就職・転職先としても大人気。退職ブームのウラで「転職業界」も成長中!!
企業と求職者の架け橋になるのが転職エージェントの役割。その実務は求職者への企業紹介、面接練習、転職後のアフターケアなど多岐にわたる
新卒社員の就職先、また若者世代の転職先として人気を集めているのが転職業界。退職代行サービスを利用して勤めていた企業を退職し、その後、「転職業界に転職」してエージェントとして働く若者もいるという。
そんな転職業界は、なぜ成長を続けているのか? 日沖コンサルティング事務所代表で、就職・転職市場に詳しい日沖 健氏はこう語る。
「転職エージェントの業務はひと言で言うと、企業と求職者のマッチングです。マッチングが成立したらエージェントは企業から仲介手数料を受け取りますが、その仲介料は基本的に求職者が転職先でもらう年収の3~4割にもなります。
法務や知的財産に詳しい特殊領域の人材なら5~6割をもらうケースもありますし、優秀なIT人材だと10割、つまり求職者の年収分を仲介料としてエージェントが受け取る場合もあります。
仲介料がこれだけ高い背景には、働き手世代の人口減による企業の慢性的な人手不足があります。また、入社後すぐに辞める新入社員や転職をするベテラン社員も多いので、企業の人事部は大金を払ってでも転職者の頭数を確保しなければならないという事情もあります。
このように採用難で転職エージェントの需要が高いことが、業界全体が成長している大きな理由だと言えます」
今の若者に転職業界が人気な理由は?
「仕事のイメージがしやすいというのはあると思います。今の若者は就職・転職でエージェントにお世話になる経験が多いので、自然と身近な存在になりますし、求職者への支援を通じて社会に貢献できるというイメージを持ちやすい。
また、専門知識やスキルがなくても仕事ができること、成果主義で若いうちから稼げる可能性があることなども人気の理由です。ただ、実際はそんなにいいことばかりでもないのが現実です」
それはどういうこと?
「若者の目に見えるエージェントの仕事内容は基本的に〝対求職者〟のものですが、エージェントの基本業務は転職者を求める〝対企業〟の営業活動です。
若者に対してアドバイスをするエージェントの姿はキラキラして見えるかもしれませんが、実際の業務では抱えている人材を企業に対して必死に売り込まなければなりません。このギャップに気づかないまま転職業界に入ってしまうと、苦しい思いをしてしまいます。
私の知り合いのエージェントの方も、業界的にブラックな体質があるので入社することはあまりオススメしないと言っていました」
若者世代に限らず、今は働きながら転職を考えている人が多い。実際に転職エージェントを使った人の声は?
「基本的には好意的なものが多数です。ただ、参入する企業の数が多くなっている分、働いているエージェントの質にも差が出ています。
例えば、転職をした後にすぐまた別の企業への転職を勧めてくるようなエージェントは、求職者を商売のネタとしか思っていない可能性があるので要注意です。
エージェントは基本的に成果報酬で、成約した分だけ給料が上がるので、ヘタな鉄砲撃ちのようにどんどん企業を紹介する人もいるかもしれないことを覚えておきましょう。このような事例は、〝転職ころがし〟だとして各種メディアでも注意が呼びかけられています。
しかし、もちろん優秀で熱意のあるエージェントもたくさんいるので、転職の際に頼ることを怖がりすぎる必要はありません」
退職ブームと併せて転職業界にも注目だ。
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記事提供元:週プレNEWS
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