映画俳優、広瀬すずが語る本音。──「海街diary」から「遠い山なみの光」までの10年を振り返って
2025年に2本の主演作、「ゆきてかへらぬ」、「片思い世界」が公開。9月には、さらにもう1本の主演作「遠い山なみの光」(9月5日公開)、ヒロイン役を務める「宝島」(9月19日公開)の公開が控えるなど、映画俳優として“向かうところ敵なし”状態の広瀬すず。

「遠い山なみの光」は、今年5月のカンヌ国際映画祭・ある視点部門に出品されたのも話題になったが、思えば彼女が15歳で、偶然にも自分の名前と同じ“すず”という少女役で出演した「海街diary」で同映画祭のレッドカーペットを歩いたのが、ちょうど10年前。そのみずみずしい存在感に彼女を“10年に一人の逸材”と唸った論者もいたほど。
それから10年──彼女はものすごいスピードで出演本数を増やしながらも、かつてと変わらぬみずみずしさで、そこにいる。2025年は、そんな奇跡のような俳優・広瀬すずの姿を、さまざまな役柄を通して見ることのできる一年となるだろう。
では、彼女自身は、今日の状況や、これまでの歩みをどう捉えているのだろう? この10年、さまざまな現場で俳優としての経験を積むなかで何を感じ、考えてきたのか? その答えに真っ向から迫った特集が7月18日(金)発売の『キネマ旬報』8月号で組まれている。
タイトルは「映画俳優、広瀬すずの本音。」

「映画俳優、広瀬すずの本音。」と題された本特集。その核となるのは、広瀬すず本人への前後篇合わせて一万字にわたるインタビューだ(聞き手はライターの渡邊玲子)。
「遠い山なみの光」のカンヌ国際映画祭でのお披露目のため、フランスへの渡航を数日後に控えたタイミングで行われた今回のインタビュー。最初に、人生二度目のカンヌに向かういまの心境を聞かれ、さすがに緊張感があるかと思いきや、
「“ラッキー!”“楽しみ~!”“監督ありがとうございます!”というのが、いまの正直な気持ちです(笑)」
と、いたって平常運転な様子を見せる。
世界の名だたる映画人が集うカンヌといえど、気負いはない。そのことはあらためて10年前、「海街diary」のときのカンヌの思い出を聞かれた際のコメントにも表れている。
「レッドカーペットが意外とヌルッと始まった、ということだけはハッキリ覚えています。勝手な先入観で、物々しい警備とかがあって、“ここでちょっと待っててくださ~い”“ここから皆さん歩きま~す”みたいな感じかと思っていたら、“あれっ? もう始まった?”みたいに拍子抜けした記憶があって(笑)。でも、街ごと映画一色に染まるのはすごいなあと思いましたし、“映画って偉大なものなのかも”と思える空気だったことも、すごく覚えています」
続けて、自身が「この10年間で一番変化したと思うこと」を聞かれた広瀬。
「う~ん。すごく変わったとは思うんですけど、自分も割とレッドカーペット並みにヌルッと仕事を始めたタイプだったので……(苦笑)。一つひとつの仕事の実感を毎回しっかり確認しながらやるというよりは、“ハイ、頑張っといで!”“分かりました!”みたいな感じで」
と、ある意味、日々の流れに身を任せてきたことを打ち明ける。そして、
「もともとファッションは好きだったから、雑誌のモデルをしていたときは、田舎者がオシャレな服を着せてもらって、可愛くしてもらえることが楽しかったし、嬉しかったんでしょうね(笑)。でも、お芝居となるとセリフを覚えるのも大変だし、“楽しい!”と感じるような要素は正直少なかった気がします(苦笑)」
と、俳優として大活躍している様子を見ている側からは予想もつかない言葉をさらりと述べる。
人の出会いを通して価値観や感性も変わってきた

広瀬すずがそれでも俳優を辞めなかったのはなぜか?
「理由を挙げるとすれば、私の場合、“人”ですね。本当に運が良くて、いい人とたくさん出会えたから続けてこられたんだと思います。これを言語化するのはすごく難しいんですけど、別に特別な何かがあったわけではないんです。まぁ、そうは言っても自分の中で、ズルズル・ヌルヌル・ジワジワ思っていることも、きっとあるにはあるとは思いますけど(笑)」
いろんな人との出会いが増えてきたことで、「仕事に対する“欲”みたいなものが少しずつ芽生え、価値観や感性も徐々に変化してきた」という広瀬。かつては雑誌の取材などで自分の気持ちを言語化することさえも負担になっていたというが、「この数年で、そういうのもだんだんクリアになってきた感じがする」とも語る。
全体的に広瀬すずの素直で、自然体なことばが印象に残るインタビュー。10年間を経て、年齢を重ねたからこそクリアになってきたものとは何か。この後、話題はその内実に迫るべくより具体的になっていく。広瀬から“ズルズル・ヌルヌル・ジワジワ”溢れ出してきた本音については、ぜひ誌面のほうで読んでほしい。
このほかに特集では、近作の監督などキーパーソンによる広瀬すず論も掲載。広瀬すずがどんな「出会い」を経てきたのか。そして俳優としての彼女がいかに信頼されているかを感じとれる内容となっている。
登場するのは、根岸吉太郎監督(「ゆきてかへらぬ」)、土井裕泰監督(「片思い世界」)、石川慶監督(「遠い山なみの光」)、大友啓史監督(「宝島」)、リリー・フランキー(俳優)、是枝裕和監督(「海街diary」など)、李相日監督(「怒り」など)、奥山由之監督(「アット・ザ・ベンチ」など)。さらに「遠い山なみの光」の原作者でノーベル賞作家であるカズオ・イシグロも加わるという豪華ラインナップ。
なかでもリリー・フランキーは、「彼女、見た目は可愛いらしいですけど、女優としては猛獣ですから」など、親しい間柄ならではのコメントが興味深い。
2025年のスクリーンを華やかに活気づける俳優・広瀬すずのいまを知るためには必携の特集といえるだろう。
特集「映画俳優、広瀬すずの本音。」は7月18日発売の『キネマ旬報』8月号にて掲載。
制作=キネマ旬報社
「遠い山なみの光」
監督・脚本・編集:石川慶
原作:カズオ・イシグロ
出演:広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜、松下洸平、三浦友和
2025年・日本=イギリス=ポーランド・2時間3分
配給:ギャガ
©2025 A Pale View of Hills Film Partners
◎9月5日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて
記事提供元:キネマ旬報WEB
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