セップ・ストレイカが米本土初戦で快勝 “髪”の悩みも解消で通算3勝目【舩越園子コラム】
PGAツアーの西海岸シリーズ第1戦「ザ・アメリカン・エキスプレス」は、最終日を2位に4打差の単独首位で迎えたオーストリア出身の31歳、セップ・ストレイカが首位を守り通して勝利し、通算3勝目を挙げた。
どんな選手のどんな勝利にも、その背後には必ず秘話や裏話があるもので、今大会を制したストラカの優勝にも興味深いストーリーがいくつもあった。
ストレイカはオーストリアで生まれ育ったが、彼が14歳のとき、ストラカ一家は米ジョージア州へ移住した。しかし、国籍は変えず、今でもストレイカはオーストリア人だ。ジョージア大学ゴルフ部では、双子兄弟のサムと一緒に活躍していたが、ストレイカは3年生のとき、アプローチ・イップスになり、チームでは戦力外とされたことがあった。
それでも「なんとかしなければ」と歯を食いしばって工夫を重ね、なんとかイップスを克服して、2016年にプロ転向。PGAツアーには19年に辿り着いたが、なかなか成績は上がらず、21年末の世界ランキングは214位まで落ち込んだ。
このときも「なんとかしなければ」ともがき苦しんだストレイカは、名スイングコーチとして知られるジョン・ティレリーの門を叩き、指導を受け始めたところ、彼のゴルフは徐々に上向き、2022年「ホンダ・クラシック」で初優勝、23年には「ジョンディア・クラシック」で通算2勝目を挙げた。
オーストリア人選手がPGAツアー出場資格を獲得したのは、ストレイカが史上初。オーストリア人選手が同ツアーの優勝者になったのも、ストレイカが史上初となった。しかし、昨年は勝利を挙げられず、またしてもストレイカは「なんとかしなければ」と悩んでいた。
さらに彼には、ゴルフ以外の悩みも…。どんどん髪が減っていく自分の頭を見るたびに、こちらも「なんとかしなければ」と。全英オープン覇者で親友のブライアン・ハーマン(米国)に幾度も相談していたことも明かす。その道の「先輩」であるハーマンからは「いつかは、すべてが無くなる。だから今のうちに思い切れ!」と、そのたびにアドバイスを受け、ストレイカも「覚悟を決めた」。
今季開幕戦の「ザ・セントリー」に出場する直前、ストレイカは頭を剃り、すっきりした気持ちで今シーズンを迎えたという。そのおかげなのだろうか、今週は、初日から「65」と好発進し、2日目も3日目も「64」をマークして、2位に4打差の単独首位へ浮上。これまでに2勝を挙げていたものの、54ホール・リーダーに立ったのは自身初の出来事で、その分、緊張やプレッシャーを感じていた様子だが、「たとえ何打リードしていても、決して安全安泰ではない。最終日はひたすら安定したショット、パットを目指したい」と気を引き締めていた。
サンデー・アフタヌーンのストレイカは、その言葉通り、終始落ち着いたプレーぶりを見せていた。メジャー・チャンピオンであるジャスティン・トーマス(米国)やジェイソン・デイ(オーストラリア)が追撃をかけてきたが、ストラカは動じることなく、ボギーフリーのゴルフを続け、勝利ににじり寄っていった。
それでも終盤は「何打差があってもアグレッシブなスイングとアグレッシブなゴルフを心がけた」という攻めが16番と18番の「2つのボギーにつながった」と振り返った。それでも2位に2打差をつけての勝利。ストレイカのゴルフを見せつけられたトーマスも「僕にも勝つチャンスはあったけど、セップの勢いを止めることはできなかった」と讃えていた。
頭を剃ったことが勝利を掴んだ直接的な理由ではないが、苦境を打開するために「なんとかしなければ」、「何かをしよう」と考え、一念発起して、覚悟を決めて、新しい道を歩み出したストレイカ。その勇気と決断力、行動力が彼に勝利をもたらしたのではないだろうか。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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