QTランク“最下位”302位から描く青写真 ケガで苦しんだプロ生活…24歳・荒川怜郁に差す光
<ニチレイレディス 初日◇20日◇袖ヶ浦カンツリークラブ・新袖コース(千葉県)◇6594ヤード・パー72>
昨年QTを受けた選手のなかで、最下位となるQTランク302位には理由がある。プロ3年目の24歳・荒川怜郁は、ゴルフができるよろこびを噛みしめながら、今年の目標まで焦らず、歩みを進めている。
主催者推薦選考会を勝ち抜き、今年3試合目となった試合の初日は今季ベストの「70」。2アンダー・20位タイという結果には、「ずっといいゴルフをしていたけど、(後半)5番のティショットが、行ってはダメな右に行ってしまいダボ。ボギーで抑えられたのにダボにしたのは悔しいです」と、ちょっぴり後悔も残す。ただ、そこまでに積み上げた4つのバーディは大きく、「気楽」にその後もプレーを続けた。
昨年の成績を見ると、予選落ちした9月の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」以降、出場がない。その原因は、今もテーピングを巻いている右手首にある。「(荷物を詰める)キャリーケースが大きいんですけど、それを“ガバッ”と取ったら手首を痛めてしまって…。そのうち、ゴルフをしている時も痛くなりはじめた」。秋口に思わぬアクシデントが発生。クラブを構え、バックスイングをしようと手首を少し上げただけで激痛が走るようになっていった。
もともと、その年の夏ごろには違和感を覚えていた箇所だっただけに、「そのときに休む判断ができていたらもっと早く治っていたかも」と、自らの対応を悔やんだこともある。そこからも休んでは練習をし、また痛めるという日々。このときには、照準は年末のQTに置いていたが、その本番を前に再開した練習でペースを上げ過ぎてしまい、ここでも再発してしまった。
結局、11月に裾野カンツリー倶楽部 (静岡県)で受けた1次QTは、1球だけ打って棄権した。ひとまずQTランクさえ持っていれば、翌年は推薦で最大8試合まで試合に出場することもできるからだ(QT回避だと最大4試合まで)。医者からくだされた診断は『TFCC損傷』。手関節部への強い衝撃や負荷が繰り返されることで発症し、野球やテニス、ゴルフなど手首に負担がかかる道具を使うスポーツが原因になることが多い、いわば“職業病”のひとつでもある。
今季は地元・沖縄で開催の開幕戦「ダイキン・オーキッドレディス」に推薦出場しスタートした。本格的な練習再開は、その2週間ほど前だったという。ブレーキを踏みながら、治療と休養を続け、今年5月ごろからは不安なくクラブを振ることができている。「(4月の)全米女子オープン最終予選もエントリーできたんですけど、会場に向かうため家を出た時に、ふと『出たらダメだ』と思って、帰って休みました」。石橋を叩いて渡るような経験もしたが、これまでと同じ轍を踏むわけにはいかないという判断が、今につながっている。
今週の試合が終わると、ツアーは第1回リランキングを実施。そこでの好発進とあって、“一発逆転”で夏場の優先出場順位が大きく上がることにも期待が持てる。ただ、本人は焦らずじっくりと。「復帰したてのころは『80』とか、『85』とか、めっちゃ打っていたんです。ようやくいい感じに戻ってきました」。あくまでも、ターゲットにしているのは今年のQT。そこへ向け、今は“助走”の期間ともいえる。
「休んでいる間に毒が抜けたんです。今はフラットな気持ちでコースを回れています。『いいんじゃない、失敗しても』って許せるようになりました。今はゴルフができることがうれしい。ゴルフができているんだからいいじゃんみたいな感じかも」
この手首のケガは、プロ入り後、2度目の大きな故障だった。ルーキーイヤーを過ごしていた2023年5月には、トレーニング中に20キロのおもりを誤って左足の親指に落下させ、骨折。このときも長期離脱を余儀なくされた。今は、「とにかくケガをしないように」というのも、大事な目標だ。
クラブを握れなかった期間は、走り込みなどトレーニングに時間を費やした。「ちょっぴり足が速くなったんです。なんか楽しくなっちゃって。速くない? とか思ったり」。こう笑いながら話す成果が、その“証”だ。明るい雰囲気は、デビュー直後から感じさせてきた持ち味のひとつ。「せめて試合中にケガをしたいです。もうちょっとかっこいい理由で…。あ、もちろん、ケガをしないのが一番ですけど」という言葉には、思わず笑わされてしまった。
「みんなよりも試合に出ていないのであまり期待はせず。できる限りのことはやって、そのあと結果を受け入れます。このあとも出られる試合で頑張って、課題を見つけて直して、QTを通って。来年戻ってこられるように」。苦しい時間を、開花への準備期間にしたい。(文・間宮輝憲)
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