“全バラ”からの復活 輝きを取り戻した櫻井心那がツアー59試合目で初の首位発進
<ミネベアミツミレディス 北海道新聞カップ 初日◇4日◇真駒内カントリークラブ 空沼コース(北海道)◇6667ヤード・パー72>
不振にあえいでいた櫻井心那が今季自己ベストの「65」をマークした。4月の「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」第2ラウンド以来、29ラウンドぶりとなる60台で、ツアー59試合目で初となる首位発進。「最近は60台を目指してやっていた。次に60台が出たら絶対に変わると思ってやり続けていました。きょうは本当にうれしいです」。はにかんだようないつもの口調の中に、試行錯誤の末にトンネルを抜けた充実感がにじんでいた。
インから出た10番パー4で残り109ヤードの2打目をピンそば1.5メートルにつけて幸先よくバーディを奪った。12番パー5では20メートルをねじ込んだ。前半を5バーディ・1ボギーの「32」で折り返し、後半はピンまで228ヤードの2打目をグリーン手前の花道まで運んだ3番パー5からの3連続バーディで首位に立った。
今季は前週まで16試合に出て、トップ10は10位だった3月の「アクサレディスin MIYAZAKI」と「ヤマハレディース葛城」の2試合だけ。予選落ちは7度と、プロ2年目の昨季4勝を挙げて一気にブレークした勢いは完全になくなっていた。「去年は実力もないのに勢いで勝っただけ。後半はスイングも悪くなっていた。それに気がつかずにオフを過ごし、開幕を迎えてしまいました」。もがけば、もがくほど泥沼にはまった。
転機が訪れたのは5月下旬の「全米女子オープン」。カットラインに1打届かなかったトータル9オーバーで予選落ちしたとき覚悟を決めた。「限界を感じました。もう、本当にどうしようもなかった。変えても、変えなくても悪いなら、いろいろやってみようと思った」。
最初に取り組んだのは球筋をフェードからドローに変えることだった。アマチュアのときはドローを打っていた時期もあったが、この5年はフェード一筋。劇的な変化に加え、「基本的にクラブは変えないタイプ」がシャフトやヘッドも週替わりで新しいものにトライした。「パットがよかった」と自賛した、この日のパターも同タイプのエースを3年ぶりに封印して使った新相棒。「同じ(テーラーメイドの)トラスで顔は一緒だけど、削り出しがカッコよかったから」とひらめきが奏功し、23パットはこの日の最少だった。さらに、ユーティリティを1本抜いて、7番ウッドも入れた。
「毎週悩んで、いろいろ試して、失敗ばかり。でも、無駄な試合は一つもなかった。いっぱい曲げるので、トラブルショットやラフからの打ち方もうまくなった。悪いからこそ練習する。無駄な時間はなかったです」。ドローに変えて、スイングは徐々に安定してきた。理想は同じようにフェードから本来の球筋に戻した小祝さくらのドロー。「小祝さんは本当に曲がらない。そういう球をイメージしています。ドローが打てたらスイングもトップの位置も良くなる」。この日のフェアウェイキープ率は57.1%ながら、ドライビングディスタンスは264.5ヤード。前週までの今季252.04ヤードから明らかに改善され、ツアー指折りの飛ばし屋の誇りも取り戻しつつある。
これまでの自分をいったん全部バラしてからの再構築。櫻井が本物の強さを身につけようしている。(文・臼杵孝志)
<ゴルフ情報ALBA Net>
記事提供元:ゴルフ情報ALBA Net
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。