「アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓」迫害を逃れて渡米する冒頭シーンと著名人コメント公開
1948年に祖国アルメニアへ戻ったアメリカ人が、無実の罪で収監されながらも希望を失わずに生きていく姿を描いたマイケル・グールジャン監督・主演作「アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓」が、TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開中。冒頭シーンの映像および著名人のコメントが到着した。
到着したシーンは1915年。オスマン帝国政府によるアルメニア人の迫害を逃れるため、幼いチャーリーはトランクに身を隠し、一人でアメリカへ渡る。「この先つらいことがあっても、その笑顔を忘れるんじゃないよ。私たちは心の中にいる。いつか故郷に戻っておいで」という母の言葉が、異国で生きるうえで支えとなった。
それから30年、チャーリーはソ連統治下のアルメニアへ帰還。そして、ソ連軍司令官の妻であり街で見失った息子を探していたソナを助ける。ソナはチャーリーがアメリカ人だと知り、親しみをもって接するが、その出会いがチャーリーの運命を狂わせる──。
〈コメント〉
わけの分からない罪で投獄されたチャーリーは自分が知らないふるさとアルメニアへの郷愁を募らせ、独房の格子越しに覗き見する夫婦の日常から不思議な安堵感を得る。悲惨な状況を意外にユーモラスに描いていますが、過酷な現実の余韻は残ります。
──ピーター・バラカン
自分の住んでいるカリフォルニアにはアルメニア難民の子孫が大勢住んでいます。彼らは「ノアの箱舟が着いたアララト山はアルメニアにあるんだぞ!」と胸を張ります。そんなアルメニア系アメリカ人が作った『アメリカッチ』は祖国の悲惨な歴史についての映画です。でも、楽しく心温まるコメディなんです。笑いで悲しみを乗り越えるために。
──町山智浩(映画評論家)
現代は分断の時代とされるが、中東の少数民族アルメニア人は、20世紀から二つの帝国、自由主義と社会主義といった分断の只中に置かれた。実際にあった移住運動を背景にした心温まる人間ドラマ。
──吉村貴之(早稲田大学ロシア東欧研究所招聘研究員)
どんなに辛い目に遭おうとも、他者を見つめて幸せを願うことを忘れてはいけない。
主人公チャーリーの心の目を通して、平和を作り上げるのは私たち個人の考え方ひとつなのだと気付かされた。
アナタの些細な思いやりが、誰かのコウノトリになるかもしれない。
なんて素敵な発想だろうか。
チャーリーの心を持ちたいと思った。
──伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)
刑務所の鉄格子窓から見える部屋が、祖国へ戻ったアメリカッチのアイデンティティーを育んでいく。過酷な状況下でもルーツを求め続ける男の物語を、驚くほどの温かさで描いたマイケル・グールジャンが、映画作家としても俳優としても素晴らしすぎる。
──杉谷伸子(映画コラムニスト)
Story
オスマン帝国でのアルメニア人迫害を逃れるため、幼少期にアメリカへ渡ったチャーリー。1948年、自身のルーツを知るためソ連統治下の祖国に戻るが、不当に逮捕されてしまう。そして、牢獄の格子越しに向かいのアパートに暮らす夫婦を観察し、彼らと接しているように振る舞うことが、辛い日々の中での楽しみとなった。ところが夫婦仲がこじれて部屋には夫だけ残され、時を同じくしてチャーリーのシベリア行きが決定。移送が迫る中、チャーリーの夫婦仲直り作戦が始まるが……。
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配給:彩プロ
記事提供元:キネマ旬報WEB
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