「ホンダが動かなければ原付が消えてしまう」一挙4台公開された噂の新シリーズの実力は? ホンダ"新基準原付"大解剖
 イチオシスト
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排ガス規制強化に対応した新基準原付を、ホンダが4車種同時に投入して話題に。二輪業界トップの実力を改めて示した
50㏄原付、ついに世代交代──。新基準原付が次の時代の幕を開ける。
ホンダが発表会見で新制度対応の4モデルを一挙大公開! 週プレ自動車班はホンダモーターサイクルジャパン社長を現地で直撃!
排ガス規制、EV化、そして"生活の足"の再定義──。変革期を迎えたバイク市場の最前線を、現場から徹底リポートする!
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50㏄原付の生産終了と二輪市場の大転換期ホンダが動いた!
10月16日、東京都江東区で行なわれた報道陣向け発表会で、ホンダが新型バイク「Liteシリーズ」4モデルを公開した。今年4月に導入された新しい免許制度に対応した、初の製品群だ。従来の50㏄原付に代わる新基準原付として注目を集めている。
ちなみに新基準原付とは、排気量125㏄以下で、出力を4.0 kW(5.4馬力)以内に抑え、原付免許で乗れる新制度バイクのこと。見た目は軽二輪サイズだが、法的には"原付一種"である。
発表会の熱気はすさまじかった。午後の部に参加した週プレ自動車班に、ホンダ関係者がこう漏らす。
「午前の部はテレビや新聞の報道陣が中心でしたが、その数に驚きました。新基準原付への社会的関心の高さを感じました」
背景にあるのは、11月から施行される新たな排ガス規制。50㏄エンジンで基準をクリアしつつ採算を取るのが難しく、ホンダは50㏄以下の原付バイクの生産終了を正式に決定した。1958年に登場して長年親しまれてきたスーパーカブも、ついに世代交代の時を迎えた。

原付市場は、日本経済の成長とともに人々の暮らしを支えてきた。しかし社会環境の変化により、近年は縮小傾向に
かつて年間338万台(82年)を誇った原付市場は、2024年にはわずか10万台にまで縮小。電動アシスト自転車や電動キックボードの台頭もあり、二輪市場全体が転換期を迎えている。
そこで週プレ自動車班は、発表会の熱気冷めやらぬ現地で、ホンダモーターサイクルジャパンの室岡克博社長に直撃取材を敢行した。
――日本の原付市場をどうご覧になっていますか?
室岡 現在、日本国内の原付保有台数は約418万台に上ります。これは"国民車"と呼ぶにふさわしい規模であり、長年にわたって生活インフラの一部として定着してきました。
特に地方では、バイクはまさに生活のライフラインです。市場は縮小傾向にあるものの、必要とする人々は今も確実に乗り続けており、原付には依然として堅実な需要があると感じています。

ホンダモーターサイクルジャパン代表取締役社長・室岡克博 「原付はホンダの創業期の主力製品であり、生活に役立ちたいという企業理念の象徴。重要なカテゴリー」と室岡社長
――生活に寄り添う移動手段としての"原チャリ"を、次世代技術への投資を支える収益の柱にするというお考え?
室岡 それよりもまず、50㏄の生産終了に合わせて、新型車を途切れることなく投入することに強くこだわりました。業界のリーダーとして、安心して乗り続けられる環境を提供することが、ホンダの責任だと考えています。
――新基準原付のEV化は視野にありましたか?
室岡 EV一本化の選択肢は当然ありました。静かでスムーズな走りは魅力ですし、私自身も試乗して「未来のモビリティだ」と感じています。ただし、現時点ではインフラが整っているとは言い難い。夜間充電や航続距離など課題は多いんです。
――つまり、ホンダの二輪はしばらく"ガソリン&EV"の二刀流で進むわけですね?
室岡 そうですね。すべてをEVに置き換えるのは現実的ではありません。しばらくはガソリン車とEVの両方を並行して提供していきます。
――今回、一気に4モデルを発表したその狙いは?
室岡 ホンダが動かなければ原付が消えてしまうという危機感がありました。今回の4台は既存のベース車両を生かしつつ、開発陣のアイデアを反映して改良した点も大きい。
――室岡社長、試乗はされたんですか?
室岡 全モデルに試乗しましたが、どれも出だしのトルク感が良くて驚きました。中でもDio110Liteは特に印象的でした。完成度が高く、足つきも良くて安心感があります。多くの人に受け入れられるモデルだと思います。
市場の不安を象徴した"駆け込み需要"今回のホンダの発表について、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏はこう分析する。
「ホンダは原付一種に乗り続ける人々の生活を守ろうとしています。そこには創業者・本田宗一郎氏の『人々の暮らしに役立ちたい』という理念が息づいている。通勤・通学・配達など、原付一種はすでに社会インフラの一部。
JAMA(日本自動車工業会)の統計によると、2024年に原付一種は全国で約418万台保有されており、国内二輪車保有台数の約41%を占めます」
実は50㏄原付の生産終了が報じられると、こんな動きがあったという。
「今後は中古車しか選べなくなるとの懸念が一気に広がって、販売店では50㏄モデルの"駆け込み購入"が相次ぎました。まさに市場の不安を象徴する出来事でした。
こうした消費者の不安に対応するため、警察庁、国土交通省、経済産業省、そして国内二輪メーカーが協議を重ね、誕生したのが、今回発表された新基準原付なのです」

