世界最高のレアビデオ・コレクションの数奇な運命とは?「キムズビデオ」
ニューヨークに実在した、シネフィルの聖地たるレンタルビデオショップ〈キムズビデオ〉。そこに置かれていたマニアックで貴重なコレクションの運命を追ったドキュメンタリー「キムズビデオ」が、今夏にヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷ホワイトシネクイントほか全国で順次公開される。ティザービジュアルが到着した。
1987年に韓国系移民のキム・ヨンマンが開業したキムズビデオ。5万5000本ものレアな映像作品を取り揃え、入手ルートは各国の映画祭や大使館を経由するという、大手ショップには真似できないものだった。25万人に膨れ上がった会員の中には若き日のコーエン兄弟もおり、延滞金を600ドル滞納している逸話も映画に登場。また、「ハングオーバー」シリーズや「ジョーカー」シリーズのトッド・フィリップス、「ハースメル」のアレックス・ロス・ペリー、「スイート・イースト 不思議の国のリリアン」のショーン・プライス・ウィリアムズといった著名監督がかつて店員だったことでも知られる。本来アメリカで見られない海賊版も多く、自作がその対象となったジャン=リュック・ゴダールがレンタルの差し止めを求め、権利元の訴えを受けたFBIが押収するなど“伝説”も多い。
そんなキムズビデオだが、配信サービスの隆盛により2008年に閉店。膨大なコレクションは、イタリアのシチリア島にあるサレーミという村に譲渡される。数年後、キムズビデオの会員だったデイヴィッド・レッドモンが同地を訪れると、コレクションは湿って埃だらけの所蔵庫に放置されていた。助けを求める映画たちの“声”に突き動かされた彼は、前代未聞の奪還作戦を始動。その方法は、カーニバルの夜に映画の撮影だと偽り、アルフレッド・ヒッチコックやチャールズ・チャップリン、ジャン=リュック・ゴダール、イングマール・ベルイマン、ジャッキー・チェンら巨匠の“精霊”を召喚し、所蔵庫から映画たちを解放するというものだった──。
ワールドプレミアとなったサンダンス映画祭では「遊び心がハンパない」「常軌を逸したドキュメンタリー」と熱狂的に支持され、シッチェス映画祭ではドキュメンタリー部⾨最優秀作品賞を受賞。数奇な物語を見届けたい。
アシュレイ・セイビン&デイヴィッド・レッドモン監督コメント
私たちは、2024年秋に日本に滞在し、この映画を配給するスタッフとミーティングを行いました。
そのチームは、オフィスにドルビーアトモス試写室を作った情熱的なグラフィックデザイナー、一見物静かだが実はアグレッシブな宣伝マン、風変わりな小作品が大好きな配給会社スタッフで構成されていました。
私たちはすぐに、世界中の映画のキュレーションという共通の情熱を分かち合えました。
この配給チームとミーティングした瞬間から、彼らがフィジカルなメディアを愛し、そして同様に愛する観客をこの映画に結びつけてくれると直感しました。
私たちは、日本に映画のゴーストが息づいているのを感じ、ワクワクしています!
We can’t wait for the upcoming on theater!(公開が待ち遠しいです!)
「キムズビデオ」
監督、編集:アシュレイ・セイビン、デイヴィッド・レッドモン
撮影:デイヴィッド・レッドモン
録音:デイヴィッド・レッドモン、マチュー・デボルド
共同編集:マーク・ベッカー
音響:アグネス・ライカート、マルセイユ・ミックス・ア・ロット
製作:アシュレイ・セイビン、デイヴィッド・レッドモン、デボラ&デイル・スミス、レベッカ・タバスキー、フランチェスコ・ガラヴォッティ
アメリカ/2023年/英語、イタリア語、韓国語/87分/カラー/5.1ch/16:9
原題:Kim’s Video
提供:ミュート、ラビットハウス
共同配給:ラビットハウス、ミュート
©Carnivalesque Films 2023
公式サイト:https://kims-video.com/
記事提供元:キネマ旬報WEB
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