菅沼菜々が男子ツアーで感じた成長 目標の“赤字”には届かずも「すごくゴルフが楽しいと思えた」
<前澤杯 最終日◇26日◇MZ GOLF CLUB(千葉県)◇6652ヤード・パー70>
「50点くらいにしておきます」。4日間の戦いを振り返り菅沼菜々は自己採点する。国内男子ツアーという“未知の環境”で戦い抜いた姿は、以前よりたくましさを増したように映った。
初日と2日目は、片山晋呉と石川遼という男子ゴルフ界の顔役ともいえる2人とラウンド。初日のティグラウンドでは、打順が回ると小走りになり、どこか慌てた様子も見せていた。飛距離でも置いていかれるなか、数十ヤード先を颯爽と歩く2人の背中を必死で追いかけた。
「迷惑をかけないように」。フィールドが違ううえ、大先輩とのラウンドに、スコアどころではない。気さくに声をかけてくれる2人に笑顔で返しながらも、「何を話していたか忘れました」と振り返るほど、女子ツアーでは味わったことのない緊張感に包まれていた。
そんな慌ただしい初日のスコアはイーブンパー。距離が短いとはいえ、男子仕様のセッティングの中で健闘した。2日目には緊張も和らぎ、男子プロに食らいついていこうと、自分のプレーに集中できるようになった。初日よりも多い3つのバーディを奪ったが、ボギーも重なりスコアは「71」。ラウンドを重ねるごとに「赤字(アンダーパー)で終えたい」という思いは強まっていった。
3日目は大ベテランの谷口徹らとの組み合わせに。「片山さんはよく話しかけてくださって、谷口さんは温かい目で見守ってくれる存在」。ベテラン達と続けてラウンドするプレッシャーはあったはずだが、そんな話をする表情はどこか楽しげだ。
アンダーパーを目指し、残された最終日は4日間で最も天候に恵まれたが、朝から強い風が吹き荒れる難コンディションとなった。慣れない環境で戦い続けた疲労も重なり、「人生で一番疲れました」と苦笑い。「足もつりそうになった」と体力の限界を感じながら回り切った。それでも前半は2バーディ・1ボギーでアンダーパーをキープ。目標達成も見えていたが、後半はスコアを崩し「40」。悔しさをにじませながら「後半をもう一回やり直したい」と唇を噛む。
予選カットのない4日間。それは裏を返せば、スコアが悪くても試合を続けなければならない“苦行”にもなり得る。男子ツアーの厳しいセッティングの中、菅沼はトータル7オーバーでフィニッシュ。最終日の「75」がなければさらに好成績も狙えたが、それでも十分に善戦といえる結果だった。
「50点」の4日間は、「すごくゴルフが楽しいと思えた」という大きな収穫もあった。2023年シーズンには初優勝を含む2勝を挙げたものの、昨年はシード権を失う不振にあえいだ。なにより「その時(23年)の感覚が戻ってきた」という手応えを得たのは大きい。
「いい勉強になりました。女子ツアーに戻ったら、この経験を生かして短いクラブでバーディを量産し、上位を争いたい」
男子プロに比べ、2〜3番手長いクラブでセカンドショットを放ちながらパーオンを重ねた菅沼は、飛距離への免疫をつけ、ロングアイアンの精度にも自信を深めた。主催者推薦とはいえ、厳しい環境に身を置き、4日前とは別人のように自信に満ちた表情だ。
もう一度男子ツアーでリベンジ…そんな安易な考えはない。「出たいっていうのは、本当に申し訳ない」。迷惑をかけないようにという一心でプレーしたからこそ、軽々しく“また出たい”とは口にしない。
「本当にすごく良い経験だったので、次は勉強のためにツアーを見に来たい」。次に男子ツアーに来る時は、“ロープの外”から。謙虚さを忘れない、一回りも二回りも成長した菅沼菜々が、そこにはいた。(文・齊藤啓介)
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