「はま寿司」の組合は結成後2ヵ月で団体交渉。一方、ウーバーイーツユニオンは6年経っても団交拒否。この差はどこに?【チャリンコ爆走配達日誌】
イチオシスト

はま寿司の組合は結成2ヵ月で団体交渉。「いいなぁ。自分たちも団体交渉してみたいなぁ」
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第124回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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9月19日、回転ずしのパートやアルバイトとして働く人たちで結成する「回転寿司ユニオン」が、記者会見で「回転寿司ユニオンはま寿司本部」の結成を発表しました。
その席で、回転寿司ユニオンはスシローで働く、あるバイトの方を中心に結成されたが、その後、はま寿司で働く人が相次いで加入したこと。この組織が6月に結成され、6月30日に、はま寿司に対して団体交渉を申し入れたこと。8月27日に団体交渉を行ない「始業時の15分単位の賃金計算を早ければ年度内に1分単位に改正する」という回答を得たことが語られました。
これまでは、始業時間から少しでも遅刻した場合、時給計算は15分後から始めたものとしていたのが、1分遅刻なら1分後、5分なら5分後と1分単位での計算になるそうです。ちなみに労働基準法の昭和63年(1988年)3月14日基発第150号通達に遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理についての言及があるとのことです。
6月に結成して、8月に団体交渉で結果を出し、9月に記者会見する。実にスピーディーな動きです。一方、私が執行委員長を担当するウーバーイーツの組合は、2019年10月に結成。団体交渉の申し入れを何度かしたものの、交渉は一度も行なわれていません。
結成当時から会社側は私たちの組織を労働組合として認めておらず、20年3月に東京都労働委員会(労働問題の争いごとを行なうところ)に団体交渉の拒否は不当労働行為であると救済を申し立てました。そして22年11月に東京都労働委員会が会社側に団体交渉に応じるようにとの命令を出しました。
ですが、会社側は命令が不当として22年12月、中央労働委員会に再審査の申し立てを行ない、現在に至ります。
こういった経緯もあり、組合結成から6年の歳月が経過。はま寿司の組合が結成2ヵ月で達成したことがまだできておりません。
アルバイトの場合、会社側が労働者の時間を拘束する「使用者性」というものが明確なので、組合を作るためのハードルがありません。一方、ウーバーイーツの場合、会社の主な主張は「料理を注文する人、料理を作る店、配達する人をマッチングするだけのものである」とのことです。
私たちの主張は配達員が事業組織に欠かせないものであること、報酬決定システムなど契約内容が会社側から一方的に決められていること、報酬に労務対価性があること、といったことから「労働組合法上の労働者性があるので、組合として成立している」というものです。
ざっくり言うと、いろんなロジックを駆使して働く人を守る法律の枠から外れた働き方を生み出していく最近の流れはおかしいのではないかと。フリーランスで働く人が大量に必要な職場における、フリーランスで働く人とアルバイトの人の差はなんなのかと。
いろいろ小難しいことを書きましたが、私が言いたいことを簡潔に述べるとしたら「いいなぁ。自分たちも団体交渉してみたいなぁ」です。
文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明
記事提供元:週プレNEWS
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