同伴者に“余計なひと言”をいってしまう病気は感染したら治らない⁉ ゴルフは無意識の悪習で一杯だった
悪気のない、無意識なひと言が嫌な人のレッテルになることがある。プレー中は伝統で万能な、相手を思いやるハウツーを忘れないようにするべきだと、四六時中ゴルフ漬けのロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典は語る。
「右はOBだよ」と、キャディでもないのに打とうとしている矢先に教えてくれる人がいます。顔を見ると心配しているのではなく、どちらかというと、何かを期待してニヤニヤしています。同伴者にプレッシャーをかけるひと言をやめられない病気なのです。
この病気の人は自分がプレッシャーをかけられて、それを乗り越えた快感を知っているので中毒になっています。質が悪いことに、自分のひと言で同伴者が失敗をするのを同情しつつ、“コレがゴルフよ”なんて感じで、喜べるのです。
この病気は、伝染力が強く感染すると多くの場合は治りません。悪意が強くなり過ぎて、同伴者と揉め事になることもあります。この場合も、アドバイスしただけだと言い訳をするので関係がより悪化してしまうことも少なからずあります。
野球やバレーボールなどの団体スポーツで、味方の声援として、相手のメンタルを刺激するヤジを飛ばす慣習がゴルフに持ち込まれて病気化していったという説がありますが、欧米ではこの病気は流行していないそう。ゴルフを始めたときから先輩が面白そうに余計なアドバイスをする姿を見て、これが当たり前で一人前なのだと勘違いし、感染してしまった人たちが実は最も多いのです。
「手前のバンカーが深いから注意して」「池、気をつけて」「オーバーするとOBが近いよ」「そこからは速くて止まらない」「大きく曲がるラインだね」「入ればバーディ」「さあ、パーパット頑張って」……。
余計なお世話です。もちろん、その中には本当に親身になって言ってくれている感謝すべきアドバイスもあるのですが、多くのハラスメントと同様に受け手の感じ方で白にも黒にもなります。
原則としてアドバイスは聞かれたときだけにすると考えるのが正解。余計なアドバイスはやめましょう、と注意をすると、お互い楽しくやっているのだからその注意のほうが余計で不愉快だよ! と逆ギレされることも。
注意をするぐらいですから、ワンサイドの攻撃になっていて、言われているほうは迷惑をしているのですが、悪習に浸っている重病者にはそれも理解できません。ゴルフは基本的には静寂の中で自分と戦うゲーム。例えば、マッチを戦っているとしても、いわゆる口撃で相手にダメージを与えるのはフェアな勝負に水を差す愚行に過ぎません。そんなことをせずとも、ゴルフの勝負は十二分に面白いのです。
「もったいない」「惜しい」「今日、調子悪いね」……。こういうひと言にも注意しましょう。本人に悪気はなくとも、失敗した当人からすると、傷口に塩を塗られたような気分になって嫌なときがあるからです。
「自分が一番わかっていますから!」と、大声で怒鳴った同伴者を何人も見たことがあります。怒鳴った本人もマイナス、怒鳴られたほうもプラスにはできない悲しい瞬間です。
同伴者の失敗に同情し、励ます唯一の方法は、大昔からゴルフの伝統である“沈黙”で、それは世界共通のゴルフのエチケット。余計なひと言を飲み込んで耳を澄ませましょう。色々な自然の音にゴルファーは包まれているとわかるはずです。そういう音を一緒に楽しむのもゴルフの醍醐味だと知れば、同伴者との絆は深まるのです。(文・篠原嗣典)
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学1年でゴルフコースデビューと初デートを経験しゴルフと恋愛のために生きると決意。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。ベストスコア「67」、ハンディキャップ「0」
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