グロ注意にならなかった! 平成のキモカワブーム【山下メロの平成レトロ遺産:064】
レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、世の中は節分を迎えました。鬼に豆をまいたり、玄関先に柊の枝にイワシの頭を飾って魔除けとする風習があります。そんなふうに魔除けの効果もあるというトロール人形が90年代に流行したのを覚えていますでしょうか。
北欧におけるトロールは、醜く悪い存在として描かれる怪物で、鬼にも通ずる存在。その中でもノルウェーの民間伝承におけるトロールは妖精や精霊として少し愛らしく描かれ、人形として土産品にまでなっています。
そんなトロール人形を、つるっとした肌に赤ちゃんのようなつぶらな瞳で、ド派手な髪の色にキャラクター化したアメリカントイが90年代の日本でリバイバル的にヒットしました。
トロール人形。裸仕様、着衣のゼンマイ式人形などあり
派手な髪色のトロール人形には、髪色ごとに魔除けとは違う、さまざまな運勢アップ効果があり、願いに合わせて選んでスクールバッグなどにぶら下げていたのです。例えばピンクは恋愛運、黄色は金運のような感じでした。
当時の若者がなんでも「カワイイ!」と表現することが問題視されていましたが、むしろトロール人形は少し不気味ともいえるルックスです。
ほかには、ゴム人形の「死にかけ人形」や、CMから生まれた不気味な赤ちゃんが踊る3DCGの「ダンシングベイビー」、そして映画の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』もリバイバル的にグッズが増えた時期でもあります。
死にかけ人形
トヨタのCMで流行したダンシングベイビー
普通のカワイイでは満足できず、少し怖いものや気持ち悪いものが流行していました。これは、カワイイ文化が盛り上がりすぎて逆に「キモカワイイ」というジャンルにまで派生した例といえるでしょう。
そして、00年代に入ると森チャックさんの描いた「グル~ミ~」がヒットします。飼い主を襲ってしまうピンクの熊「グル~ミ~」は、その血がしたたる凶暴さこそがウケて、人気になりました。まさに「グロカワイイ」の世界観でしょう。カワイイの幅が広がった時代なのです。
血のついたピンクの熊の手だけで商品が成立してしまうキャラ。それがグル~ミ~
いろいろなカラーが存在する
撮影/榊 智朗 山下メロ
記事提供元:週プレNEWS
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