『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.42【コミックス派はネタバレ要注意!】
『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが1月の連載を激論!
『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!
希代のストーリーテラーのふたりが1月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。
―今回の「先月の肉トーク」テーマ―第477話 クロエからの脱皮!!の巻(1月6日更新分)
第478話 ネプチューンマンの大好物!!の巻(1月20日更新分)
第479話 恥辱のクロス・ボンバー!!の巻(1月27日更新分)
<あらすじ>
アメリカ(マッスル・ブラザーズⅢ【キン肉マン、キン肉マングレート】組VSインダストリアルレボリューション【エクサベータ、ガストマン組)、ソ連(ウォーズマン【クロエ】)VSぺシミマン)、スリランカ(テリーマンVSエンデマン)、レバノン(ネプチューンマンVSパピヨンマン)を舞台に、五大刻(ごたいこく)との一大決戦に臨むキン肉マンたち。ソ連でクロエを名乗り、兵士として闘っていたウォーズマンはついに本来の姿でぺシミマンと対峙することに......。
燃え殻(以下、燃) 1月からアニメのSeason 2が始まったね。
爪切男(以下、爪) はい。あの、ブラックホールの声が宮田俊哉さんだってこと、始まる前に知っていたのに、観ていたら忘れてました。
燃 そうだよね。自然すぎて。
爪 『キン肉マン』に本当にリスペクトを持っている人だというのが、ひしひしと伝わってくるすごい表現力ですね。
燃 もともと声優もやっていた人だけど(2020年公開『劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~』バーチェス役など)......。
爪 このブラックホール役をきっかけに、声のお仕事のオファーが急増しちゃうんじゃないですかね。
燃 今の声優さんぽい声質だしね。そういえば、嶋田先生のXでも「原作を超えた」って言ってたじゃない? 今どき、こんな幸福なアニメ化、ないんじゃないかな。
爪 ですよね。ここまで違和感のないアニメ化はすごい。何回観ても、『キン肉マン』のファンの「こうしてほしい」っていうツボをつかんでるなあ、と思います。
燃 「四次元エレメント交差」で、ブラックホールがペンタゴンに入れ替わるシーンのキモさとかね(笑)。
爪 嶋田先生は、靴下が丸まって裏返っているのを見て、あれを思いついたそうです。
TVアニメ『キン肉マン』完璧超人始祖第15話「四次元からの声!!」は必見です!! ネットフリックスで過去話も配信中
燃 ああ、なるほど! それおもしろいなあ。
爪 でもこの分だと、今回のシーズンもあっという間に終わっちゃいますね。体感速度がすごく速い、このアニメ。
燃 そうだよね。Season 2が終わるとどうなるんだろうね。しばらく空くのかな。
爪 うーん、僕は、しばらく空くんじゃないかな、と思います。このクオリティのアニメ作品を、1クール週イチで放送して1クール休んで、という今のペースで続けていくのは、物理的に無理なんじゃないかな。
燃 そうか。それはそうかも。うーん。
●パピヨンマンの意外性爪 で、漫画連載のほうは、第477~479話の3回。まず第477話『クロエからの脱皮!! の巻』で、クロエの正体がウォーズマンであることがわかる。ペシミマンにスクリュー・ドライバーをくらわせながら、マスクとコスチュームが剥がれて。
燃 気になるのが、スクリュー・ドライバーのあとに着地したコマを見ると、ウォーズマン、頭にヒビ入ってるんだよね(477話14ページ)。殴られすぎて。やっぱりどんどん壊されそうで、今後が怖い。
爪 あと、第478話でびっくりしたのが、ネプチューンマンと闘っているパピヨンマンが、まさかのマスク超人だったこと。
燃 うん、びっくりした。
爪 ますます、残酷描写が楽しみになりましたよね。前に僕「パピヨンマンの羽根をむしり取ってほしい」と言ったけど、それプラス、マスクを狩ってほしい。
このころにはまだマスクマンという設定はなかった?(JC85巻)
燃 (笑)。
爪 ここでマスクとは予想できなかったなあ。パピヨンマン、2試合目だからちょっと既視感が強い、どういう試合になるんだろう、と思っていたら、マスク超人だったという。
燃 あと第477話の最後のページ、ネプチューンマンがパピヨンマンにスリーパホールドしたままでジャーマン気味にスープレックスを極めるじゃない? この技って昔から......。
爪 使っていましたよね、「地獄の三重刑 その1」。この技で喉を潰してしばらくしゃべれなくし、マスクを後ろ前にして殴打することで目と耳を使えなくする。
燃 このスリーパースープレックス、全日っぽくて好きだな。小橋建太が使ってたと思う。
爪 そうそう。秋山準とかにくらわせてた。
燃 四天王プロレス的な技だよね。この闘いの前半ではウォーズマン、総合格闘技的な関節技で闘っていたのが、今は全日っぽくなっている。
爪 確かに。嶋田先生の趣味が出てる。
燃 先生、今、スターダムにハマってるじゃない? もうすぐスターダム的な、派手な投げ技や跳び技も出てくるのかな(笑)。
爪 スターダム、すごい人気ですもんね。
●マスク狩りという発明燃 ちなみに、パピヨンマンがマスク超人だった、という設定は、嶋田先生、途中で気づいたんじゃないかと思う。「そうだ、パピヨンマンをマスクマンにすれば、マスク狩りを描ける」と。
爪 そういうふうに途中で思いつくパターン多いですもんね、嶋田先生。
燃 そもそも、キン肉マンがマスク超人なのも、そうだしね。
