女子格闘技ファン注目のキックボクサー三姉妹――辻井和奏、和花、愛和を直撃「試合後に食べるケーキは最高に美味しいですね(笑)」
いま、女子格闘技界で熱視線を集めているのが辻井和花(つじい・ほのか・写真/右)だ。彼女は19歳、現役大学生のプロキックボクサー。2022年高校生としてプロデビューし、2023年にはKROSS×OVER GIRLS-KICKアトム級・王者に(現在は陥落)。その可憐なルックスから想像のつかない実力者だ。またインスタのフォロワー数は53.7万人で、インフルエンサーとしても活躍中。
7月25日には、RISE190にて「第3代RISE QUEENアトム級(-46kg)王座決定トーナメント」が行われ、同級2位の平岡琴と対決。また7月21日には週プレから初のデジタル写真集『ヒット!』が発売されるなど話題持ちきりだ。
そんな彼女には姉と妹がいて、ふたりもまた注目のキックボクサー。姉・和奏(わかな・写真/中)は、ムエタイ・スックワンキントーン女子フライ級現王者で、妹・愛和(あいか)は先日、セミプロ第一戦を落としたもののアマチュア時代はクイーンズファイト45キロ王者に輝いた。当然プロも視野に入れている。三姉妹がそろってキックボクサーなのはじつにまれ。そのこともあってこちらも話題だ。
そこで今回、辻井3姉妹に集合してもらい、各自の活動歴やキックボクサー一家についてを話してもらうとともに、和花のRISEでの試合やデジタル写真集に関して語り合ってもらった。
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■父から「夢を持て」とよく言われました。――格闘技界で注目の辻井三姉妹ですが、そもそも格闘技をやって、それぞれ活躍される"三姉妹"というのは相当珍しいですよね?
和花 そうかもしれませんね。姉妹でやっていても、途中で誰かが辞めちゃったりするから。
――3人が同じ思いで続けていることが本当にレアですよね。現在、お姉さんと和花さんが大学生、愛和さんが高校2年生と2歳ずつ歳が離れていますが、最初に格闘技を始めたのはお姉さんですか?
和奏 はい。うちはみんな小1になったら父と母に空手道場に連れて行かれるんです。だから3人とも最初は空手を習っていたんです。
――お父さんやお母さんは空手経験者なんですか?
愛和 どっちもやってないけど、お父さんは"格闘技オタク"です。
和奏 スポーツ全般好きだけど、父が若かった頃にK-1とかめっちゃ流行ってたみたいで。格闘技が大好きなんですよね。
和花 それもあって、もともと日本の武道とか伝統的な習い事をやらせたかったらしくて。で、母が空手の師範と知り合いだったので、空手だったという感じです。
次女・辻井和花(19歳)。KROSS×OVER GIRLS-KICKアトム級・前王者。RISEQUEENアトム級7位。インスタのフォロワー数は53.7万人でインフルエンサーとしても活躍している
――お姉さんとしては、空手をはじめたときはどうでした?
和奏 うーん、最初は空手が何かわかってなくて。その前はプールに通っていたんですけど「1年生になったらプールをやめて、空手をやるよ」と言われて。だから「プールやめてもいいんだ、ラッキー! でも空手ってなんだろ?」みたいな感じでしたね。
――妹さん二人も同じくプールから空手に?
和花 はい。でも、私もそんなに空手が好きとか考えたことなかったかもしれない。かといってプールも好きじゃなかったんですけど。
愛和 空手は友だちがいたので、私はそれが楽しくてやってました。
――誰も離脱しなかったのは凄いですね。
和奏 最初はただ「やれ」みたいな(笑)。好きとか嫌いとかじゃなく「やらなきゃいけないもの」としてやってました。
和花 確かに。「どうして空手?」とか不思議に思ったことすらなかったかも。
――しかも、辻井家には自宅に練習場があるそうで。
和花 あるといっても、ただの6畳の和室なんですけどね。
愛和 みんな小さい頃からそこで空手の練習してたよね?
和奏 練習しすぎて畳が全部剥げちゃって。そこからキック用にマットを引き直しました。でも本当にただそれだけの部屋ですよ。
――畳が剥げちゃったということは、かなり練習していた?
和花 それぞれ6年間はやってましたね。道場での練習がないときは家で練習して、それを道場で試すみたいな。
――空手道場の練習だけでは物足りなかったんですか?
