NEWS・加藤シゲアキ、好きな映画を「中途半端に作りたくない」と熱意 尺読みは「15分6秒」と完璧

(左から)加藤浩次、加藤シゲアキ、新施設を設計した建築家・隈研吾
2020年より始動した、伊藤主税、阿部進之介、山田孝之らがプロデュースする「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)」は、メジャーとインディーズを超えた多彩なクリエイターによる短編映画制作プロジェクト。同プロジェクトのSeason7では、NEWSの加藤シゲアキ、極楽とんぼの加藤浩次が監督を務めており、それぞれ「SUNA」「Victims(ビクティムズ)」を手掛けた。
愛知県東海市で撮影を行っていたことから、建築家の隈研吾氏が設計を担当した「東海市創造の杜交流館」のオープニングイベントとして、2作品が上映されることとなった。2月25日には、加藤シゲアキ、加藤浩次、隈氏による鼎談が都内で行われ、同施設の特徴や東海市への思いなどについてトーク。その後のインタビューでは、監督を務めた心境や撮影を振り返っての感想などについて伺った。
「砂」「路駐」から短編映画製作へ
「東海市創造の杜交流館」のコンセプトは「歴史」「映像」「交流」。外装には木材が使用され、街並みに溶け込むやさしい雰囲気と建物を象徴する印象的な曲線屋根は、地元の尾張横須賀まつりの象徴・山車から着想を得て設計された。同施設の特徴には、映画が上映できるほか、映像制作から上映までの一連の活動が可能なことがあげられる。
設計は隈氏にとっても「チャレンジだった」とのことで、印象的な曲線屋根については「歌舞伎座の前についている唐破風。これが結構モチーフになっています。新しい機能に唐破風がくっついていて、古さと新しさが今までにない形でミックスしています。そして、その唐破風屋根がむき出しの鉄骨で支えられていて、古さと新しさが形でも表現されています」とアピールした。続けて、古いものと新しいものを混ぜ合わせる作業は「結構ドキドキした」と明かし、「現地では、実物大の模型を一部作ってみて、実際にどのくらいかを確かめました。そのくらい微妙なところを狙ってみたんですよ」とにっこり。
5月4日(日)、5日(月)に開催のオープニングイベント「ミラーライアーフィルムズ東海市プレミア上映祭」をきっかけに、「(東海市は)『掘ってみたらこんなおもしろかったんだぜ』『こんなにおもしろい人たちが参加してくれたんだぜ』っていうのが、全国に波及したらすごくおもしろいと思う」と隈氏は語り、「この東海市モデルが先駆けになれたらいいんじゃないかなって思いました」と充実した表情を見せた。
そして、監督を務めた2人からは、撮影の背景が語られた。加藤シゲアキが手掛けた「SUNA」は、東海市で多発していた砂による窒息死事件を、刑事の狭川(加藤シゲアキ)と遠山(正門良規)が追っていくという内容。「砂ってどこにでもありますが、家の中やシーツ、口の中にあったりするとすごく嫌な存在になる。それに、当たり前の場所にないとすごく気味が悪いっていうのはホラーになるんじゃないかなと思っていました」と発想を明かし、「砂っていうのは文学的にもいろいろなモチーフになってきたので、そういった部分で文学的な映画を作っていける。ホラーとしてのアプローチもあり、何を信じればいいのか、何を信じてはいけないのかっていう曖昧さとも結びつくのではないかと思って作らせてもらいました」と続けた。さらに「東海市はすごくきれいじゃないですか。それこそ砂の話があったんですけど、東海市があまりにもきれいなので、砂の話が作れるかどうか迷うぐらいではありました(笑)。でも、きれいになればなるほど、やっぱり砂が異物になっておもしろいなって」と話した。
加藤浩次による「Victims」は、路上駐車をきっかけに、付き合いたてのカップルがさまざまな騒動に巻き込まれていく様子を「誰が被害者なのか」というテーマで映像化したコメディ作品。「そもそも路駐ってよくあるなと思って。いろいろな人の考えや性癖、いろいろなものによって被害者というものがどんどん変わっていく形を描きたかったんですけど、それがどう伝わってるのか、うまくできたのか、正直僕自身はわかっておりません!」と断言した。着想は「路駐」から得たそうで、「ワンシュチュエーションの言葉のやり取りだけで、今まで自分が思っていたことをできないかなって」と前置きをし、「人って『間違ってない』と思っているじゃないですか。でも、相手も『間違ってない』と思っているわけだから、それがズレだすっていう。ここがいい感じに歯車があえばいいなと思って作りました。でも、なんせ編集したとき30分で。それを半分にしたので『伝わるかな……』っていうのが1番心配でしたね(笑)」と告白していた。

