「日本女子オープン」開催時期に見直しの動き 日没との戦いが映す“秋開催の限界”【現地記者コラム】
異例のバーディ合戦となった先週の「日本女子オープン」は、堀琴音がトータル19アンダーで制し、プロ12年目で初の女子ゴルファー日本一に輝いた。
予選カットスコアは大会史上初のアンダーパーとなる1アンダー。4日間の平均ストロークはパー72に対して『71.6304』と、これも大会初のアンダーパーだった。優勝スコアも2017年に畑岡奈紗がマークした大会記録にあと1打と迫るもので、2桁アンダーパーは実に20人に達した。
柔らかいグリーンに、短くはないがプレッシャーにならない程度のラフ。練習ラウンドの段階から多くの選手が「伸ばし合いになる」と予想していた通りの展開だった。ただ、メジャーらしからぬ易しいセッティングが、競技進行の円滑化に大きく貢献したのも事実だ。
日本ゴルフ協会(JGA)が主催する「日本女子オープン」は例年9月下旬から10月初旬にかけて開催される。今年の会場・チェリーヒルズGC(兵庫県三木市)の日没時刻は午後5時40分前後。進行が少しでも遅れれば、120人のフィールドの予選ラウンドはサスペンデッドを免れない。だが、今大会では渋滞が起きるようなホールもなく、天候にも恵まれ、全組がほぼタイムテーブル通りにホールアウトした。日没を気にせずに行えた日本一決定戦は久しぶりだった。
コースメンテナンスは抜群に良かった。酷暑のなか、これほどの状態に仕上げたコース関係者の努力には頭が下がる。JGAが開幕前日に開いた会見で、戸張捷ゼネラルプロデューサー(GP)も感謝の意を示した。
ただし、戸張GPはこうも語っている。「グリーンが柔らかいという指摘はその通り。我々が希望していた硬さよりも柔らかくなった。日本の今の気候で9月末、10月の頭に硬いグリーンにするのはなかなか難しい。これが限界かなと思っています」。
緑のじゅうたんを維持するには、芝を短くカットしたり、グリーンを硬くすることはできない。難度を上げようとすれば、芝はたちまち暑さに耐えられずに焼けてしまう。メジャーの舞台にふさわしい見た目の美しさは絶対に必要で、優先順位も高いと思う。そのおかげで、結果的に今年の大会は滞りなく終了できた。
それでも、やはり思う。――これでは本末転倒ではないか、と。
戸張GPもこの問いに「おっしゃる通り」とうなずいてくれた。ならば、開催時期を見直すことも検討に値するのではないか。
1968年の第1回大会は12月に行われ、80年の第13回までは秋開催だった。81年から88年までは7月、89年から2000年までは6月下旬に開催されていた。1年で最も昼が長い夏至の時期であれば、日没サスペンデッドの心配はない。異常気象が続くとはいえ、真夏の酷暑ほどではなく、セッティングもより難しくできるはずだ。梅雨のリスクはあるが、9月も台風や秋雨前線に悩まされるのだから、条件は“いってこい”だろう。
難しいセッティングで、技術を競い、精神力を試される。それが「日本女子オープン」。だからこそ、国内最高峰大会と呼ばれてきた。戸張GPも「開催時期の変更の話は出ている」と明言している。海外も含めた他のトーナメントとの日程調整、予選の開催時期など、クリアすべき課題は多いが、異常気象が進むなかで6月開催は現実的な選択肢になり得る。そうなれば、07年の樽前CC以来となる北海道や東北での開催も再び可能になるはずだ。(文・臼杵孝志)
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