日本人初のウエルター級世界王座奪取ならず。佐々木尽が壮絶な5回KO負けでノーマンJr.が2度目の防衛に成功【Lemino BOXING】

WBOウエルター級タイトルマッチ「NTTドコモ Presents Lemino BOXING」が6月19日、東京・大田区総合体育館で行われ、同級2位の挑戦者佐々木尽(八王子中屋)が王者ブライアン・ノーマンJr.(アメリカ)に5回46秒KO負け。日本人初のウエルター級世界王者誕生はならなかった。ノーマンJr.は2度目の防衛に成功した。
勝って日本の歴史を変える──。そう言葉にし続けてきた佐々木が「人生のすべて」を懸けて“スーパースター候補”のノーマンJr.に挑んだ。国内で35年ぶりとなるウエルター級世界タイトルマッチはスタートから大きく動いた。
パワーが売りの佐々木は左フックを必殺ブローとしているが、この日は上体をやや起こした姿勢からいきなりジャブ、右ストレートを思い切り打ち込む立ち上がり。しかし、動きがしなやかでスピードのあるノーマンを慌てさせることはできない。開始からわずか40秒ほど、ノーマンが佐々木の右フックを外して左フックを振り抜くと、佐々木がキャンバスに転がった。
立ち上がった佐々木は失点を挽回しようと前に出たが、今度は左フックの打ち終わりに再び左をもらい、このラウンド2度目のダウンを喫する。アリーナの観客が言葉を失い、試合は1回で終わってしまうかと思われたが、佐々木はこのあとよく手を出してラウンド終了のゴングを聞いた。
ここから逆転を目指す佐々木。守って相手に打たせる時間、自分がアグレッシブに攻める時間を使い分け、ジャブ、左フック、ボディ打ちとフルスイングでチャンピオンに迫った。ところがノーマンJr.は佐々木のパワフルなアタックにも慌てることはなく、パンチを上下に散らし、特にガードの上からねじ込むような右フックで佐々木にダメージを与えていく。
迎えた5回、佐々木がボディジャブを打ってパンチを引いた瞬間だった。ノーマンJr.は佐々木が一瞬緩んでガードが下がった瞬間を見逃さず左フックを振り抜くと、これを食らった佐々木が背中からキャンバスに大の字に。カウント中に青コーナーが棄権を申し出て佐々木のKO負けが決まった。
佐々木は起き上がれずに担架でリングから退場、そのまま大事を取って病院へ向かった。23歳の佐々木は世界初挑戦に失敗。戦績は22戦19勝(17KO)1分2敗となった。
一方、日本での防衛戦に快勝して戦績を30戦28勝(22KO)2無効試合としたノーマンJr.は、試合後の記者会見で「素晴らしい気持ちだ。自分がやるべきことをやって勝つことができた」とご満悦の表情。佐々木の打ち終わりの防御が甘くなると事前に分析し、試合が始まると「実際にスキが見つかった」と話し、初回にダウンを2回取ったあとは冷静に戦うことを心掛けたという。
佐々木について「彼が日本のトップの選手であるということが分かった。1回に2度ダウンを奪ったにもかかわらず彼は立ってきた。それが彼の強さだ」と挑戦者を称えることも忘れなかった。今後について問われた23歳のチャンピオンは、「世界中で世界チャンピオンとは何かを見せていきたい」と目を輝かせていた。
文=渋谷 淳
【制作・編集:Blue Star Productions】

記事提供元:Lemino ニュース
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