次のヒットを探せ! 新業態の開発がうまい飲食企業は?【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】
「ロイヤルホスト」以外に、「天丼てんや」も同社が運営している。2006年に運営会社を子会社化して以来、ブランドを育ててきた
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
今週の研究対象飲食店の新業態進出(ロイヤルHD)
最近の飲食店のトレンドといえば「おにぎり専門店」。大きくヒットすれば、株価にも大いに跳ね返ってくるはず。この手の新業態開発がうまい会社はどこだ?
助手 おにぎりがはやってますよね。
坂本 確かに、おしゃれな店舗でおにぎりを売るお店が増えてきた。
助手 それで、上場企業が展開してるおにぎり店がないか調べたら、コメダが「おむすび米屋の太郎」っていうお店をやってるんですよ。伸び盛りのおにぎり関連銘柄ってことで、コメダへの投資はどうですか?
坂本 どうかな。確かにおにぎり店は増えてきたけど爆発的ブームって感じはない。それに「米屋の太郎」は現状では3店舗だけで、まだまだ実験店の域を出ないから業績を左右する存在じゃない。おにぎりブームを理由に投資するにはまだ早いよ。
助手 いい投資先だと思ったのに。
坂本 外食系企業が実験店を出したり、隣接業種への進出を図ることはよくある。新たな動きがあるたびに投資してたんではキリがないよ。ひとまず、他業態や隣接業種への進出がうまい企業を監視しておけば? ロイヤルホールディングスとか。
助手 なんの会社でしたっけ?
坂本 ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」を展開する企業ですよ。同社は創業以来、事業領域をどんどん拡大し、時代とともに稼ぎ頭が変化してるんです。
助手 ロイヤルホストだけの会社じゃないんですか。
坂本 そう。そもそも同社は1951年に福岡空港で機内食の提供と喫茶店を始めたのが創業の経緯だから。その後、米軍の基地で得たノウハウを生かしてパンの製造に乗り出した。レストランを始めたのはさらにその後のことで、本格フレンチのお店「ロイヤル」をオープンさせました。マリリン・モンローが来店するような高級なレストランだったらしい。ロイヤルホストは1970年代に「大衆にも手が届くロイヤル」として展開を始めたブランドなんです。
助手 今のビジネスにたどり着くまで、けっこう遠回りしてるんですね。
坂本 遠回りというか、時代の流れを読んで儲かる事業に取り組むのがうまいんですよ。高単価戦略が得意なのも同社の伝統だね。
助手 どういうことですか?
坂本 客単価が高いビジネスを見つけるのがうまいんです。空港のレストランって競合が少ないから味の割に高い。機内食も、参入障壁が高いから市中の弁当に比べて割高です。ロイヤルホストは各店に料理長を置いて味に磨きをかけることで、ファミレスとしては高単価を実現しています。
助手 確かにロイホは高めですね。
坂本 ちなみに最近では、空港と同じように競合店が少ない高速サービスエリアや球場などに出店する「コントラクト事業」が外食事業に次ぐ売り上げを稼ぐ第二の柱になっています。
助手 高単価の領域を攻めていると。
坂本 そう。それをさらに推し進める上で注目なのが「リッチモンドホテル」を展開するホテル事業です。インバウンド需要の追い風で客室平均単価が上昇し、利益ベースではすでにコントラクト事業を抜いています。まだコロナ前に及ばない客室稼働率が戻れば、上昇した客室単価との掛け算でいっそうの利益が見込める。
ホテルで利益を増やしておけば、外食事業やコントラクト事業でさらなる高級路線に挑戦することもできます。実際、総合商社の双日と組んでベトナムで高級レストランを始めたり、タイの高級ホテルチェーンと合弁会社を設立するなど、新たな高単価事業に進出する動きがある。外食事業の垣根を越えた成長に期待して投資するのもアリでしょう。
今週の実験結果
リッチモンドホテルの稼働率が本格的に復活すれば業績はさらに上向くはずです!
構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗
記事提供元:週プレNEWS
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