和花 そうですね。空手道場も一人に集中して教えてくれるわけじゃなくて、先生がみんなに教えるみたいな場所だったので。家でさらに練習している子が強かったりしましたしね。
和奏 習い事としてやる子は週2回だったんですけど、県大会とかで入賞する子たちは、それこそ毎日出稽古に行ったり、体育館を借りて練習したりしている子ばかりで。それを見ていたので。
愛和 毎週、日曜日は練習がなかったから、そのときはお父さんに教えてもらったりして。それがあってけっこう強くなったと思います。
長女・辻井和花(21歳)。ムエタイ・スックワンキントーン女子フライ級現王者
――教えられるお父さんはさすが"格闘技オタク"ですね。とはいえ、お父さんもまさか3人ともプロやセミプロのキックボクサーになるとは思ってなかったんですかね。
和奏 それは言ってました(笑)。何か一つのことに一生懸命になれる人になってほしいとは思っていたみたいなんですけど。
和花 「夢を持て」とよく言われていましたね。
――皆さんは、話していても穏やかというか。ケンカとかぜんぜんしないそうですね。
愛和 しないです。そもそも最近は全員忙しくて、あんまり一緒に出かけることもなくなってきちゃったし。
和花 私も年下が逆らってきたりしてたらイラっとしちゃうかもしれないけど、愛和はぜんぜんそういうのはないし、私もべつにお姉ちゃんに強く言ったりしなかったし。あと、和奏は優しいから。
和奏 というか、ケンカは面倒くさくて興味ないんですよね(笑)。たぶん、イライラすることもあったと思うんですけど、面倒くさくて何も言わないみたいな。
和花 でも、よく遊んでいたよね?
和奏 最近も予定が合わないだけで、一緒に遊ぶことはありますよ。
愛和 とくにカラオケとか。
和奏 そう、一番行くかも。私がカラオケがめっちゃ好きで、一人でも週2~3回くらい行くんです。マジ趣味なんで。なんでも歌えるからランキングで上位に入ってたり。
――上手いんですね。和花さんと愛和さんは何を歌うんですか?
和花 私はなんだろう......。
和奏 アニメの歌とか、ドラマの曲とか歌ってるよね?
愛和 私はいつもしんみり系しか歌わない。
和奏 そう。だから盛り上がらないんですよ。
――ハハハハハ! しんみり系ってたとえば?
愛和 back numberが好きです。聞くのはそういう歌が多いので。
――そんな皆さんは、いま空手を卒業してそれぞれの道に進まれていて。お姉さんはムエタイ系の団体『スックワンキントーン』が主戦場ですよね。
和奏 はい。団体の代表にもかわいがってもらってます。でも、デビューはRISEだったし、最初はムエタイはやるつもりはなかったんですけど、試しにやってみた首相撲が凄く新鮮で。
――ムエタイは首相撲があるルールですもんね。
和奏 空手出身者にとって、首相撲はまったく新しい要素だったんで楽しかったんです。絶対にヒジありルールの試合はやりたくないと思ってたし、オープン・フィンガー・グローブの試合はもっとやりたくないと思ってたけど、気づいたら両方やってました(苦笑)。
三女・愛和(17歳)。アマチュア時代はクイーンズファイト45キロ王者。先日セミプロ第一戦を落としたものの8月の試合で再起を目指す
――和花さんはいまキックボクシング一筋ですよね。
和花 デビューはRISEで、KROSS×OVERでも試合させてもらってました。私の場合はプロになる前からキックにハマってたというか。空手のときの先輩がキックで活躍してるのを見てて。その憧れもあったんで、小6で空手をやめてキックに転向しました。もし合わなかったらやめればいいなと思っていたので。
――いま続けているということは、マッチしたってことですね。
和花 始めてすぐにプロを目指してみたくなりました。チームも先生たちも皆さん凄く親切でちゃんと向き合ってくれて。だから、もっと頑張りたいなと思いましたね。
――愛和さんもお姉さんの背中を追ってキックボクサーに?
愛和 私は中2まで空手をやっててキックと両方やってた時期もあるんですけど、空手は大きい大会とかであまり結果が出せなかったのに、キックでは負けることが少なくて。それで楽しくなりました。
――愛和さんは、7月13日にセミプロデビューしたばかりですよね。
愛和 はい。でも、試合運びが上手くいかなくて負けちゃいました......。今度は8月に試合があるし、9月にもセミプロの試合があるので、また頑張りたいなと思ってます。
■和花のインスタフォロワー数は驚異の53.7万人!――勝負の世界なので勝ったり負けたりもありますけど、試合後はお互いどういう感じで声をかけ合っているんですか?
