「ガラケーのようなスマホ」はなぜ少ない?ハイエンド化の裏で安価なスマホが減る理由
スマホ市場で「シンプルで安価なスマホ」が徐々に姿を消しつつあります。高性能なカメラや大容量ストレージを備えたハイエンドモデルが次々と登場し、価格も年々上昇傾向。「なぜ昔のような手頃なスマホが減ってしまったのか?」「ガラケー程度の性能で十分なのに、なぜスマホは高くなるばかりなのか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、スマートフォンの高価格化や高機能化の背景、そして「ガラケーのようなスマホ」が少なくなった理由について、わかりやすく解説していきます。

大容量・高価格帯のスマホが増え続けている理由
スマホ市場に大容量ストレージや高価格帯モデルのラインナップが増えている背景に、スマホが単なる「電話」や「メール」の道具から、写真や動画撮影、ゲーム、電子決済など多機能なデバイスへと進化したことが挙げられます。
より高品質なカメラ性能やチップ性能を求めるユーザーの需要
「シンプルで安価なスマホ」を求める人もいますが、いま新しいスマホを求めるユーザーの多くは、より高品質なカメラ機能や大容量ストレージを求める傾向にあります。SNSや動画共有サイトの普及もあり、これまでに比べて、ユーザーは高品質な写真や動画の撮影を求めるように。さらに撮影枚数そのものも増えているため、端末のストレージも大きいものである必要があります。

たとえばこちらは筆者が「メインカメラは2億画素」という性能を持つGalaxy S25 Ultraで撮影した写真。素人でも簡単に一眼レフカメラ並みの写真が撮影できます。
Galaxy S25 Ultraよりもカメラ性能が若干劣るiPhone 16 Proで撮影した映画も複数存在しており、すでにスマホはプロでもカメラ代わりに撮影する時代に突入しています。
あくまで一例ですが、使用方法や端末によっては写真1枚の平均サイズが3MBを超え、4K動画は30秒で100MB以上になることもあるようです。そのため、最近では64GBや128GBなど低容量のスマホは相対的に存在感が薄れています。
なお、カメラ性能と同様に「チップ性能」を求めるユーザーも増加しています。スマホで撮影した写真や動画の編集を高度なスマホアプリを用いて使うユーザーも増えているため、スマホ本体の処理性能も高いレベルが求められています。またオープンワールドのRPGゲームがスマホで遊べるようになったこともあり、スマホをゲーム機のように使うユーザーも増加傾向にあります。
長期的な使用のトレンド
これまで、1年~2年といった短期でスマホを買い替えるのは一般的なことでしたが、近年は4年以上1つの端末を使い続けるのも決して珍しいことではなくなりつつあります。
たとえば内閣府が2025年3月に実施した消費動向調査によると、携帯電話の平均使用年数は4.3年。10年前の2015年3月は3.6年、20年前の2005年3月は2.4年と、耐用年数がどんどん長くなっていることがわかります。

スマホは使い続けていれば経年劣化していくものですが、たとえばAppleでは、バッテリーが劣化した場合の交換サービスも受け付けています。
さらにスマホのOSのサポートも伸びており、Google Pixelなどは最大7年のOSアップデート保証期間を設けています。
このため、メーカーは「将来性」を考慮し、より大きなストレージを提供することで、長期間の使用に対応できる端末をリリースする傾向にあります。

スマホは使っていくと写真や動画、ゲームなどのアプリがどんどん蓄積していき、小さい容量のスマホの場合、4年経ったあとは容量不足になりスマホの動作が遅くなることもあります。
スマホのプレミアム化と分割払いの浸透
このようにカメラ性能やチップ性能の向上によって、ハイエンドスマホはプレミアムな端末になりつつあります。そして価格帯そのものも上昇しているため、分割払いなどのオプションが普及し、消費者は高価格帯のスマホを分割で購入しやすくなっています。このため、消費者は実際の価格に敏感ではなくなり、結果として高価格帯のスマホがより一般的になっています。
分割払いの普及は国内だけでなく、海外でも進んでいます。たとえばインドの場合、主なスマホの価格帯は10,000 ルピーから20,000 ルピー(※2021年12月時点)。この価格帯のスマホが47%と市場の約半数を占めています。
2022 年の平均月収が 23,000 ルピーのため、インドの消費者にとってスマホは高額ですが、消費者の間では利子のつかない分割払い「EMI(Equated Monthly Installment)」もすでに浸透しています。よってインドの消費者の間では2台目以降のスマホを購入・買い替えする際は、EMIを活用したアップグレードが定着傾向にあり、流通するスマホの価格帯はさらに上昇している様子です。
安価なスマホが減少している理由は?
先述してきた通り、スマホが高額化する一方で、国内ではキャリアの「購入プログラム」が充実しています。またインドの例の通り、国外でも「EMI」を利用できます。総じて、たとえ端末が20万円を超えたとしても一括で支払う必要がなく、手に入れやすくなっているという事実もあります。
ではスマホには本当に「ハイスペックなカメラ」や「1TBの容量」が必要なのでしょうか?
「カメラやチップへの要求スペックが高止まりしている」とご紹介しましたが、この状況がすべての消費者にとって嬉しいこととは限りません。

日常の写真撮影(家族写真や旅行のスナップショットなど)には、ミドルレンジのカメラ(1,200万〜2,400万画素程度)で十分です。SNSやクラウドにアップロードすることを考えると、過剰な解像度は不要な場合もあります。
また、高解像度の写真や4K/8K動画をたくさん撮る人や、音楽、映画、電子書籍などを大量にダウンロードしてオフラインで使う人でない限り、大容量のストレージは必ずしも必要ではないでしょう。
スマホへの要求スペックが世界的に見ても高まる一方なのは間違いなく、今後、スマホへの生成AI機能の搭載が一般化するとそのスペックはさらに上昇するでしょう。
一方でそうしたトレンドとは真逆の「余計な機能をすべてそぎ落とし、ガラケー並みの安価な価格帯で買える端末」には、いわばスマホとはまったく異なる通信端末として、いまでも存在する意義があるのかもしれません。
※サムネイル画像は(Image:「ヨドバシ・ドット・コム」より引用)
記事提供元:スマホライフPLUS
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