自民×維新連立で大混乱! 「大阪自民」は今後どうなる!?
イチオシスト

日本維新の会の吉村洋文代表(左から2人目)と握手する自民党の高市早苗総裁(中央)
自民×維新の連立で発足した高市政権。この連立でグラグラ揺れているのが大阪自民。現在、維新1強とも言えるこの地で、もう自民の候補が立候補することはかなわないのか? 今後の選挙協力などについて大阪自民の議員を中心に話を聞いた。
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【維新1強の大阪で自民は......!?】公明党の連立離脱、自民×維新の新連立スタートと急展開の末に実現した高市早苗総理の誕生からはや1ヵ月。これまでバチバチに戦っていた自民と維新が仲良くすることになり、大きく揺れているのが大阪だ。
大阪の選挙区で維新は「1強」と言いたくなるほどの強さを見せている。その象徴というべき選挙が昨年の衆議院選挙。大阪府内の全19選挙区で自公の連合は維新と直接対決したが、結果は維新の全勝。辛うじて大阪15区で自民新人の島田智明氏が比例復活で当選したのみ。公明はゼロになってしまった。
さらに今年の参議院選挙でも、維新が2人当選させている一方で、公明党は1議席を死守したものの、自民の候補者は参政党の勢いに押されるかのように落選してしまった。
こうした状況を受けての新連立について、大阪自民のある地方議員はこう語る。
「党本部が親やったら私ら地方議員は子供みたいなもの。今回の出来事は家で仲が良かったお父ちゃんとお母ちゃんが突然離婚すると言い出して、お母ちゃんが家を出ていったみたいなもの。子供はぽかーんとするしかない。
そんなところにお父ちゃんがいつもケンカばっかりしていた近所の女の人を連れてきて、この人と結婚すると。もう子供は何していいかわからへん。今、大阪の自民党議員はみんなそんな感じですよ」
というわけで、今回の新連立締結の渦中にいる大阪の自民議員らに今の状況をどう受け止めているのか、詳しく話を聞いてみた。
まずは、自民党大阪府連幹事長・永井啓介氏の話。

話をしてくれた自民党大阪府連幹事長の永井啓介氏
――今回の新連立をどう受け止めましたか?
「全国各地の自民党関係者から『大阪の選挙区が特殊なだけで、大阪だけが我慢したら済むことでしょう』みたいな声が聞こえてきています。
それに対して、大阪自民の幹事長として思うことは『ふざけんなよ! なんで大阪だけ貧乏くじを引かなあかんねん。大阪自民を復活させるために俺は幹事長引き受けたんやし、大阪はみんな頑張ってるんや!』。そういう気持ちです」
――実際に議員の方から不安の声とかは上がってきていませんか?
「次の衆議院選挙に立候補を目指している人間が支部長として大阪の各選挙区にいるんですが、維新の現職議員がいる中で果たして次の選挙に立候補できるのかと皆、戦々恐々です。
ただ先日、小林(鷹之)政調会長が来阪されて、話し合いの機会がありまして、『今後、党本部で維新との選挙協力でどういう決定がなされるかはまだ未知数ですが、これまでどおりの活動を継続してください』とのことでした。
つまり、今後選挙区調整がどうなるのかまだわからない。活動も現状維持でということです」
――国会議員の状況はわかりましたが、大阪の府議会、市議会の議員さんからはどんな声が?
「大阪市、堺市など都市部はそうでもないんですが、それ以外の都市の府議会議員さんから立候補を躊躇するような不安の声が聞こえてきています。どうしても周辺の市町村は維新の影響が大きくなってしまうので......次出馬しても大丈夫かという声ですね」
――中央で自民と維新が連立したからといって、大阪でも維新と選挙協力ができると思いますか?
「あくまでも今のところですが、小林政調会長とのお話の中ではそういう話はありませんでした。今後どうなるかわからないんですが......」
――最後に、大阪自民はこれからの大阪での選挙について何を軸にして戦っていくのでしょうか?
「地方政治は二元代表制なんです。選挙で選ばれた首長と地方議会が対等に協議をしながら進めていく。ところが大阪は市長も知事も維新。市議会、府議会も維新が過半数を占める。
つまり維新のトップで府知事の吉村(洋文)さんがやろうと思ったことを止めることができない異常な状態なんです。この異常な政治を本来の姿に戻す、戻さないといけないということを大阪の人たちに訴えていきたいです。
また国政については、維新との連立を踏まえた選挙区調整をこれから党本部で決定していただけるかと思います。大阪府連としてはこれまで汗をかいてきた支部長(次の衆議院選に立候補したい方々)の気持ちを最大限にくんだ判断を党本部にしていただきたい。そういう気持ちに変わりはありません」
【国や地方の元議員は何を思う!?】次に話を聞いたのは、過去に3期府議会議員を務めたベテランだが、前回2023年の統一地方選挙で維新の新人に惜敗。次の選挙に向けてリベンジ準備中の徳永愼市氏。

