名匠ボブ・ボーケイの上司!? に日本人のための『VOKEY FORGED』が生まれたウェッジ哲学を詳しく聞いた【#1】
7月4日に発売を控えるタイトリスト『ボーケイフォージド』のキーマンに取材することが出来た。それが米国アクシネット社のボーケイ担当のマーケティングディレクター、コーリー・ギャラード氏だ。なんと名匠ボブ・ボーケイの上司で、日本人のために設計した新作について、ボーケイ氏の3つのウェッジ哲学についてエピソードを交えて説明。3回に分けてお届けしたい。
まずは、新しい『ボーケイフォージド』の誕生経緯と、今作の形状の変更について説明するギャラード氏。
■トップラインが薄く、刃が真っすぐに
「日本のゴルファーの方々には審美眼があるので『FORGED』、『PRECISION』、『PREMIUM』といったキーワードの揃った製品がお好きですよね。ボーケイさんも歴代様々な『フォージド』ウェッジを作ってきましたが【今回こそがベストだ!】と彼は信じています。他の国の担当者もみな『コレが欲しい…』と内心思っていて、日本の方しか手にできないので、ウェッジ好きの羨望を集めています。
歴代作で精密なCOフォージング技術を駆使して、音もフィーリングも追求してきましたが、私を含めた欲張りなゴルファーなら、テクノロジーの前に一番大事なのが【見栄えの良さ】になりますよね。『ボーケイフォージド』は『SM10』より大きめで、これは見た目に自信を与えるため。新作はトップラインが薄めになり、モダンな選手の好みもあってリーディングエッジは真っすぐにしています。
ロフトが大きいものに若干丸みがあるのは、フェースを開いた時に見栄えがよくあって欲しいから。リーディングエッジの真下は少し削った『プレウォーンソール』になっていて、芝の上を滑りやすいのも特徴です。ボーケイさん自身も若干オフセットのある顔が好きなんですが、日本のゴルファーの方の多くもそうですよね。ただ、オフセットは大きすぎると安く見えてしまう。なので、程よいオフセットが皆さんがお望みの形状ではないでしょうか」(ギャラード氏)
サイズは前作『ボーケイフォージド』とほぼ変わらないものの、トップラインの薄さと刃の丸みを取った分「若干投影面積は小さくなった」そう。そして、「よりクールなことは、この形の内側にあります。このシンプルな見た目の内部に、たくさんのことが詰まっています」と、やはりテクノロジーの話をしたがるギャラード氏。
■大きな顔でも『SM10』の最高性能を
「このユニークなプロファイル(顔の形状)を作りたいのがまず第一で、同時に『SM10』の最高性能を『ボーケイフォージド』にも求めたい。ただ、大きな顔で同じ性能を追求するのは実は非常に難しく、異素材を組み合わせる必要性が出てきます。この話しは長くなるので後で説明しますが、どれだけショットの汎用性があるのかについても、ロフト・グラインド・バンスの全てが日本人向けになっています。
つまり、『SM10』で可能なスピンの最大化が『ボーケイフォージド』でも可能です。どの国のゴルファーでも決して『スピンを減らして』とは言わないですしね。ボーケイさんには3つのウェッジ哲学があり、全てが必ずそれに沿うようできています。彼は今もデザインに大きな影響力を持ってますが、もう1人の仕事じゃなく、大きなプロジェクトになっていて、開発チームはF1チームみたいな感じですね」(同)
かなりの規模になっているR&Dチームだが、ボーケイは遊び心満載な人柄で「よくメンバーに悪戯を仕掛けています」と笑うギャラード氏。今回は鍛造製品のPRで来日したにも関わらず、鋳造の精度の高さを実例に、こんな裏話も紹介してくれた。
「鋳造技術は今すごく上がっていて、鍛造品と鋳造品の違いはチームメンバーでも本当に分からないレベル。みんな【鍛造はすごい】って思うじゃないですか? すると、ボーケイさんが悪戯してプロトタイプを作ってくる。『これ新しい鍛造なんだけど、ちょっと打ってみて』って言われて、それでみんな『やっぱり鍛造は違うね』ってしたり顔で言うと、ボーケイさんが『実はこれ鋳造だよ?』って笑うんです」(同)
■日本人に「52度にもMグラインド」を
話を本筋に戻すギャラード氏は、ボーケイのウェッジ哲学の一丁目一番地である【ショットの汎用性】について、日本人に向けた設計をこう説明する。
「ボーケイさんの第一のウェッジ哲学が【ショットの汎用性】で、それを支えるのが多様なグラインド。こう言うと多く方が「グラインドなんてテクノロジーと呼べるの?」と斜に構えますが、テクノロジーだと断言できます。なぜかと言うと、ただ単に職人が培った経験や知識というだけではなく、我々のCADデザインチームが全てのグラインド、ソール形状を完璧にするため日々改善しているからです。
そうする理由は、ゴルファーには必ず下から2本目~5本目の溝の位置に正確に当てて欲しいため。ここに当たるとスコアのための可能性のドアが開けます。低い弾道でもっとスピンがかかって正確なコントロールが可能になる。この理由から、日本人のためのグラインド、ロフト、バンスを用意しました。まず、Bグラインドは特に日本人に向けられたもので6度とバウンスも少なめ。Kグラインドは58と60度がバウンス8度と、前作より若干増やしています。
注目はMグラインドで、サンドとロブは『SM10』にもラインナップにありますが、日本特有なのは【50・52度にもMグラインドを用意したこと】。理由は52&58度が日本人に最も選ばれやすいロフトだからで、52度は日本人にたくさんのことを可能にするクラブでなければいけない。だから、52度のMグラインドは本当にもう『何でも屋さん』みたいな感じになること間違いなしです」(同)
グリーン周りで52度を使う日本のゴルファーのことも考えて、ボブ・ボーケイは先回りをしてくれていた。(続きは後日)
<ゴルフ情報ALBA Net>
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