日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『カーテンコールの灯』をレビュー!
評点:★4.5点(5点満点)
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道路工事の現場で働く中年の男ダンの日常を淡々と追うオープニングからは、この映画がどこに向かうのか全然分からない。
思春期の娘が感情的に問題を抱えているらしいこと、また一家が何らかの訴訟の準備をしていることから、過去に何かしらの事件があったことは窺えるのだが、それが何なのかは分からない。
ダンは口下手で感情表現が苦手な、いわゆる普通のおじさんだ。ちなみに「おじさん」が総じて感情表現が苦手なのは世界共通だが、そろそろ諦めて、「怒り」や「嫌悪」以外の感情もちゃんと表に出せるようにしていかないと、自分が苦しくなるだけでなく周囲の人をも苦しめることになるので気をつけたいものである。
ダンはひょんなことから地元のアマチュア劇団と出会い、「誰かを演じる」ことによって自分の感情と向き合う術を「発見」する。そのたどたどしい歩みから目が離せなくなってしまうのは、ダンを演じたキース・カプフェラーはじめ、役者陣の演技に深い説得力があるからだ。
言ってみれば地味な映画だが、難しい場面に直面したときの人の心の動きを丁寧に深みを持って描いて飽きさせない。115分の上映時間以上の豊かな「体験」を与えてくれる作品だ。
STORY:とある悲劇をきっかけに妻や娘とすれ違っているダンは、アマチュア劇団の「ロミオとジュリエット」に参加することになり、急遽ロミオ役に大抜擢される。しかし、自身のつらい経験が重なり演じることができなくなってしまい......
監督:ケリー・オサリヴァン、アレックス・トンプソン
出演:キース・カプフェラー、キャサリン・マレン・カプフェラー、タラ・マレン、ドリー・デ・レオンほか
上映時間:115分
全国公開中
記事提供元:週プレNEWS
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