和花 もちろん勝ったら「おめでとう」と言うんですけど、誰かが負けたときは私はそんなに何も言わないかも。
愛和 でもこの前、私が負けたときにホノちゃんに電話したら「お疲れさま」って言って励ましてくれました。
和奏 私は試合が終わったらいつもケーキを買ってあげるかな。
和花 試合後に食べるケーキは最高に美味しいですね(笑)。減量で食べられない時期もあるから。私はモンブランが好き。
愛和 私も甘いものはなんでも好きなので、もらったら食べちゃう。
和奏 私は一番デカいヤツなら種類はなんでもいいです(笑)。私が単純にスイーツ食べたいから買ってきたりするんですけど。愛和にもスタバとか買ってあげたことあったもんね?
愛和 そう、練習の帰り道にスタバを買ってくれたことがあったんですよ。
和花 私も和奏が減量終わったあとにバームクーヘンあげたり。
愛和 この前、ホノちゃんが誕生日だったから、好きなフレーバーを聞いてサーティーワンのアイスをいっぱいプレゼントしました。
――辻井家では試合など特別な日にスイーツを送り合うのが定番なんですね。でも、3人とも好みというか、キャラが違いますね。
愛和 ぜんぜん違うと思う。
和やかな三姉妹。話している間も仲の良さがうかがわれた
和奏 あの、MBTIってわかります?
――最近流行った性格診断ですよね。
和奏 それでいうと、私はISFP、和花はINTJ、愛和はESFPだっけ? 和花が一番内向的で、愛和が一番外交的、私が中間みたいな。あと、和花が思考の人で、私と愛和は感情で動いてるみたいな。
――じゃあ、和花さんは冷静沈着分析型で、お二人はどちらかといえば直感型みたいな?
愛和 MBTIだけで言えばそうかも。でも、けっこう当てはまっていると思う。
和奏 あと、和花は器用だよね。格闘技でも言われたことをすぐできるタイプだし。たとえば、お父さんに「これをやるよ」と言われて、初見でできるのは和花と愛和。2時間経ってもできないのが私。
愛和 でも、私もホノちゃんよりかは時間がかかると思う。
和奏 和花と愛和は身体能力すごく高いから。
愛和 あと、ホノちゃんは本当に手先が器用で絵がうまいんですよ。
和奏 そうそう。でも、単純な運動神経のスポーツテストとかの点数が高いのは愛和。そして、カラオケの点が高いのが私!
――そこ、こだわりますね(笑)。
和奏 愛和が体育、和花が美術、私が音楽みたいな感じですね。
――和花さんの絵が上手いというのは、インスタにも影響してそうですよね。現在フォロワーは驚異の53.7万人ということですが。
和花 写真とかあんまりわからないんですけどね。最近はだんだん慣れてきましたけど。
愛和 私もホノちゃんの真似していっぱいアップしてます。動画はお父さんが撮ってくれて、ホノちゃんと一緒に動画に出てるのもありますね。
和花は、2025年5月31日、RISE188で行われた第3代RISE QUEENアトム級王座決定トーナメントの1回戦で岩永唯伽と対戦し、勝利を収めた。7月25日に準決勝で、平岡琴と対戦する(写真提供・RISE)
――その和花さんのインスタがバズって一気にフォロワーが増えたときはお二人はどう思ったんですか?
和奏 スゲー!って(笑)。
和花 自分では、バズると思ってなくて。制服でシャドーをやった動画だからバズったのかなと思うけど、自分でもビックリしました。
――まさに、アクションシーンの一コマみたいな動画ですもんね。
和花 フフフフ、ありがとうございます。
――フォロワーさんは3人が姉妹だというのはご存知なんですかね?
和花 たぶんわかって見てると思います。愛和と2人で映ってる動画もあるし、和奏とも一緒に撮ってるんで。
――お姉さんと和花さんは芸能活動もされてますよね? お姉さんは韓国アイドルIVEのMVに出られたり。
和奏 それもインスタ経由でオファーをいただいたんですよ。韓国アイドルはめっちゃ好きなんで「やばっ!」みたいな。
――和花さんも、アメリカの芸能事務所VODAに所属されてますが、それもインスタ経由で話がきたんですか?
