【サッカー日本代表 板倉 滉の「やるよ、俺は!」】第40回「僕にとって最大のライバルとは......」
板倉 滉のライバルとは?
クラブで、代表で大車輪の活躍を見せてきた板倉滉。日本はもちろん、ブンデスリーガでも屈指のDFである彼から見て一番の好敵手は誰なのか、絶対に乗り越えたい相手はいるのか、深掘りしてみた!
■絶対負けたくないと思うのはあの選手日本に帰り、長めのオフを取らせてもらった。振り返ってみれば、今季(2024-25シーズン)のブンデスリーガではほぼ先発フル出場、日本代表でもW杯アジア最終予選で8試合先発出場。やはり疲れはたまっていた。一度、サッカーを忘れてリセットしたかった。
それでも時間さえあれば、都内で仲間とフットサルをしたり、どうしてもサッカーが好きな気持ちは抑えられなかった。もちろん、そんなプライベートなひとときであっても負けず嫌いな性格は出る。点を取られたりでもしたら我慢ならない(笑)。
リーグ戦でもそう。特に負けたくないと思うのは、相手FWの選手に対して。パッと思い浮かぶのは、ボルシア・ドルトムントのセール・ギラシや、バイエルン・ミュンヘンのハリー・ケイン。彼らのようなトップクラスのプレーヤーと対峙すると、意外なことにビビるどころか、ワクワクが止まらない。試合中は基本的に〝楽しい〟と思いながら、抑えにかかる。
もちろん、DFというポジションをやる上で、相手FWとの駆け引きの失敗というのは失点を意味する。仮に負けてしまった場合、チームとしては楽しいなどと言っていられない状況に。だから1対1の勝負にはこだわりつつも、さまざまなオプションも考えている。
「次はこのタイミングで先に体をぶつけよう」「その相手だけに固執して競りにいくのではなく、味方と協力しよう」だとか。あくまで僕の役割は、ゴールを割られないようにすることだからだ。
もうひとり、相手アタッカーでコイツにだけは......と思うのは、(堂安)律。僕はポジション的に直接対峙することはないけど、やっぱり見ていてうまい。かつてはオランダのフローニンゲンで、そして日本代表でも一緒に長くやってきているので、律のことはよくわかっている。
だからこそ今季の第12節(昨年11月30日)、アウェーのフライブルク戦、律とマッチアップして散々やられていた左SBのウルリッヒには、第29節(今年4月12日)のホームゲームの前、練習の段階から何度も注意した。
「左サイドでやらせるな、コースを切れ。律がボールを持った瞬間、とにかく潰せ」と。でも、結局得点を決められてしまった。律は敵に回すとホント厄介だ。
■同じDFで尊敬する選手はたまに聞かれることがある。「ライバルは誰ですか」と。小さい頃から、「コイツには負けたくない。コイツを必ず追い越してみせる」とか、そういった対象はいなかったし、考えたこともなかった。
小3のときから川崎フロンターレ・アカデミーの同期で一緒にトップチームへ入ったMF三好康児も、ライバルだったかというとそうではなかった。彼は中高時代から、すでに〝雲の上の存在〟。
常にひとつ上のカテゴリーで活躍していたし、日本代表にも各年代で招集されていたので、素直に「コイツ、すげぇ」と思っていた。トップチームでも、僕の場合はまったく出場機会がなかったけど、三好はプロ1年目から試合に出ていた。
僕はU-20W杯(2017年)出場権をかけたAFC U-19選手権(16年)に呼ばれたときも、準決勝のベトナム戦までは、やっぱりベンチを温める日々だった。当時の主力CBはトミ(冨安健洋)と中山雄太。彼らが絶対的なスタメンだった。
トミについては、アンダー世代に始まり、A代表でも一緒で、隣同士でCBをやったこともあるだけに、実力は十分すぎるほどよく知っている。なんといっても、彼はプレミアリーグの名門・アーセナルの選手。確実に言えるのは、僕よりもいい選手で、トミからは多くのことを学んだし、それが今の自分にも生きているということだ。
トミに追いつきたい、追い越したいという思いも実はない。というか、小さい頃から誰か目標やライバルを立てて、その選手目指して頑張るというスタンスではなかった。他者への対抗心やねたみを原動力にしたことは一度もない。今でも、日本代表の仲間が活躍するニュースを聞けば、ただ純粋にうれしいし、喜ぶだけだ。
あくまで、僕は僕。自分のサッカーキャリアとしてどこまでいけるのか、そこへの期待、興味しかない。他者を気にする暇があったら、自分がもっとうまくなるためにはどうすべきか考える。そしてトレーニングをする。
もしも「あの人はいいなぁ」とか「どうしてあいつは」とうらやむ気持ちがあるのであれば、まずは自分と向き合って目の前の課題を見つけるべきだ。
板倉 滉
構成・文/高橋史門 写真/Taisei Iwamoto
記事提供元:週プレNEWS
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