フェアウェイの先にある夢舞台 “日本一曲がらない男”が狙うマスターズ切符
<日本オープン 事前情報◇15日◇日光カンツリー倶楽部(栃木県)◇7238ヤード・パー70>
今年で90回目を迎えるゴルファー日本一決定戦。誰もが欲しい歴史あるタイトルだが、今年はさらにその重みが増している。普段日本を主戦場としない選手も数多く出場し、例年以上に熱い戦いが見られそうだ。
今年の8月末にオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブとR&Aが共同で2026年度の出場資格変更を発表。その内容は「日本オープン」の優勝者にこれまでの「全英オープン」に加えて、「マスターズ」の出場権を付与するというものだった。
マスターズは歴代優勝者や世界ランキングの50位以内、米国男子ツアーの優勝者など出場資格が限られる。世界ランキングのポイント配分改定もあり、日本ツアーを主戦場とする選手が出場するのは、非常に難しいトーナメントだ。日本オープンで優勝すれば夢の舞台に立てるとあって、多くの選手が反応した。
「すごく大きな変化だと思うし、選手のフィールドの厚さも変わってくる」と石川遼が話したように、今大会は普段の国内ツアーで見られない選手がエントリーしている。
マスターズ歴代覇者で今大会9度目の出場となるアダム・スコット(オーストラリア)をはじめ、今季、米国を主戦場とする金谷拓実や平田憲聖、昨年の「ダンロップフェニックス」を制したマックス・マクグリービー(米国)、2011年賞金王のべ・サンムン(韓国)。それに欧州を主戦場とする桂川有人、LIVゴルフの香妻陣一朗らも参戦し、オーガスタ行きの切符を狙っている。
もちろん、普段から国内で戦う選手の熱量も高い。その中でも鼻息が荒く、“本命”の一人ともいえるのが大会2勝の稲森佑貴だ。今季の平均飛距離は261.73ヤードで112位だが、フェアウェイキープ率9季連続1位の精度を誇る“日本一曲がらない”ショットを武器としている。
タイトルの重みを知る男は「日本オープンだけ」は、大会前週に試合があっても必ず月曜日にコース入りして、初日の前に2ラウンド以上こなすことをルーティンとしている。今年は前週が休みだったこともあり、すでに3ラウンドしてコースを頭に叩き込んだ。
「今年は例年より重みが増して、みんな気合が入っている。僕もマスターズは行きたい」と力強く話す。過去に全英オープンやWGCシリーズで世界の舞台に立った経験はあるが、「マスターズは別格です」とトーンを上げるほどだ。
今年のここまでのコース状況はグリーンが硬く、速く、ラフは深い。日本オープンではおなじみのセッティング。3ラウンド消化した稲森は「アプローチもパットももちろん大事ですけど、こういうコースになると、やっぱりショット命って感じがします。特に僕は飛ばないので、フェアウェイに行かないと…」とショット力の重要性を挙げる。
今大会はもともとパー5だった9番(513ヤード)、10番(520ヤード)を長いパー4に設定している。稲森は2打目で5番ウッドを使う場面もあるが、フェアウェイをとらえて2打目できちんとグリーンに乗せてくるあたり、風格すら感じる。
昨季のフェアウェイキープ率は史上初の80%超え(80.957%)を達成。今季は78%台だが、その精度に衰えはない。
今年はクラブセッティングにも変化がある。ピッチングウェッジの下は長年50度と58度の2本で、ロングクラブを厚めに入れていたが、50度と58度の間に54度を忍ばせている。「試合で少し力が入ると、50度が飛びすぎてしまう。100ヤードの距離をフルショットできるクラブが欲しかった」と、試合によって5番ウッドか3番ユーティリティを抜き、ウェッジ3本体制にしている。
これまで悩んでいた100ヤードからのショットだが、今は54度でピタリ。その距離から「バーディが増えている」と胸を張る。今週は「パー5の3打目や、パー4でラフに入れてレイアップした後の3打目とかで重宝しそう」と大会3勝目、マスターズ切符獲得に向けて大きな武器となりそう。
大会3勝目となれば、宮本留吉(6勝)、尾崎将司(5勝)、中嶋常幸(4勝)に次ぐ記録。小野光一、中村寅吉と肩を並べることになる。平均飛距離112位の日本一曲がらない男が歴史に名を残し、オーガスタ行きの切符を手にすることになるか。(文・小高拓)
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