軟鉄アイアンの素材「S20C」と「S25C」はどう違う? 打感の柔らかさは何で決まるのか?【ギアの疑問を解決!】
ギアのいろいろな疑問に答える新シリーズ。今回は軟鉄の代表素材である「S20C」と「S25C」の違いを解説し、軟鉄アイアンの魅力である打感を決める要素を紹介する。
■S20CとS25Cの違いとは?
軟鉄鍛造アイアンの素材としてよく耳にするのが、「S20C」と「S25C」である。これらは炭素鋼の一種で、「S20C」は炭素量が約0.20%、「S25C」は約0.25%となる。炭素量が少ないほうが、より柔らかい素材になる。いずれも軟鉄鍛造らしい良い打感が特徴だが、素材が柔らかくなると、打感はよりソフトで喰いつくような打感を得やすい。
2024年に発売された『スリクソンZXi7』はより軟らかい「S15C」を採用したことで話題になっている。また、純鉄と呼ばれる純度99.9%以上の鉄も存在する。純鉄はさらに柔らかく、打感も良いと言われているが、耐久性や加工性などの面で採用例は少ない(三浦技研が『TC-101純鉄』アイアンに使用)。
■アイアン素材のおさらいしよう
アイアンの素材は軟鉄だけではない。以下に代表的な素材を整理する。
【ステンレス鋼】「SUS630」や「17-4PH」といった素材が代表的。軟鉄に比べて硬く、錆びにくいのが特徴。複雑な形状を作りやすい鋳造製法で多用され、ポケットキャビティや中空アイアンなど複雑な構造のモデルに採用されることが多い。打感は軟鉄に比べると硬質で、弾き感の強いものが多い。
【マレージング鋼】高い強度と弾力性を持つ。フェース面に採用され、飛距離性能を向上させる。FWやUTにも多く採用される。打感は硬めだが、反発力の高さと薄肉にしやすい点がメリット。
【クロムモリブデン鋼】クロムとモリブデンを含む合金鋼で、マレージング鋼同様、高い強度と靱性(しなやかさ)を両立した素材。
これらの素材は、クラブの設計思想やターゲットとするゴルファーのニーズに応じて使い分けられる。軟鉄は打感を重視する上級者向け、ステンレスやマレージングは飛距離や寛容性を求めるゴルファー向けモデルに採用される傾向がある。
■打感は音で決まるのか?
打感を決定する上で大きく影響するのが「音」だ。耳栓をして球を打つと、打感の違いを感じ取りにくくなることは、よく知られている。心地よい音やその音の余韻を、ゴルファーは「柔らかい」と感じている。
軟鉄鍛造の打感の良さもまた、素材の柔らかさと同時に、軟鉄の音の良さも大いに影響している。またキャビティバックよりもマッスルバックのように打面裏が肉厚のほうが、良い振動が手に伝わって打感が良いと感じられる。
つまり、打感とは手に伝わる振動と打音の総合的なフィードバックによって決まる。その点でいうと、「S20C」と「S25C」の硬さの違いは確かに存在するが、それ以上にヘッド構造やフェースの肉厚、シャフトの種類などによる影響の方が大きい。
例えば、振動減衰性に優れたバッジをバックフェースに搭載すれば、打感は劇的に変化する。それに比べれば、「S20C」と「S25C」の素材の違いは、ほとんど問題にならないほど「微細なニュアンス」にとどまることが多い。
良い打感を求めるなら、素材だけにこだわるのではなく、構造や全体設計を含めたトータルの性能で選ぶことが重要なのだ。
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