松山英樹の見事な圧勝 サンデー・イエローが眩しかった【舩越園子コラム】
松山英樹がPGAツアーの2025年シーズン開幕戦「ザ・セントリー」を制し、米ツアー通算11勝目を挙げた。あまりにも見事な圧勝だった。
最終日を2位のコリン・モリカワ(米国)から1打リードで迎えた松山は、3番(パー4)のイーグルを皮切りに次々にスコアを伸ばし、一時はモリカワを4打引き離して首位を独走。モリカワも必死に追撃をかけたが、松山を捉えることは一度もできず、最後は3打差で松山が勝利。最終日を1イーグル、7バーディー、1ボギーの8アンダー、「65」で回った松山は、トータル35アンダーで勝利し、PGAツアーの最小優勝スコア記録を更新した。
「最後のパットが入るか入らないかで、そういう感じだろうと思っていたので、記録になって、うれしい。オフにリフレッシュできたので、また新たにスタートする気持ちでできてよかった」
着実にフェアウェイとグリーンを捉え続けた松山のショットは、終始、安定していた。わずかにラフへそれたことは何度かあったが、小さなミスをミスにしない最強のリカバリーを披露。ピンチをチャンスに変えていた。
今大会開幕前に急遽変更した新パターは、4日間、彼のボールをしっかりカップに沈めていった。まるで松山の今季早々の勝利を達成するために彼の目の前に現れた運命のパターだったように思えてならない。運命と言えば、PGAツアーにおける松山の優勝には、いつもどこか運命的なものが感じられた。
初優勝となった2014年の「メモリアル・トーナメント」の際は、初日のスタート直前にパターを宿舎に置き忘れてきたことがわかり、大慌てしたことが懐かしく思い出される。72ホール目ではドライバーを壊してしまい、サドンデス・プレーオフ1ホール目では2打目をギャラリー女性の膝に当ててしまうアクシデントもあった。だが、そのおかげでバンカー手前のラフに沈んだ幸運を、松山はしっかり生かして初優勝を挙げた。
あの日から松山はPGAツアーのスターダムを昇り始め、2021年の「マスターズ」優勝で1つの大きな山の頂に立った。その後も、同年の「ZOZOチャンピオンシップ」を制し、2022年は「ソニー・オープン」でも勝利。昨年は「ジェネシス招待」で通算9勝目を挙げ、パリ五輪では銅メダルに輝いた。
しかし、パリから米国へ戻る途上、ロンドンの空港で盗難事件に遭遇。依然としてアクシデントやハプニングに見舞われる運命が続いていた松山だが、臨時キャディとともに臨んだ「フェデックス・セントジュード選手権」を制して、通算10勝目を達成。
苦境や困難に果敢に向き合い、「それがあったから勝てた」と語ったあのときの松山の姿に、きっと多くの人々が勇気と元気をもらったことだろう。今大会での優勝には、もはや苦難は見られず、むしろ絶好調を呼び込んだ新パターという幸運が明るく輝いていた。それは、これまで挙げた10勝の影にあった彼の努力と鍛錬、汗と涙を労うご褒美だったのかもしれない。
シーズン開幕を彩るハワイでの2戦、「ザ・セントリー」と「ソニー・オープン」の双方を制したのは、松山が史上12人目となった。米国のTV中継の解説者は「スーパー・パーフェクトだ」と絶賛。「トラディショナルなサンデー・イエローが眩しい」。タイガー・ウッズのサンデー・レッドの輝きが見られなくなった今、松山のサンデー・イエローが燦然と輝き、新年のマウイ島で眩しく輝いていた。おめでとう、松山英樹!
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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