Dio110 Lite 11月20日発売 価格:23万9800円 ベースの原付二種の価格は25万800円
ホンダはこの新しい制度にいち早く対応し、4モデルを展開した。価格は税込23万9800円から40万円超までと、幅広く設定されている。自動車評論家の国沢光宏氏はこう評価する。
「Liteシリーズは予想よりも手頃な価格で登場しました。原付は日常の足であると同時に、災害時にも頼れる生活インフラです。
スペックを見る限り、従来の50㏄原付よりも登坂や加速性能に優れ、十分に使えそうです。津波想定地域に住む人は、1台持っておく価値があります」

スーパーカブ110 Lite 12月11日発売 価格:34万1000円 ベースの原付二種の価格は35万2000円
受注の滑り出しも好調。スーパーカブシリーズは年間販売計画6500台に対し、先行受注が約1700台。Dio110Liteは年間計画9000台に対し、約6000台に達している。
販売好調の理由について、ホンダモーターサイクルジャパン商品企画部の木村康太氏はこう語る。
「50㏄モデルの"駆け込み需要"もあったため注視していましたが、今回の受注は当初の想定を上回っています。
ただし、これはあくまで販売店が仕入れた台数で、すべてがユーザーの手に渡ったわけではありません。それでも、販売店が積極的に仕入れるという事実が、"売れる"という確信の表れだと思います」

スーパーカブ110 プロ Lite 12月11日発売 価格:38万5000円 ベースの原付二種の価格は39万6000円
では、販売店の心をつかんだポイントはなんだったのか。
「新基準原付は、単に車体が大きくなって価格が上がっただけではありません。出力性能、走行安定性、安全装備―あらゆる面で"価格に見合う価値"を提供できたと自負しています。
その魅力が販売店に伝わり、売れるという手応えとして感じてもらえたことが、今回の好調な受注につながったのだと思います」
新基準原付の"落とし穴"一方で新基準原付には注意すべき点もある。青木氏はこう警鐘を鳴らす。
「世間的には"原付免許で125㏄に乗れる"と話題ですが、今回の新基準原付は、あくまで原付一種の枠に加わった車両です。交通ルールは従来の原付と同じ。つまり制限速度は30キロ、二段階右折、ふたり乗り禁止です」
ナンバープレートも"白ナンバー"で、原付二種とは明確に区別される。制度の趣旨を正しく理解しないと、思わぬ違反につながる可能性も。

クロスカブ110 Lite 12月11日発売 価格:40万1500円 ベースの原付二種の価格は41万2500円
国沢氏は市場動向についてこう予測する。
「新基準原付は世界中のメーカーが手がける排気量。安価な海外製モデルが続々参入し、"群雄割拠の戦国時代"になる可能性があります」
青木氏も同意する。
「原付一種は国内二輪車の約4割を占める重要なセグメント。他社も黙ってはいません。ヤマハは2026年投入を目指して開発中、スズキも電動モデルで動きを見せています」
市場は熱を帯びるか!?
取材・文・撮影/週プレ自動車班
記事提供元:週プレNEWS
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