過去に3期府議会議員を務めた自民・徳永愼市氏とポスター

――維新との連立についてはどう受け止められましたか?
「『お互いこれから仲良くしていこう』なんて言ってる人は、大阪で何人ぐらいいるのかなって感じです。少なくとも私の周りはそんな空気はまったくないですよ。お互いずっと戦ってきていますんで」
――今回の連立、維新の意図はなんだと思いますか?
「ここが自分たちをアピールできるチャンスだと思ってやったという気がしてます。閣外協力ということでいつでも逃げられるようにしているのも、党のPRのためだと思います。
高市さんに要求を突きつけて、これをのまないと連立を離脱していつでも野党になるぞと揺さぶって、自分たちの主張をPRする作戦でしょう。
議員定数の削減を突然言い出したのも、全国的に賛否両論を巻き起こして注目されると判断したからだと思います。いつも大阪でやってきた維新の常套手段で、ああまたやってるなあという感じです」
長く戦ってきただけにバチバチの姿勢を崩さないようだ。
続いて話を聞いたのは、元衆議院議員の柳本 顕氏。かつては大阪市長選で吉村氏と争った、維新と戦う自民を象徴する政治家だ。

元衆議院議員、今年の参議院選挙で敗れた自民・柳本 顕氏
――維新との選挙協力関係をどうお考えでしょうか?
「残念ながら選挙協力はできないと思います。ただ、維新はもともと自民にいた方々が母体となってつくった政党。なので、考え方は公明よりも維新のほうが近いと思っています。
これまでは公明党さんがいいブレーキになってきたという面はあったのかもしれませんが、逆に言うとブレーキが外れて、近い考えの維新と一緒になることで協力関係は取りやすくなると思います。より自民党らしい運営ができるようになるという面も出てくると思います」
――第三者から見ると、自民と維新はバチバチにやり合ってきたのに、連立なんて無理ではと思うのですが。
「国会議員の選挙などを見ると確かにそうです。しかし、二元代表制(地方)と議院内閣制(国)とで違うとおり、地方議会では選挙のときは戦いますが、当選後は議員みんなで協力して意見を擦り合わせるということも行なわれてきました」
――連立と選挙協力は別モノで、選挙後はまた協力し合うということですか?
「たとえがいいかわかりませんが巨人ファン、阪神ファンがいたとして、試合のときはお互い敵同士でバチバチにやり合いますが、試合が終わったらどちらもプロ野球を愛するファンという意味で気持ちは一緒です。
同じように選挙が終われば日本を良くしたい、大阪を良くしたい気持ちでは一致する部分があるという意味です」
【維新サイドにも質問を投げてみた】逆に、維新サイドにも同じような質問を投げかけてみたところ、大阪維新の会事務局から書面でこのような返答があった。
――大阪維新として、新連立をどう受け止められたでしょうか?
「新連立は支持者からも賛否のある大きな決断でしたが、有権者との約束(選挙公約)をいっそうスピード感を持って実行していく最適な形と認識しています。大阪においても教育の無償化や副首都化などこれまで訴えてきた政策をさらに実現させるべく尽力していきたいです」
――今後の大阪での選挙において大阪自民についてどのような考えをお持ちでしょうか?
「他党の選挙についてわれわれは口を出す立場ではないと考えます。大阪の成長、大阪府民の住民サービス充実のため、引き続き選挙公約の実現に全力を尽くしていきます」
自民、維新両サイド共に現状での見通しは不明瞭というような答えだったが、大阪の政局が大きな転換点を迎えているのは確か。今後の動きに注目だ。
取材・撮影/ボールルーム 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
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