「MIRRORLIAR FILMS Season7」公開に先駆けての鼎談
2度目の短編映画監督挑戦の心境とは…
――「MIRRORLIAR FILMS Season7」の監督オファーを受けた心境を教えてください。
加藤浩次 「何で俺に?」と思いましたけど、正直にうれしかったです。新たなチャレンジは「やりたい!」と思っていても、僕らの仕事はオファーがなきゃできないので。それをしていただいたっていうのは非常にうれしくて「やってみよう!」という気持ちになりました。
加藤シゲアキ 以前もショートフィルムを撮ったことがあって、その大変さを実感しているだけに、お話をいただいた時は「あれ以上のものがまたできるのか……」と。アイディアが見つかるかどうかっていう部分で少し悩んだんですけど、プロデューサーの熱烈なオファーに根負けして、アイデアがひらめく前に「やってから考えましょう」という形で(引き受けました)。もちろん楽しいのは知っていましたし、身近にこのプロジェクトに参加した人がいて、みんな「楽しかった。よかった」と言われていたこともあり、やると決めてからはとにかく楽しみでした。
――最初は少し葛藤があったんですね。
加藤シゲアキ そうですね。映画が好きなので、好きなだけに中途半端なものは作りたくない。自分がおもしろいと確信できるかどうかわかるまでは、やっぱり映像制作を気軽に「やりたい」とは言えないと思っていたんですけど、本当に僕の力を信じてくれた方もいたので、(決断に至れたのは)それも大きかったかなと思います。
――今回は加藤シゲアキさんが2作目、加藤浩次さんは初監督ということですが、撮影で苦労されたことはありましたか?
加藤浩次 お恥ずかしながら尺読みが全然できていなかったので……。「そんな初歩的なミスある!?」みたいな。撮ってつないでみたら30分あったっていうのは、やっぱり本当にお恥ずかしい限りなんですけど、そこから編集でつまんでくっていうのが大変でしたね。役者さんに一生懸命やっていただいたのに、切らなきゃいけない苦を僕が作ってしまったのは本当に反省です。
加藤シゲアキ 撮影地が多くて3日間丸々使う形だったので、時間内に撮りきれるかどうか、時間との戦いは結構ありました。あと、古民家で火を使うシーンもあって、いつ燃えてもおかしくないような状態の中で、気をつけながら撮影するっていう。すごく煙が出たりしながら、換気して撮影するのは物理的に大変だったところがありますし、あと砂の扱い。食べられる砂を作ったり、砂が自動であふれるように考えたりしてもらいました。それで言うと、1番苦労したのは、もしかしたら美術チームかなと思いますけど、本当に皆さんが力を合わせて頑張ってくれました。僕は事前の準備がたくさんあったので、撮影してからは割とスムーズでしたね。
加藤浩次 6秒ぐらいしかオーバーしてなかったらしいね。
加藤シゲアキ 仮でつないだ時点では、15分6秒でした。
加藤浩次 本当に優秀ですよ……!

「MIRRORLIAR FILMS Season7」は5月9日(金)より2週間限定で上映
【制作・編集:WEBザテレビジョン編集部】
記事提供元:Lemino ニュース
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