「人前でゴルフをするのが怖かった」 泣き虫にサヨナラ…復活Vの川崎春花が取り戻した“ダイヤモンド”の輝き
<ミネベアミツミレディス 北海道新聞カップ 最終日◇7日◇真駒内カントリークラブ 空沼コース(北海道)◇6667ヤード・パー72>
涙はこの一年、いっぱい流してきた。勝って泣くなんてもったいない。1メートル弱のウィニングパットを沈め、通算3勝目となる1年9カ月ぶりの優勝を決めた川崎春花は拍子抜けするほど¨フツー¨だった。「やっと勝てた。うれしいなぁという感じで、もう一生懸命すぎて、そんなにいろいろ考えていなかった。涙が出るかなと思ったけど、出ませんでしたね」。泣き虫な自分と決別できた4日間。もう涙は必要なかった。
ルーキーイヤーの2022年に2勝を挙げた。初優勝は地元・京都で開催された9月の「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」。デビュー11試合目でいきなりメジャーチャンピオンとなった。19歳133日の大会最年少Vの称号も手にしたビッグタイトル。その6試合後の「マスターズGCレディース」では再び頂点に立った。だが、順調すぎるプロ人生は翌年、暗転した。初日から首位を守り、完全Vが目前だった3月の「アクサレディス」最終日に「73」をたたいてV逸の3位。涙が止まらなかったここから歯車が狂い始め、予選落ちが始まった。
「ゴルフを続けていけないかもと思ったり、このままダメになってしまうのかなと考えたら、涙が出た。ゴルフ場に行くだけで気持ちが沈んでいた」
6月の「ニチレイレディス」では駐車場に着くと体が動かなくなって、京都市内の自宅にいた母・雅子さんに涙のSOS。「クラブハウスに行く前に母に電話して…。2日目くらいに来てくれました」。電話口では前向きな言葉をかけてもらい、母の顔を見てプレーを続けることもできた。だが、翌週の「アース・モンダミンカップ」から3試合連続で予選落ち。この年はアースからの18試合で予選落ちは11試合を数えた。
「人前でゴルフをするのが怖かった。どこに飛ぶか分からない。気持ちも上がってこなかった」。自問自答の日々。苦しみながらも自分で考えて出した答えは「このまま終わるのはイヤ。何かを変えないといけない」だった。スイングを見直し、1年前に母に電話した今年のニチレイレディスで初めてクロスハンドのパッティングに変えた。4日間大会ではツアー史上2人目のボギーなしVもかかった最終日は、スタートの1番パー4でいきなり3パットのボギーを叩いたが、72ホールでスコアを落としのはこのホールだけ。7番パー4は2.5メートル、8番パー3は2メートル、16番パー4では1.5メートルのパーパットを沈めるなど、ピンチを何度もクロスハンドのパットでしのぎ、ゴールに飛び込んだ。
尾関彩美悠、櫻井心那との“同学年最終日最終組対決”を制し、4打差をつけて逃げ切った。18番グリーン脇では両親が優勝を見守った。「私自身も辛かったけど、近くで見ている父と母も辛かったと思う。優勝を見せられてうれしいです」。父・太郎さんは前夜、京都から飛んできた。昨年7月には、家族で食事に出かけたときに立ち寄ったペットショップで川崎が一目ぼれしたチワワを数日後、サプライズでプレゼント。「試合の帰りや、クラブハウスで泣いているのを何度も見てきた」という父の優しい心遣いだった。
「小梅」と名付けた愛犬にも癒されての復活V。「きょうもミスが出た。ショット的にはまだまだです。課題がさらにできたと思います」。ダイヤモンド世代の先陣を切って初優勝を果たしたエースが、ダイヤモンドに負けない輝きを取り戻した。(文・臼杵孝志)
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