新鋭・滝野弘仁監督が“土地の記憶と創作”を描く「くまをまつ」、予告編公開
新鋭・滝野弘仁監督が長編デビュー作として、脚本家と少年が《土地の記憶》と《創作》の交錯した不思議なひと夏を体験していくさまを描き、第37回東京国際映画祭NIPPON CINEMA NOWに出品された「くまをまつ」が、6月7日(土)よりポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。予告編(「とてつもなく大きな」「とおぼえ」の川添彩監督が制作)が到着した。
脚本家のややこは、昨年死んだ祖父・隆二郎の古民家に滞在し、彼の遺した日記を題材に新作を執筆している。そうした中、姉の仕事の都合で、夏の間だけ甥のタカシを預かることに。
それまで交流のなかった2人だが、ややこはタカシを昔の自分と重ね、脚本に取り入れようとする。そんな思惑を知らないタカシは、夜中の“黒い影”や謎めいた青年、ややこの元恋人との出会いを経験していく。
やがて夏の終わりに、タカシは石切場の奥で隆二郎の古い記憶に触れる。そしてややこは、創作を通して自らの“罪”と向き合うことになる──。
宮藤官九郎、甫木元空、今泉力哉らの作品で助監督を務めてきた滝野弘仁が、出身地である石川県小松市の古民家と石切場を舞台に描く本作。ややこ役を濱口竜介監督作「親密さ」で印象を残した平野鈴、タカシ役を映画初出演の渋谷いる太が務め、「雨の中の慾情」の中村映里子らが共演する。
創ること、傷つくこと、それでも生きること。幼少期の記憶、そして生まれる前の記憶。あらゆる人々の生きる時間と場所を呑み込み、暗がりで「くま」が目を光らせている──。秀逸なタッチと世界観に注目だ。
市山尚三(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)コメント
『くまをまつ』は不思議な映画だ。祖父が住んでいた古民家で少年がひと夏を過ごす、というプロットから想像されるようなノスタルジックな雰囲気はそこにはない。今、映っているものが現実なのか幻想なのか判断し難い不安定さが全編にあふれ、見る者の心は強く揺さぶられる。そのいい意味での不安定さを見事に体現しているのが平野鈴の独特な存在感だ。監督デビュー作にしてこの世界観を創り出した滝野弘仁の今後の活動からは目が離せない。
「くまをまつ」
出演:平野鈴、渋谷いる太、大場みなみ、内田周作、松浦りょう、竹内啓、森葉南、星能豊、中西未代子、千木野ひとみ、平井寅、高田伸一、美緑トモハル、松尾渉平、久田松真耶、中村映里子
監督・脚本:滝野弘仁 撮影:米倉伸 照明:小川大介 録音:松野泉 スタイリスト:小宮山芽以 ヘアメイク:河本花葉 監督補:渡辺直樹 助監督:登り山智志 制作担当:佛木雅彦 特殊造形:田中佑佳(Label A) 劇中脚本:高畑鍬名、滝野弘仁 編集:冨永圭祐 音楽:松野泉 宣伝デザイン:畑ユリエ アソシエイトプロデューサー:鈴木徳至、加藤綾佳、床井祐二朗、田中厚朗
宣伝・配給協力:ブライトホース・フィルム
製作協力:GOLD FISH FILMS
製作・配給:kine A house
特別協力:石川県小松市、里山自然学校こまつ滝ヶ原
2024/日本/カラー/DCP/アメリカンビスタ/5.1ch/113分
© kine A house
公式サイト:kumawomatsu.com
記事提供元:キネマ旬報WEB
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