森保ジャパンで新たな戦力が躍動。来夏のW杯へ、さらなる「改革」を!!
6月10日の試合で2ゴールを挙げた鎌田(左)と、1ゴール2アシストでMVPを獲得した久保(右)。主力として存在感を示した
6月10日、森保一監督が率いるサッカー日本代表はインドネシアを6-0の大差で下した。2026年W杯への出場は史上最速で決定済み。アジアでは畏怖されるほどの強さだ。
「日本はW杯レベルの国でした。本大会ではどの国も日本に苦しむでしょう」
インドネシア代表を率いるパトリック・クライファート監督は言った。かつて、オランダ代表としてW杯を戦った男の称賛は心地よい。
あらためて、久保建英(レアル・ソシエダ)、鎌田大地(クリスタル・パレス)はずぬけた才能を示した。例えば2点目は、ショートコーナーのワンツーから鎌田が足裏のパスで久保をフリーにし、3点目は久保がタイミングを合わせたパスを鎌田に預け、フィニッシュも見事だった。ふたりとも自然にボールとスペースを探しながら呼吸を合わせ、相手ディフェンスを無力化していた。
そもそも、これまで久保と鎌田が並び立つ時間が短すぎた。ふたりはもっと化学変化を起こせるはずで、それは強くなる余地がある証左だろう。森保ジャパンは2度目のW杯に向け、「継続と改善」となりがちだが、「最適解を出すための改革」にどんどん挑むべきだ。
「代表は強くなっていると思いますが、アジア最終予選に勝ったからといって、世界との差が縮まったかはわからない。それは(アメリカ遠征などがある)9、10、11月シリーズで、口だけでなく内容で示せたらって思います」
久保がそう言うように、常に「世界」を想定するべきだろう。アジアで通じていたものが世界でも通じるとは限らないし、システムや選手の総入れ替えもためらうべきではない。さもなければ、過去最高となる「W杯ベスト8」は無理な話だ。
「スクラップ・アンド・ビルド」、企業用語で「採算の悪い部門を整理し、新部門をつくる、または老朽化した建物を壊し、新設備に置き換える」。破壊と再生を意味するが、大胆なつくり替えをすべきだ。
多くの人が「代表チームは長年かけてつくる」と考えているが、必ずしもそうではない。代表はクラブチームのように戦術を落とし込むものではないのである。
代表=選抜で、監督の選手選考の目利きが第一。次に各選手の自立性。その上で組み合わせ、コンディション、モチベーションが問われる。即興であっても、噛み合えばそれがベストだ。
実際、日本がW杯で結果を残したのも〝急造チーム〟だった。2010年W杯ではイビチャ・オシム監督が脳梗塞で倒れた後、岡田武史監督が率いるもうまくいかず、大会直前に選手主導で戦い方を変更してベスト16と健闘。
2018年W杯ではバイド・ハリルホジッチ解任後に西野朗監督が就任して緊急的に乗り込み、ベルギーと堂々と渡り合って敗れたものの、ベスト16入りを果たしている。
森保ジャパンがシステムから見つめ直し、選手の組み合わせで最適解を探す時間は十分にある。その点、インドネシア戦の町野修斗(キール)、佐野海舟(マインツ)、瀬古歩夢(グラスホッパー)と代表経験の少なかった3人の活躍は収穫だった。
ゴールを決めて忍者ポーズを見せた町野。鎌田や久保との連係が良く、ブンデスリーガで光る得点力も見せつけた
町野はドイツのブンデスリーガで今季2桁得点を記録したが、周りを使うのがうまいストライカー。シャドーに入った久保、鎌田との親和性も高く、プレーを高め合い、タイミングをつくっていた。
正FWの上田綺世(フェイエノールト)のようなパワー、シュートの多彩さはないが、周りと補完し合える才能はアドバンテージだ。
インドネシア戦の4点目、町野は左サイドに流れてパスを受けると、冷静に中を見極めて逆サイドの森下龍矢(レギア・ワルシャワ)にクロス。ふわりとした軌道で時間をつくり、見計らった見事なアシストだった。
5点目は最終ラインの前でボールを受けた久保と呼吸を合わせ、ディフェンスの背後を取って走り込むと、出てきたパスを左足で巧妙に合わせた。
トレードマークの〝忍者ポーズ〟で印を結んだ町野は、隠形の身で日天の前に疾行する摩利支天のごとく、W杯でも戦勝の先駆けとなるか。
攻守で、持ち前の力強さと技術の高さを発揮した佐野。日本代表の中盤の要、遠藤のバックアップとして期待される
佐野もボランチとして質の高さを見せた。ブンデス6位チームの主力MFという経歴はだてではない。屈強な立ち姿だが、ポジション取りの賢さが目立つ。攻撃ではパスを受けられるように常に顔を出し、守備でははね返された後のセカンドボールも拾える。プレーの予測に優れたMFだ。
また、パス出しも丁寧で迅速。屈強な選手にありがちな雑さがない。3点目では右サイドから久保のパスをインサイドで受けると、時間をつくって再び中央に入ってきた久保へ。それが鎌田へのパスでゴールにつながったが、一連のプレーは長年の連係かと錯覚させた。
遠藤 航(リバプール)のバックアップという、懸案だった問題解決のめどがついた。コンビやトリオも組める。
DFでは、センターバックを務めた瀬古が相手の攻撃を封じた。左サイドバックでもプレー可能なのも大きな武器だ
瀬古も、センターバックとして持ち前の高さやパワーを見せた。右利きだが左足キックも豪快で、左サイドバックもできる貴重な存在。冨安健洋、町田浩樹がケガ、板倉 滉が休養で不在の中、3バックの中央で相手FWを完封し、中盤やサイドにつけるパスで存在感を発揮した。
6月5日のオーストラリア戦では失点に絡んだが、ディフェンスは失敗を糧にすべきで、インドネシア戦で挽回した点は評価に値するだろう。
森保ジャパンは、選手もシステムも新たな〝血〟を入れるべきだ。システムも3バックが定番になっているが、本大会では4バックを推奨する。
3バックの〝端っこ〟のウイングバックに、三笘 薫(ブライトン)や中村敬斗(スタッド・ランス)、堂安 律(フライブルク)といったプレミアリーグ、リーグアン、ブンデスで2桁以上の得点を挙げるサイドアタッカーを回すのは、理にかなっていない。
大会まで1年、森保ジャパンは破壊と再生を繰り返すべきだ。
取材・文/小宮良之 写真/アフロ 撮影/佐野美樹
記事提供元:週プレNEWS
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