宮本勝昌が中尺パターを伸ばして短く持つ理由とは? アイアンはコンボセット化、ウェッジは1本11万円!
シニアツアー第3戦「すまいーだカップ シニアゴルフトーナメント」で今季初優勝を挙げた宮本勝昌。クラブセッティングは昨年とほぼ同じだが、すまいーだカップの前週に出場した「全米プロシニア」(5月22〜25日、米メリーランド州・コングレッショナルCC)から、クラブを2本変更していた。
昨年途中から4I~PWはブリヂストンの軟鉄鍛造アイアン『241CB』を愛用。それを全米プロシニアでは4番アイアンのみを『242CB+』に換えた。
「4番アイアンの飛距離は210ヤードくらい。それがアゲインストで200ヤードに届かず、190ヤードしか飛ばない現象が春先に続いたんですよね。一回『241CB』のロフトを立てたりもしたんですけど、そうしたら昔の『J’s』みたいにグースネックになって、これは違うかなと(笑)。そこで『242CB+』を試してみたら良くて、楽になりました」
単一素材の『241CB』の4番アイアンはロフト22度。それに対して、『242CB+』はロフト21度と1度立っている。さらに、ヘッド内部がポケット構造になっており、浮いた重量をソール部にタングステンウェイトを配することで低重心化。ボールが上がりやすく設計されている。
4番アイアンをやさしいヘッドに変更したことで、「5ヤードくらい」飛距離が出るようになり、アゲインストで200ヤードに届かない現象は解消された。宮本のようにアイアンを『コンボセット』にするのは現代では珍しくない。ブリヂストンのクラブを使う選手では、ツアー1勝の佐藤心結が5I、6Iをより飛距離の出る『258CBP』に、7I~PWを『241CB』のコンボにして使う。阿部未悠や鶴岡果恋も一番上の番手のみ『258CBP』を入れている。
続けて、宮本はコンボセットの今後についても言及。「5番アイアンが『242CB+』になるとか、6番アイアンまで『242CB+』になる可能性はありますね」。モデルが切り替わると、その境目は飛距離の階段が少し空くことになる。それでも「今のクラブセッティングはどっかが空くんです。誰しもその現象はある。どこで妥協するかです」と、割り切っている。
大会2日目には10バーディ・ボギーなしのゴルフで、トーナメントレコードの「62」を叩き出した宮本。しかしショットの調子は決して良くなかった。「ミドルパットがたくさん決まって10個もバーディを取れたと思う」というパター、スコッティ・キャメロン『ファントム11 プロトタイプ』も全米プロシニアから投入。「系統は一緒です」と中尺のマレット型は同じだが、長さを36インチから37インチに「1インチ伸ばした」。
参考にしたのは2018年、19年のレギュラーツアー賞金王の今平周吾。宮本と同じように中尺のマレットを好んで使う。「周吾がいつも短く持つんですけど、グリップエンドを余らすようにしたんです。持っている感覚は36インチのときと変わらないです」。
では、37インチを短く握ることにどんなメリットがあるのだろうか。「僕は手を動かしたい人だから、ラインに乗せやすい感覚がちょっと出たんです。周吾もそうだけど、ハンドファースト気味に打ちたい人はイメージが出ると思います」。手元側に少し重量があることで、カウンターバランスの効果でヘッドを動かしやすくなる。「大貢献ですね。もうパッティングに救われた3日間でした」。最終日には2.5メートルのパーパットを2度沈めるなど、パター変更を勝利につなげた。
安定したアプローチをみせるウェッジは「ずっと無限」。52度と58度の2本はブリヂストンのカスタム専用モデル『B-Limited BITING SPINフルミルド』、通称『無限ウェッジ』を使用している。これはF1をはじめとするモータースポーツ用のエンジンを設計・開発・供給しているメーカー『無限(株式会社 M-TEC)』とのコラボで、エンジンの加工技術で培ったミクロンレベルの精密な技術をウェッジに用いて、スピン性能を極限まで高めた。
さらに、巧みな技術を持つ職人たちが手作業で丁寧に仕上げるため、値段は1本で税込11万2千円と、かなりの高級品だ。にも関わらず継続的に売れ続けている。「圧倒的にスピンが入ります。だからそこは助かっています」と宮本はグリーン周りでのパフォーマンスに満足している。
昨年途中からボールは打感がしっかりしていてロングショットで風に強い『TOUR B X』から、打感が柔らかくアプローチでよりスピンがかかる『TOUR B XS』にチェンジ。これから挑む海外シニアメジャーや、米シニアツアー参戦を意識してのことだ。「スターツシニアはまた『TOUR B X』に戻っているかもしれません。やっぱり飛ぶのでね。でもアメリカは難しいです。異常にグリーンが硬いですから。『TOUR B XS』の方がめくれるし止まる」。
前週は国内メジャー「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」の解説を務め、今週はディフェンディングチャンピオンとして13日に開幕する「スターツシニア」に出場する。すまいーだカップの優勝会見では「自分の状態が良くないなかで、たくさんヒントも見つけて、優勝というご褒美もいただいた。明日からの練習の励みになる。次の試合こそいい状態で迎えられるように、モチベーションはさらに高まります」と笑顔で話していた。
そして、スターツシニアが終わると、「全米シニアオープン」(6月26~29日、米コロラド州・ブロードムーアGC)が控える。昨年大会は藤田寛之がプレーオフに敗れて2位、宮本は38位タイだった。今年の海外女子メジャー「シェブロン選手権」を制した西郷真央に続いて、日本シニア勢のメジャー制覇にも期待したい。
【宮本勝昌の優勝クラブセッティング】
1W:ブリヂストンB2 HT プロトタイプ(9.5度/Tour AD VF-7X)
3W:テーラーメイド ステルスプラス(15度/Tour AD CQ-7X)
5W:テーラーメイド ステルスプラス(19度/Tour AD CQ-8X)
3U:HONMA TW-UT(N.S.PRO MODUS3 TOUR125 X)
4I:ブリヂストン242CB+(N.S.PRO MODUS3 TOUR125 X)
5I~PW:ブリヂストン241CB(N.S.PRO MODUS3 TOUR125 X)
52,58度:ブリヂストン B-Limited BITING SPINフルミルド(N.S.PRO MODUS3 TOUR125 X)
PT:スコッティ・キャメロン ファントム11 プロトタイプ(37インチ)
BALL:TOUR B XS
◇ ◇ ◇
●スイング軌道でドライバーの打痕の位置が変わるって本当? 関連記事の【渋野日向子と西郷真央のドライバーの打痕は、どうして位置が違うの?】をチェックしよう。
<ゴルフ情報ALBA Net>
記事提供元:ゴルフ情報ALBA Net
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。