爪 ですよね。有名なエピソードだけど、ゆでたまご先生が新日の道場へ取材に行った時、『キン肉マン』を知らなかった山本小鉄が、キン肉スグルを見て「これはマスクマンでしょ」と言ったのがきっかけで、実はマスク超人だった、ということにした。
燃 今回も、マスクのおかげでネプチューンマンが生き残る可能性がグンと上がったね。
爪 うん、この試合が一気におもしろくなった。ネプチューンマンがマスク狩りをする布石が打たれたこと。パピヨンマンがアバターとふたりで、ネプチューンマンの得意技のクロス・ボンバーを使ったこと。ネプチューンマンの背後で、アポロン・ウィンドウからマグネットパワーが立ち昇ったこと、とかに可能性を感じますよね。
燃 ネプチューンマンならではの、いろんな要素がある試合だとわかってきた。
爪 今の4試合のうち、一番バックボーンが感じられなかったけど、それが一気にひっくり返りましたよね。
燃 あと俺、クロス・ボンバーってすごい好きな技なんだよね。ネプチューンマンとビッグ・ザ・武道のヘル・ミッショネルズがこの技を使っていた頃、日曜の深夜24時を越えたら、『少年ジャンプ』を買いにコンビニに行ってたもん。まだ縛って積んであるジャンプを、「すみません、これがほしいんですけど」って、170円出して。クロス・ボンバーが見たくてあの時間に行ってたんだよな、今思うと。
マスクマンを倒すだけでなく、マスクごと奪い、辱めるというこの手法は当時とても話題を呼んだ(JC19巻)
爪 (笑)。
燃 クロス・ボンバーでロビンがやられて、ウォーズマンがやられて。夢中になって読んでた。『キン肉マン』の世界観に合っていて、魅力がある技だと思う。
爪 実際には、自分がやるんじゃなくて、いじめっ子にやられるほうの技でしたけどね。
燃 あ、やられた(笑)?
爪 やられた記憶があります。
燃 しかし、こんなふうに、この3試合が同時に進んでいるっていうことは......。
爪 いや、4試合ですよ?
燃 え? あ、そうだ。テリーマンの試合が1ページも出てきてないんだ、この連載3回。
爪 そうですね。このあと一気に描くのかな。
燃 「巨大な相手と闘う」という、テリーマンらしい試合だから、展開がある程度読めるじゃない? そっちよりも、ウォーズマンvsペシミマン、ネプチューンマンvsパピヨンマンという、どうなるか読めない闘いのほうを先に描いて、物語全体の解像度を上げておく、ということなのかもしれない。
爪 で、その合間にちょこちょこ、キン肉マンのタッグマッチを挟む、という。
●今後の展開予想燃 キン肉マンの試合がなぜこの4人のタッグマッチなのか、というエクスキューズも、これから描かれるのかな。
爪 そうですよね。しかしこれ、描くの難しそうですね。主人公だし、グレートだし、敵の片方はガシャポンみたいに目の前で生まれたばかりだし。
燃 パピヨンマンが、実はネプチューンマンのよさを引き出す相手だったのと同じように、キン肉マン&グレートと闘わせると、彼らの魅力が引き出されるような相手なのかな?
爪 そうなるといいですね。ウォーズマンとペシミマンも、実は同じロボ超人同士の闘いだった、という必然が、あとからわかったし。
燃 対戦相手にヒントがある、そこから次の展開とかを予想しながら読む、というのが、おもしろい読み方なのかもしれない。
爪 うん。とりあえず、エクサベーターもガストマンも、形に特徴がありすぎるし。それぞれ、どっちが勝つと思います?
燃 まず、ウォーズマンvsペシミマンはウォーズマンかな。試合の展開を見ていて、ペシミマンよりもウォーズマンのキャラクターのほうがおもしろいと思ったから。ペシミマンの攻撃はもうひと通り受けた、でも頭にヒビが入ったくらいで済んでいる。だとしたら、ウォーズマンが勝ちそうかな。
爪 ネプチューンマンの試合は?
燃 爪さんが言うように、パピヨンマンがマスク超人だとわかった時点で、負けフラグが立った。で、キン肉マン&グレート対ガストマン&エクサベーターの試合は、爪さん、どう思う?
爪 これはだって、キン肉マンだから負けるはずがない、と思って読んじゃっているので(笑)。でもワクワク感は一番デカいですよね。三代目グレートの中身は誰なのか、というのもあるし、時間超人ふたりも初の試合だし。ただ、キン肉マンとグレートが負けるとは思えない、テリーマンも負けないだろう、ネプチューンマンも勝ちそうだ、って考えると、じゃあウォーズマンは負けちゃうのかな。
燃 そうだね。ウォーズマンも勝って全勝になるとは......いや、それもおもしろいかも。
爪 (笑)。うん、それはそれですごくおもしろいかも。「ここに来て全勝!?」というのは。
●燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社、1月29日文庫版発売)『これはただの夏』(新潮社、文庫版発売中)、『ブルー ハワイ』(新潮社)など多数の著作がある。最新著は『明けないで夜』(マガジンハウス)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。『GetNavi web』にてコラム「もの語りをはじめよう」を連載中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック
●爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で好評を博した、美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』が3月26日発売予定。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪 切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化
取材・文/兵庫慎司 撮影/鈴木大喜 ©ゆでたまご/集英社
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