“軽い”足首が不調の原因? 上田桃子も調子を上げた“重い”足首の作り方は?【四の五の言わず振り氣れ】
イチオシスト
昨年でツアーから撤退した上田桃子やルーキー・六車日那乃などを輩出する「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏が、スイングが安定する“重い足首”について語ってくれた。
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上田桃子プロの調子が上がらない時期がありました。とかく不調になると、クラブの動きに手を加えがちですが、そのとき欠場試合の休養を利用してボクたちが注目したのが“足首”でした。
調子が上がらない理由は、“足首が軽かった”からです。人間の体重の80%は、足首に乗っているといわれています。ところが、不調に陥っているとき、足首にしっかりと体重が乗らない選手が数多く見られます。具体的な現象としては、ダウンスイングで右の足首が浮き、右ヒザが外回転。それに伴い腕やクラブが遠回り、いわゆるドアスイングになる、というわけです。
実はこのことは、日本ハムファイターズの元選手だった、鶴岡慎也さんに指摘されたことでもあります。というのも現役時代、捕手だった鶴岡さんは、投手の調子を軸足(右投げなら右足)のヒザの動きで判断していたと言います。具体的には軸足のヒザが右投手なら3塁側、左投手なら1塁側に流れたときが要注意。それにより軸がブレて傾き、ボールに体重が乗りません。その原因は全て足首に体重が乗っていないためで、そのヒザのわずかな動きがパワーロスを生むというのです。それは打者でも同じことがいえるそうです。
そこでボクはアドレスした桃子プロの両足の上に細長い板を乗せ、それをボクが踏んでクラブを振らせました。いうまでもなく“重い足首”を作るためです。もっといえば、自分の体重が足裏のどこに、しっかり乗っているかを確認する練習といってもいいでしょう。
ゴルフのレッスンには、ツマ先体重など、立ち方についてのものが数多くあります。ボクにいわせれば、立ち方は形ではありません。自分の体重を足裏でしっかりと支えることが何よりも大事なのです。そのためには、足首、ヒザ、股関節を結ぶライン(これをパワーポジションと呼びます)に、しっかりと乗せることが重要。単に形だけを真似するのは“死に足”であり、足裏で自分の体重を感じる立ち方こそが、生きた足の使い方です。
桃子プロにやらせたのは、そのための練習です。合宿中には両足の甲に砂を乗せ、これを落とさないように打たせました。これも重く立つための練習です。また畑岡奈紗プロは、二度三度とやる軽いジャンプがルーティンになっています。これもパワーポジションを確認するには、実に効果的な方法です。
日本女子プロゴルフ協会相談役の樋口久子さんがプロアマに出場されていたとき、スタート前にこんな練習をしているのを、何度か見かけました。それはスタートホールで斜面を見つけると、ツマ先下がりの構えを作り、そこでブンブンと連続素振りをするのです。
これを解説すれば、足裏に体重を乗せて立ち、軸を安定させ、“生きた足”を作っていたのでしょう。実際、スタート前にこうした練習を行い、相談役は今も素晴らしいプレーをするのですから、その効果は絶大。少しの時間でできる練習ですから、1ラウンドを通じ、安定した立ち方を身に付けるためにも、読者の皆さんにはやってほしい練習です。
さて、スイングにおいてこの足首と腕の振り、さらに首の動きは大きく関係しています。ダウンで地面を踏み込むと、それと同じだけのエネルギーが地面から跳ね返ってきます。いわゆる地面反力であり、プロのスイングを見るとダウンで蹴り上げる動きを見せています。
この打ち方を真似ようとするアマチュアは多いのですが、ここでも形だけを真似するのはとても危険です。理由のひとつは、足は蹴り上げるものではないからです。プロは切り返し後に左足で踏み込んだ反動で、地面反力の力によって蹴り上がる、と考えるべきでしょう。
実は足首はその動きが少なければ少ないほど、また動くにしても遅ければ遅いほど、ヘッドスピードは速くなります。スイングでの足首やヒザの大きな動きは、スエーにつながります。またプロのスイングに見られる地面反力による蹴り上がりも、スイング中の遅いタイミング、まさにインパクトの瞬間に起きているのです。つまり足首の動きは最小限で、なるべく遅いタイミングであることが、ヘッドスピードをより上げる条件なのです。
アマチュアの場合、自分で地面を蹴るのではなく、むしろ動かさない方がクラブを速く振れる人も少なくありません。もちろん、その大前提は足首を重く、自分の体重を感じて立つことはいうまでもありません。ボールを打つよりも、まずは足首でしっかり立つこと。これを徹底することで、桃子プロの調子も終盤に向けて上がっていったのでした。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』879号より抜粋し、加筆・修正しています
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