で洗い流すと、美しい藍色が現れ「やったー!」と大興奮。イタリアとニッポンを繋ぐ、藍の手ぬぐいが完成しました。
そして、別れの時。「貴重な技術を持ち帰ることができ、感謝しています」と伝えると、「私たちから学んだことはいろいろある中の一つなので、それを自己流というかアレンジしていただけたらと思います」と美智子さん。お土産に、絞り染めのテーブルクロスとストールをいただきました。
「古庄染工場」の皆さん、本当にありがとうございました!
米沢の老舗工房で「紅花染め」を学ぶ
二藍に挑戦するため、経験したことがない「紅花染め」を学びたいというヴァレンティーナさん。紅花染めとは、紅花の花びらから抽出した染料で鮮やかな紅に染め上げる染色法です。
そこで、紅花の生産量日本一の山形県米沢市へ。創業141年の織物と染物の工房「株式会社 新田」の皆さんが受け入れてくださいました。四代目の新田英行さんが「染めと織り」を一貫して担う体制を築き、弟の克比古さん夫婦が染色、五代目の源太郎さんが米沢織の職人として、その技術を継承しています。

早速、紅花染めの振袖を見せていただくと、「イタリアでこんな素敵な赤を見たことがありません」と感動! さらに、紅で染め上げた、桜を基調とした着物をサプライズで試着。
紅花染料から作られる「紅皿」という口紅も見せていただきました。
そしていよいよ、紅花染めの本題に。克比古さんが取り出したのは、煎餅のような「紅餅」。江戸時代から作られてきた紅花染めの染料です。約3.75gの紅餅を一つ作るのに、100輪の紅花を使うそう。
紅花は7月に収穫。水で洗って黄色の色素を抜き、深い紅色に変わるまで寝かせます。
成形しやすいようにこねて丸めたものを薄く伸ばし、天日干しで乾燥させると紅餅に。
紅餅を水に入れると、赤色は水に溶けないため、黄色になります。そこで必要になるのが、アカザという植物を燃やした灰。この灰を熱湯で溶いたアルカリ性の灰汁を混ぜると赤色が発色。これでようやく生地を染める準備が整いました。

水と紅餅の溶液を2:1.5で混ぜた染め液に、絹100%の紬糸を入れていきます。すぐに染まりましたが、まだ定着はしていません。一旦引き上げて米酢を足すと、発色を良くして、繊維に定着させる効果が。再度糸を入れて絞ってみると、色が濃くなっていました。
色素を定着させたら、別の桶に水を用意。ここに、完熟した梅を燻して炭化させた「烏梅」を熱湯で溶いて加えます。烏梅に含まれるクエン酸には、色素を溶け出しにくくさせる働きが。「烏梅の状態、米酢の状態、それが全て良い条件じゃないと、紅花の美しい赤は染まりません」と克比古さん。
翌日は、いよいよ二藍に挑戦。前日、徳島で藍染めをしたハンカチと手ぬぐいで二藍ができるかお聞きしたところ、克比古さんからOKをいただけました。
染め液に米酢を加え、手ぬぐいを繊維の奥まで染み込むように浸けていきます。烏梅に浸けている間に、ハンカチも徳島で習ったむらくも染めで染色。作業の合間には、ご厚意で「裂織」も体験させていただき、染めと織りの両方を学ぶことができました。

念願だった藍と紅の重ね染め、ついに二藍が完成! 「想像をはるかに超えた藍と紅に出会えて、二藍に感動です」とヴァレンティーナさん。
そして、別れの時。「2日間でしたが、何年分にも匹敵する多くのことを体験できました。涙が出そうなくらい、感謝の気持ちでいっぱいです」と伝えます。
そしてお土産に、紅皿と紅花染めのシュシュ、裂織のトートバッグまでいただき大感激! 「紅 ベニッシモ(最高)!」と喜びました。
「新田」の皆さん、本当にありがとうございました!
帰国から2カ月。ニッポンで学んだ二藍に挑戦する様子を見せてくれることに。型染めの図案のテーマは「ニッポンとの絆」。「古庄染工場」で習った、糊を使う染色法で染めていきます。

紅花が手に入ったそうで、紅餅は自家製。灰汁と混ぜて染め液を作り、米酢も入れて発色を良くします。そこに藍染めをした布を入れて紅を重ね、二藍が完成。少し色が薄くなりましたが、「この薄紅色も綺麗ですよね」とヴァレンティーナさん。
最後に、「皆さんへ感謝の気持ちでいっぱいです。必ずまた、ニッポンへ勉強しに行きます。アイラブ藍、紅ベニッシモ!」とメッセージを送りました。
ヴァレンティーナさん、またの来日をお待ちしています!
月曜夜6時25分からは「JAPANをスーツケースにつめ込んで!&ニッポン行きたい人応援団 合体3時間半!」を放送。
「ニッポン行きたい人応援団」(夜8時54分~)
世界的模型メーカー・タミヤの田宮俊作会長が、今年7月にご逝去された。
タミヤ模型を愛するアルゼンチン人のディエゴさんは、6歳の頃からタミヤのプラモデルの虜に。タミヤで働くことを夢見て専門学校に通うも、父親の不幸と借金問題で叶わず…。そんな彼の30年来の夢は、田宮俊作会長に会うこと。番組に何度もご出演いただいた田宮俊作会長とディエゴさんとのかけがえのない絆を振り返る。
記事提供元:テレ東プラス
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
