山本、ヤクルト二軍球場"戸田"に行く【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第169回
◼️家から戸田まで
小学生の遠足以来でしょうか。前日から気分が昂(たかぶ)り、眠りの浅いまま朝を迎えるなんて。不安定な気候が続いていましたが、本日は快晴。スマホを開き、球場のある埼玉県戸田市の最高気温を確認すると、24度と表示されています。午前9時の時点で、すでに20度を超えていました。
「これは暑くなるぞ」
戸田に足を運ぶのは2016年以来、なんと9年ぶりです。
家からJR埼京線に乗り一路北へ。途中で赤羽駅に停車。昨今のヤクルトファンはみな「あかはね」と読み間違えてしまうという話があるとかないとか......。
車窓を流れる景色は、赤羽駅を過ぎたあたりから徐々に長閑(のどか)さが増します。眩しい新緑と、清涼な空気。五月晴れの空から降り注ぐ日光は荒川の水面をきらきらと照らします。なんという野球日和なんでしょう! なんて戸田日和なんでしょう!
午前11時頃。武蔵浦和駅着。迷わずコンビニへ向かいます。というのも、9年前のおぼろげな記憶ではありますが、「戸田はとにかく暑くて、光を遮るものがない」「球場に自販機はあるけれど、売り切れも多かった」。そんな記憶があったからです。コンビニでは最高レベルの日焼け止めと、大きめのペットボトルに入った飲料水を買いました。
日焼け対策に帽子も必須です。
駅からはバスに乗る方が多いようです。2番乗り場から国際興業バス「武浦01」下笹目行きに乗り、「美谷本小学校入口」で降り徒歩10分。乗車料金は250円。バスはわりと頻繁に来ます。駅から球場まで20〜30分くらいでしょうか。
今回は、連載の担当さんと一緒にタクシーに乗りました。料金は1,700円でしたから、複数人で行かれる方は、相乗りをするのも手かもしれません。
しばらくすると土手が見えてきます。こちらが戸田名物の土手。戸田球場は荒川河川敷の国有地内にあり、ヤクルト球団が国から用地を借用し運営している球場です。1976年に建設され翌77年から現在まで、練習場やファームの本拠地として使用されてきましたが、まもなく二軍球場としての役割を終えることが決まっています。
大きな理由は施設全体の老朽化と、手狭な観客席。2019年には豪雨で球場が水没し使用不能になったことも。
茨城県守谷市に建設される新施設は2027年からの利用が予定されていますから、戸田にはあと何回来られるのでしょう。ほんの少し寂しさが込み上げます。
◼️戸田球場に到着
午前11時20分球場着。入口には開門を待つファンの方々が20人ほどいました。今日の戸田ではイースタン・リーグ公式戦、楽天との一戦が12時30分から行われる予定です。チケットはインターネットから購入可能で、平日ならネット裏のS席が1,300円(土日は1,700円)、他の席も500円〜1,000円ほど。
開門すると、右手の視界に球場を捉えながら、直進してバックネット裏の座席へと向かいます。球場からは打球や捕球の音、選手の声が響いてきて、気分は最高潮に。道中にある電柱には、こんな張り紙が。
電柱に貼ってあった注意書き。
何を隠そう戸田球場はプロが利用する球場とは思えないほど、選手との距離が近いのです。近いというより、「動線がほぼ被っている」とでも言いましょうか(笑)。
他の二軍球場に赴いたこともありますが、戸田は文字通り「目の前」に「憧れの選手がいる」のです。目の前で練習用の バッティングケージを運んでいるのはベテラン川端慎吾選手です。
選手もファンも、この道を通ります。
横を見ると、隙間からはストレッチを行う武岡龍世選手の姿も見えたり。
今回はネット裏正面にある2階席に陣取ります。以前は簡易的な網だけだった天井も(記憶違いだったらごめんなさい)、しっかりした鉄骨の屋根がついて、ファウルボールのみならず、太陽光からも、しっかりと守ってくれます。
座席の左手、河原の土手からは心地よい風が吹き抜けていきます。日陰にいると風が本当に気持ちいい。都心から30分あまりで、こんなにも開放的な空間が広がっていること。至近距離で好きなチームの選手を間近に感じられること。これこそ戸田の魅力です。
フェンス越しにグラウンドを見おろすと、一塁側のベンチ前でヤクルトの選手たちがアップを始めています。川端選手は先日トレードで西武から加入した山野辺翔選手と組んでストレッチ中。観客席と違って、グラウンド内は遮るものがなく、太陽が選手たちへと降り注いでいます。明るい芝の色があまりに眩しくて、思わず目を細めます。
アップ中のヤクルトの選手。それを見ている私。
11時45分頃。スワローズのノックが始まります。
観客席にいても、選手同士の会話や息遣いまで聞こえてきます。この頃になるとギャラリーも増え、戸田に訪れるお客さんが「試合観戦」だけではなく、「選手を見にきている」ことがわかります。
一軍の球場と違って、売店に並ぶ美味しそうなグルメや、生ビールもありません。席に座って持参したお弁当を食べる人、お目当ての選手を熱心にカメラに収める人。ゆるりとした昼下がりの空気の中で、ファンの皆さんがそれぞれの過ごし方をされていたのが印象的でした。
そういえば、「自販機売り切れてるのでは問題」ですが、チェックしたところすべての商品、在庫バッチリでした。関係者のみなさん、ありがとうございます。とはいえ自販機はこのひとつだけですし、戸田の夏は厳しいですから、皆さんも念のため飲み物を持参することをお勧めします。
試合が始まる前ではありますが、続きはまた来週。戸田ならではの試合中の出来事や、観戦後の楽しみについてもお届けしようと思います。
それではまた!
戸田球場にある自動販売機。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
記事提供元:週プレNEWS
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