和花 そうです。でも、最初は英語でDMがきて、調べてみたらけっこう凄い事務所だけど、本当かどうかもわからなくて。ただ、その事務所の人が去年試合を観に来てくれて、いろいろ話したら本当の話でした。いい機会なので、挑戦してみようかなと思いました。
――今後はどういう活動をしていく予定なんですか?
和花 映画の撮影などを考えてくれるみたいです。でも、いまはトレーニングが忙しいので何もできてないんですけどね。
愛和 凄いなあ。ホノちゃんはフォロワーも有名なインフルエンサーより多いからホント凄いと思います。
――愛和さんは自分も芸能活動をやってみたいですか?
愛和 興味はあるんですけど、いま勉強も忙しいから。というか、勉強ちょっとヤバイ(苦笑)。
――愛和さんはまだ高校ですもんね。芸能活動の一環としては、7月21日に和花さんのデジタル写真集『ヒット!』が発売されます。撮影はどうでした?
和花 最初はどう撮られればいいのかわからなくて、苦労しました。ただ途中からは慣れてきて、楽しんじゃいましたけどね(笑)。
辻井和花の初デジタル写真集『ヒット!』より。格闘家として姿から、等身大の姿まで多数収められている(撮影:後野順也)
――お姉さんと愛和さんは完成を見てどうでした?
和奏 えー、まだ見てない!
愛和 私も見せてもらってないよ!
――あら、和花さん見せてないんですか?
和花 フフフフ......。
和奏 ウチはみんなけっこう秘密主義なのかも(笑)。
――ぜひお二人もチェックしてください! さらに和花さんは7月25日にRISE QUEENアトム級(-46キロ)王座決定トーナメントの2回戦で平岡琴選手との対戦も迫ってます。
和花 はい。本当に「いよいよ来たな」という気持ちです。歩いていても、ごはんを食べていても、気づけば試合のことばかり考えてしまいます。
――平岡選手は現在35歳。バックボーンが同じく空手で「アイアンレディ」と言われている選手ですよね。
和花 そう、平岡選手が倒れるのは見たことないです。
――じゃあ、本当に和花さんの得意なステップを活かして、しっかり勝ち切るみたいな試合になりそうですか。
和花 これまで積み重ねてきた練習に一つも嘘はないと言えるし、今の自分には勝つ自信しかありません。RISEのベルトは私の夢なので。
和奏 今回、和花は調子いいと思いますよ。
――お二人も応援しに会場に行くんですか?
愛和 行きます! いつも行ってるんで。
和奏 私もその日、大学の実験が終わってから後楽園ホールに行く予定です。
――それでは最後に三姉妹の夢を教えてください。
和花 格闘技を通して、女の子たちが夢を持てる世界にしていくこと。"かわいい"も"強い"も、どちらも大切にできることを、私たち自身の姿で証明していくことです。
――期待しています!
●辻井和奏(つじい・わかな)
2004年生まれ、千葉県出身。168cm、52kg。2021年9月にRISEでプロデビュー。その後、ムエタイ系団体であるスックワンキントーンに主戦場を移し、2023年10月には女子フライ級王者へ。2025年1月鈴木咲耶戦では初防衛に成功した
●辻井和花(つじい・ほのか)
2006年生まれ、千葉県出身。158cm、46kg。2022年10月にRISEでプロデビュー。2023年10月にはKROSS×OVERにてGIRLS-KICKアトム級王者に輝いた。その後、2025年4月の菊池美乃里戦で王座陥落したが、現在は第3代RISE QUEENアトム級王座決定トーナメント2回戦にコマを進め、再び王座戴冠を目指す
●辻井愛和(つじい・あいか)
2008年生まれ、千葉県出身。156cm、46kg。中学2年まで空手を続け、並行してキックボクシングに着手。現在はキックのみに取り組み、2025年7月にはKROSS×OVERにてセミプロデビュー。惜しくも判定2-1の僅差で敗れたが、8月の試合で再起を目指す
★RISE190
2025年7月25日(金)開場 17時00分/開始17時15分
東京・後楽園ホール
第10試合 第3代RISE QUEENアトム級(-46kg)王座決定トーナメント準決勝① 3分3R延長1R
平岡 琴(TRY HARD GYM/同級2位)
辻井和花(BRING IT ONパラエストラAKK/同級7位)
★【メイキング&インタビュー動画付き!】
デジタル写真集『ヒット!』
辻井和花
撮影:後野順也
価格:1650円(税込)
取材・文/松下ミワ 撮影/後野順也
記事提供元:週プレNEWS
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